2020-06-22

ネジレゴケモドキ


 上の写真はよく似た葉のコケが数種混じっているのですが、蒴はネジレゴケモドキ Tortella tortuosa のものだと思います。 育っていたのは側溝のコンクリート上でした。


 葉は長さ2mmほど、上の写真の蒴柄は12mmほどですが、平凡社の図鑑では14~17mmとなっていて、茎ももっと伸びるはずですから、標準サイズより少し小型のようです。 蒴は蓋を入れて長さ3mm、帽の先までだと4mmの長さです。


 細かい砂がたくさんついてしまいましたが、乾くと葉は上のように縮れます。

※ 標本として保存されていた乾ききった葉の様子はこちらに載せています。


 上はプレパラートにした1枚の葉です。 葉は湿ると波打ちます。 葉基部の細胞は長い矩形で平滑、透明です。 この透明の細胞群は葉縁に沿ってせり上がり、中部の緑色の細胞群との境界は明瞭なV字形になっています。 中肋は葉先から少し突出しています。


 葉身細胞は方形~丸みのある方形で、多くのパピラがあります(上の写真)。


 上は中肋付近の葉の横断面です。 中肋ではガイドセルを挟んで背腹両側にステライドがあります。 葉身細胞は1層で、パビラは背腹両面にあります。


 上は茎の横断面です。 上に書いたようにあまり生長の良くない群落のようで、どの植物体の茎も細く短く、あまり良い切片とは言えませんが・・・。
 同じ属に分類され、少し小型の種にコネジレゴケがあります。 植物体の生長が良くないのでこの種の可能性も疑ったのですが、決め手は上の写真でした。 本種の茎には中心束がありませんが、コネジレゴケの茎には中心束が存在します。


 上は帽を取り去った蒴です。 蒴がまだ若く、帽をピンセットで挟んで引っ張っても取れなかったので、蒴歯を見るために蒴壁を薄く切り取り、その切れ目に針を差し込んで帽を持ち上げて外しました。
 和名の「ネジレ」も学名の属名も種小名も、上の写真のように蒴歯がねじれていることに由来するのだと思います。

(2020.6.15. 兵庫県 六甲山)

◎ ネジレゴケモドキはこちらにも載せています。