2024-11-21

コメリンスゴケ

 写真はコメリンスゴケ Neckera flexiramea でしょう。 基物は確認を怠りましたが、岩またはコケ群落に隠れた木(または枯木)だったと思います。

 上は湿った状態ですが・・・

 乾くと上のように枝先が上方に巻きます。

 葉は横じわがあり、扁平に密に重なっています。



 葉は長さ 1.5~2㎜、非相称で、中肋はふつう短く1本または二叉し、葉先は鋭頭です(上の3枚の写真)。

 上は葉身細胞で、長さは 30~50μmでした。

 翼部は短い細胞で構成されています(上の写真)。

(2024.11.4. 滋賀県多賀町)

◎ コメリンスゴケはこちらにも載せています。

2024-11-20

アツブサゴケ

 写真はアツブサゴケ Homalothecium laevisetum でしょう。 若い蒴をつけ、コンクリートの擁壁上で育っていました。

 基物に接して這う茎から多くの枝を出し、枝は密に枝分かれし、密に葉をつけています。 枝は長さ約2cm、幅は葉を含めて約2㎜、蒴柄の長さは7~10㎜です。
 葉は湿っている時は上や1枚目の写真のように開いていますが・・・

 乾くと上の写真のように葉が枝に圧着します。

 葉は広披針形で長さ 1.5~2.5㎜、深いひだがあり、翼部や葉の基部は暗く見えています。 上の写真では葉の上部の歯しか確認できませんが、細かい歯は葉縁全周にあります。

 中肋は、深いひだと紛らわしいのですが葉長の 2/3~3/4に達していて、その背面上端は上の写真のように歯で終わっています。

 葉身細胞は長さ 40~50μm、幅3~5μm、平滑でやや厚壁です(上の写真)。

 翼部および基部の細胞は短く厚壁です(上の写真)。

 蒴はほぼ直立しています。 帽の毛に関しては平凡社には記載がありませんが、野口の図には明瞭に示されています。

 帽を外してみました(上の写真)。 蓋には長い嘴があります。 蒴柄は平滑です。 スケールは1㎜です。

(2024.11.4. 滋賀県多賀町)

こちらには本種の蒴歯の様子などを載せています。 また葉については、こちらにも載せています。

2024-11-19

リュウキュウシノブゴケ

 

 写真はリュウキュウシノブゴケ Thuidium glaucinoides だと思います。 石灰岩についていました。

 トヤマシノブゴケよりやや小形で、上部の枝は鋭角に出ているように思います。

 上は茎葉です。 時期的なものか、葉縁が枯れている葉が多く、上は茎の先端に近い所についていた茎葉ですので、他の多くの茎葉に比較して小形です。 茎葉の先は長く尖るが、透明尖にはなっていません。
 なお、理由は分かりませんが、葉先近くが欠けている葉も散見されました。

 上は茎葉(3枚)の葉先です。 茎葉の先端の細胞は鈍頭です。

 上は茎葉の葉身細胞で、1個のパピラがあります。

 上は枝葉です。

 上は毛葉です。 毛葉は短い細胞からなり、中央にパピラがあります。 右の毛様には茎の表皮細胞が少しくっついています。

 細い枝には毛葉はほとんどついていません(上の写真)。

(2024.11.4. 滋賀県多賀町)

◎ リュウキュウシノブゴケはこちらにも載せています。

2024-11-17

ジングウホウオウゴケ

 写真はジングウホウオウゴケ Fissidens obscurirete でしょう。 葉は茎の基部まで密についています。 公開されている廃坑内で、ライトに照らされて育っていました(2024.11.16.撮影)。 照度は測定していませんが、かなり暗い環境でした。 本種はうす暗い環境を好むホウオウゴケとされていますが・・・。
 (“通常”の)野外で見られた本種は、こちら(蒴あり)こちら(蒴なし)に載せていますが、以下の観察結果とほとんど変わらず、特殊な環境であるにも関わらず、正常に育っていることが分かります。

 上の写真ではよく分かりませんが、蒴は茎に頂生しています。

 上は乾いた状態です。 蒴は蓋が取れています。

 茎の長さは葉を含めて 1.4~4.0㎜、葉の長さは、最下部の葉とまだ伸びきっていない若い葉を除くと、0.9~1.4㎜です。

 上は茎の中央付近についていた葉です。 葉は披針形~線状披針形で、細く、鋭頭です。

 中肋は明るく、葉先から短く突出しています。 葉身細胞には多くのパピラがあります。

 上は背翼の葉身細胞です。(写真右下に少し中肋が写っています。) 細胞は方形~六角形で、長さは5~8μmです。 なお、腹翼の細胞も上翼の細胞も、形も大きさもほとんど同じでした。

 上は葉の基部で写真上方が背翼、下方が腹翼です。 腹翼の片方が破れて無くなっていますので、腹翼の基部付近が分かりやすくなっています。
 腹翼基部の葉縁には、舷と言えないまでも、他の葉身細胞より細長く、パピラの無い2~3の細胞がありました。 この様子は以下に書く苞葉とは、かなり異なっています。

 上は苞葉です。 葉より細く長く、中央が凹んでいます。


 上の2枚は苞葉の基部です。 苞葉の腹翼には2~3列の細胞からなる舷があります。 なお、この舷は最上部の1(~2)対の葉でも見られました。

 蒴柄にパピラはありません(上の写真)。

 胞子体の基部には造卵器がたくさん残っていました(上の写真)。

2024-11-15

ミヤケハタケゴケ

 写真はミヤケハタケゴケ Riccia miyakeana でしょう。 敷石の隙間で育っていました。

 上の写真の葉状体の幅は1~2㎜です。 平凡社などでは4㎜に達するようですので、十分に広がることのできない生育場所の関係で、小さくなっているようです。
 葉状体の基部が少し海綿状になりかけています。

 本種は葉状体に気室があります。 背面から見ると、気室の区画が多角形の模様に見えます(上の写真)。

 上は葉状体の断面です。 薄い切片では上の写真のように気室が確認できますが、切片が厚いと、細胞が重なり、分からなくなります。

 上は葉状体の断面です。 胞子体は成熟しているのですが、背面の盛り上がりはありません。

 上は胞子です。 左が遠心面、右が求心面だと思います 径は 80~90μmです。

(2024.11.7. 京都市内)

2024-11-14

ミヤコゼニゴケ

 写真はミヤコゼニゴケ Mannia fragrans で、これも今年の苔・こけ・コケ展に出されていたコケです。 和名に「ゼニゴケ」とついていますが、ゼニゴケ科ではなく、ジンガサゴケ科で、印象はジンガサゴケによく似ています。
 和名の「ミヤコ」は東京都で発見されたところからで、関東地方のあちこちで確認されはじめたコケですが、近年は全国に広がっているようです(私はまだ育っている所は見たことがありません)。
 本種は腹鱗片の付属物が葉状体の縁からはみ出して髭のようにみえるのが特徴で、ヒゲゼニゴケという別名もあるのですが、時期的なものか、採集されて時間が経っているためか、上の写真では、髭はわずかしか見えていません。

 上は腹鱗片とその付属物を取り出して撮った顕微鏡写真です。

2024-11-13

クサビゼニゴケ

 写真はクサビゼニゴケ Marchantia emarginata subsp. cuneiloba です。 これも今年の苔・こけ・コケ展で見せていただいたコケです。
 葉状体は密集します。 本種は長くトサノゼニゴケに統合されていましたが、鄭・嶋村(2022)により、トサノゼニゴケから分離されました。 トサノゼニゴケはふつう葉状体の中央に細い帯状の暗色部分がありますが、本種にはふつうこの暗色の線はありません。 また、今回は見られませんでしたが、雌器托の裂片の数はトサノゼニゴケより多いようです。

 葉状体の幅はトサノゼニゴケとほぼ同じです。

 杯状体の縁は繊毛状です。

 上は腹面を撮っています。 腹鱗片の付属物の形は、トサノゼニゴケが歯のある三角形から五角形であるのに対し、本種では歯のある卵形です。 上の倍率では歯は分かりませんので、下に顕微鏡写真を載せておきます(ゴミが多いですが・・・)。