3月26日に高槻市の「あくあぴあ芥川」でコケの観察会があり(こちら)、その時、上の写真のように、水の溜まる容器の縁にびっしりと生えているコケがありました。
配偶体は密に絡み合っていて、たくさんの胞子体をつけていました(上の写真)。 葉をルーペで見ると1本の中肋が葉の中部以上に達しているのが確認できたので、アオギヌゴケの仲間だろうとしておいたのですが、少し持ち帰り、調べてみました。
茎は這い、多くの枝を上方に出しています。 蒴柄は平滑で長さは3~3.5cmでした。
上は茎葉です。 葉先は細長く、尖っています。
上は茎葉の基部です。 翼部は方形~短い矩形の小形の細胞がやや明瞭な区画をつくっています。
上は葉身細胞です。
上は枝葉(たくさん胞子がついてしまいました・・・)と、その基部です。
以上のような観察結果を基に、アオギヌゴケ属だろうとあたりをつけて平凡社の検索表で調べたのですが、それらしいコケに行き当たりません。 あきらめて西村先生に標本を送り、同定をお願いしました。
標本郵送後、水分の多い所に育っていたこと、葉先がやや急に細くなって長く伸びていること、葉身細胞の様子がアオギヌゴケ属らしくないことなどから、ヤナギゴケ科ではないかと気づきましたが、同定していただいた結果も、やはりヤナギゴケ科のヒメヤナギゴケ Amblystegium serpens だろうということでした。 その時、このコケの葉身細胞の形は Cratoneuron(シャグマゴケ属)にも近いが、この属は雌雄異株で、標本のものは雌雄同株(異包)だとお聞きしました。 雄器の存在には気づいてなかったので、探してみました。
上は胞子体のついている茎(これをSとします)です。 胞子体は黄色い矢印の所から写真手前に伸びてきていて、ピントは合っていませんが、画面中央にぼんやり蒴が写っています。
下は上の赤い四角で囲った所の拡大です。
上の写真のあちこちに丸い芽のようなものが見られます(分かり易い所を赤い円で囲いました)。 これを顕微鏡で観察すると・・・
芽のように見えたのは雄苞葉で、中には役割を終えた造精器がありました(上の写真)。 つまりAの茎の矢印の所には胞子体の元になった造卵器があり、同じ茎の別の枝には造精器があったことになります。
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