2月21日の記事にしたアカウロコゴケ(こちら)をテラリウムとして暖かい室内に置いておいたところ、胞子体を伸ばし、胞子を散布しはじめました。 野外ではもう少し後になるでしょう。
上の写真は2月26日の撮影です。 写真の中央やや左下には寄生しているミドリコケビョウタケも写っています。
上の写真で、3個の蒴のうちの2個は開裂しています。 少し分かりにくいですが、蒴は4裂しています。
上は胞子と弾糸です。
2月21日の記事にしたアカウロコゴケ(こちら)をテラリウムとして暖かい室内に置いておいたところ、胞子体を伸ばし、胞子を散布しはじめました。 野外ではもう少し後になるでしょう。
上の写真は2月26日の撮影です。 写真の中央やや左下には寄生しているミドリコケビョウタケも写っています。
上の写真で、3個の蒴のうちの2個は開裂しています。 少し分かりにくいですが、蒴は4裂しています。
上は胞子と弾糸です。
ヌルデシロアブラムシ Schlechtendalia chinensis は、春~秋はヌルデに虫えいを作って暮らし、冬季はチョウチンゴケの仲間に寄生し冬を越します(こちら)。
昨年の春、Oさんがコツボゴケ(チョウチンゴケ科)にいたアブラムシをFacebookに載せられ、ヌルデシロアブラムシかもしれないことを伝えると、観察を継続されました(こちら)。
昨年の12月に、そのOさんから、アブラムシが期待できる場所のコツボゴケを送っていただきました。 到着したコツボゴケを調べてみたところ、何も見つからなかったのですが、越冬体制に入って動かない小さな生物がいたとしてもみつけるのは困難で、コツボゴケを密閉した容器に入れてテラリウムとして室内で育てていました。 暖かくなるにつれ、ミドリハシリダニ(多数)、マダニ(1)、ハムシの一種(1)などがテラリウムの壁で動いているのが確認できました。 そして、2月23日、テラリウムの中にアブラムシがいることをみつけました。
上がそのアブラムシです。 1枚目はテラリウムの壁越しに、2枚目は直接撮っていますが、飛ばれるといけないので、数枚の写真を撮って、すぐにテラリウム内に戻して蓋を閉めました。
撮った写真を見ると、上に載せたOさん撮影のアブラムシとは触角の長さが異なり、別種だと思われます。 どちらがヌルデシロアブラムシなのか、きちんと調べるための資料が手元に無いのですが、今回のアブラムシは、コツボゴケで越冬したことは間違いないでしょう。 また1枚目の写真で、前翅の、翅をたたんだ状態では下に位置する縁紋が、翅端まで長く伸びて後縁が凹んでいるのは、この属の特徴を示しています。 体長を写真から測定すると、1.2mmでした。
その後、写真を撮り直そうと、アブラムシがテラリウムの壁面にいるのをみつけては外に出そうとしたのですが、いつもポトリと落ちてしまい、コケに紛れて分からなくなります。
2月26日、翅が露に濡れてテラリウムの壁面にくっついていたのを幸いに、取り出すことに成功しました。 かなり弱っているようで、飛ぶ元気も無さそうで、安心して撮影できると思っていると・・・
カメラの前で子を産みました(上の写真)。 このアブラムシがヌルデシロアブラムシだとすると、本来は飛び立ってヌルデについた後に産むはずが、閉じ込められていて限界に達していたのでしょう。
この写真を撮るセッティング中に、もう1頭の子を確認していて、少なくとも2頭以上は産んだことになりますが・・・
注目したいのは親虫の出産後の腹部で、ペチャンコに凹んでしまっています。
なお、上の写真に写っているコツボゴケの葉がみごとに食べられていて中肋しか残っていませんが、これはたぶんハムシの一種のせいで、このことは別の機会に書く予定です。
上は腹面からです。 コツボゴケから吸汁していた口吻がよくわかります。
上は幼虫で、体長は 0.4mmです。 生まれてしばらくは動きませんでしたが、25分後には元気に動き回っていました。
路肩のコンクリート上で育っていたツクシナギゴケモドキ Oxyrrhyncium hians です。 蒴の蓋には長い嘴があり、その上を僧帽型の帽が覆っています。
茎は不規則に分枝しています。
茎葉の長さは1mmあまりで、枝葉は茎葉より少し小さいのですが、形はほとんど同じです。 蒴柄の長さは1cmほどです。
葉は全周に細かい歯があります。
背面から見ると中肋は1個の歯で終わっています(上の写真)。
上は葉身細胞です。
上は蒴歯です。 内蒴歯と間毛は外蒴歯よりほんの少し短く、内蒴歯はパピラに覆われています。
蒴の頸部には気孔があります(上の写真)。
上は茎の断面で、中心束があります。 下はその中心束付近の拡大です。
(2021.2.20. 箕面公園)
◎ ツクシナギゴケモドキはこちらにも載せています。
ニセヤハズゴケ Pallavicinia levieri は雌雄異株ですが、雌株と雄株が混ざっている群落がありました。 上の写真で、赤い矢印は雌器を、黄色い矢印は雄器を示しています。
雌株については前に載せていますので(こちら)、以下、雄株について書くことにします。
上は中肋に雄包膜をつけた葉状体です。
上の2枚は雄包膜がついている中肋付近を拡大して撮った写真です。 平凡社の図鑑によれば、クモノスゴケの雄包膜は中肋の左右に2列に並び、本種の雄包膜は中肋上に多列に並ぶとなっています。 しかし今回の観察では、本種の雄包膜の多くは中肋の左右に並び、所々中肋上にも雄包膜があるだけで、「多列に並ぶ」とまでは言えない状態でした。
上は数少ない中肋上の雄器を含めた葉状体の断面です。 本来は中肋の左右と上の3ヶ所に雄包膜に守られて造精器が存在するはずですが、上の切片では、右側で造精器がはっきり確認でき、上でも雄包膜に囲まれて造精器の基部が残っているようです。
下は右側の雄器の拡大です。
(2021.2.20. 箕面公園)
上はアカイチイゴケなどと混生しているアカウロコゴケ Nardia assamica で、胞子体をつけています。
2月12日に載せたミドリコケビョウタケが寄生していたのも、本種でした。
上の写真の最小目盛は 0.1mmです。 葉の大きさはいろいろですが、概して雌苞葉やそれに近い葉は大きくなり(といっても長さ 0.5mmほどです)、密につくようです。
上の2枚は、1枚目はほぼ横から、2枚目はほぼ腹面から見ています。 葉は全縁で円頭~微凹頭、斜めにつき、斜めに開出して離在~接在しています。 腹葉は大きく茎と同じ幅で、卵状舌形です。
上は葉身細胞です。 油体は半数以下の細胞に各1個で、球形~楕円体、微粒の集合です。
花被は5~6稜で、雌包葉から超出しています(上の写真)。
上は花被やペリギニウムで保護されている胞子体の断面です。 ペリギニウムの長さ(赤い線)と花被の長さ(黄色の線)は、ほぼ同長です。
なお、この胞子体が伸び出した様子はこちらに載せています。
(2021.2.11. 箕面公園)
◎ アカウロコゴケはこちらにも載せています。
上の写真の黄色い楕円で囲んだコケ、このブログの 2021.2.14.に載せたアナナシツノゴケの葉状体の間で育っていました。 探してみると他の葉状体の間にもあって・・・
みつかったものを並べたのが上です。 両端の株は胞子体をつけています。 葉状体の下部は褐色を帯びています。 中肋はみあたりません。
2~3回羽状に分枝しています。
上は胞子体です。 スジゴケ科の特徴として、包膜は退化し、カリプトラが発達しています。
以上の観察結果から、写真のコケはナガサキテングサゴケ Riccardia nagasakiensis だと思います。
(2021.2.11. 箕面国定公園)
岩上に育つケギボウシゴケ Grimmia pilifera です。 上は乾いている状態で、葉は茎に圧着しています。 前に蒴をつけたケギボウシゴケを載せていますので(こちら) 今回は1枚の葉を少し丁寧に観察してみました。
葉は卵状披針形で、葉先は透明尖になっています。
上は透明尖の拡大です。
上は葉の基部で、この場所の葉身細胞は長く伸びた矩形です(上の写真)。
葉の基部をもう少し拡大してみました(上の写真)。 よく見ると、細胞の縦壁が節状に肥厚しています。
上は葉の上~中部の葉身細胞で、矩形~方形で厚壁です。 下はこの一部をさらに拡大しています。
あちこち細胞が重なって見えています。これは細胞が層になっているためで、そのことを確認しようと葉の断面を作ったのが下ですが・・・
葉の断面を見ると、葉身は1細胞層です。 いくつか断面を作って観察してみましたが、1細胞層の葉身しか観察できませんでした。 多くの場所は1細胞層で、所々で層になっているということなのでしょう。 野口の図を見ると葉身部は2~4細胞層になっていますが、個体差だと思います。
上は中肋の横断面の拡大です。
(2021.2.11. 箕面国定公園)