2025-06-19

クロバネキノコバエ科の一種

 下は Part1の 2013.1.6.に載せていたものを加筆し、こちらに引っ越しさせた記事です。 写真は 2012.12.14.の撮影です。 

 ハエやカの仲間の分類には翅脈が重要になります。 上は翅脈の様子から、クロバネキノコバエ科(Sciaridae)の一種だと思います。 また、左右の複眼がつながっている(眼橋と呼ばれています)のもこの科の特徴ですが、上の写真でも、かろうじて確認できます。

 クロバネキノコバエ科は、タマバエ科やキノコバエ科と近縁とされていますが、脛節の端に刺があるのはタマバエ科との区別点になります。
 和名に「キノコバエ」とあるのは、この科にはキノコに湧く種類もあるからですが、多くの種では幼虫は土に発生し、腐植した植物を食べて育ちます。
 名前にクロバネとついていますが、翅は黒色とは限らず、透明や、褐色のものや、まれには斑点や暗色の帯があるものもいるようです。 餌は植物の遺体や菌類などです。
 日本では、クロバネキノコバエ科は約500種が確認されているようですが、これは記録されている種数であり、未記載の種も含めるとさらに多く存在すると考えられています。

2025-06-13

コモチネジレゴケ

 生垣の下のコンクリート壁についていたコケ、雨で濡れてよく分からないので少し持ち帰り、水分を拭き取って映したのが上の写真です。 ヒナノハイゴケの群落の所々にコモチネジレゴケ(赤い円内)が育っていました。
 コモチネジレゴケ Syntrichia laevipila は、これまで何度か木の割れ目の奥で育っているのを見たことがありますが、このようなコケの群落に混じって育っているのを見るのは初めてです。

 どちらの葉も葉先が細く伸びています。 2種の葉を並べて比較してみました。 左がコモチネジレゴケ、右がヒナノハイゴケです(倍率は異なります)。

 上はコモチネジレゴケの葉身細胞で、「C」形をしたパピラがあります。

(2025.6.11. 大阪府 岸和田市内)

◎ コモチネジレゴケは茎頂や葉腋に無性芽をたくさんつけるのですが、雨で流れてしまったのか、最初の写真ではほとんどありません。 無性芽をたくさんつけた様子はこちらをご覧ください。

2025-06-09

フソウツキヌキゴケ

 

 上は無性芽をつけたフソウツキヌキゴケ Calypogeia japonica です。 岩上にありました。

 上の写真は上が腹面、下が背面ですが、この撮り方では違いがよく分かりませんね。 とにかく、葉を含めた茎の幅は 2.5~2㎜、葉は広舌形で円頭です。


 上の2枚は腹葉です。 仮根が腹葉のすぐ下から出ています。 腹葉はやや湾入してつき、1/2ほど2裂し、両縁の基部は下延しています。


 上の2枚は葉身細胞です。 トリゴンが無く、表面は平滑で、油体は微粒の集合で眼点があります。

(2025.6.1. 京都市右京区京北上弓削町)

◎ フソウツキヌキゴケはこちらにも載せています。

2025-06-08

フトリュウビゴケ

 写真はフトリュウビゴケ Loeskeobryum cavifolium でしょう。 、雨で濡れています。 蒴をつけていたので、持ち帰って観察することにしました。

 大形のコケで、上の写真では長さ約8cmですが、10cm以上にもなります。 枝は不規則またはまばらに出て1~2回羽状に分枝しています。

 葉は丸く重なりあってついています。 ついている葉を見るかぎりでは、茎葉と枝葉は、大きさは異なりますが、葉形の違いはあまり無さそうで、幅広い葉身部から急に細くなった葉先が飛び出ています。 雌苞葉は披針形です。

 上は茎葉です。 基部は耳状に下延して茎を抱きます。 2本の短い中肋があります。

 上は葉身細胞です。

 葉を取り除くと、茎にある多くの毛葉が確認できます(上の写真)。 茎は赤褐色です。

 上は茎の横断面で、表皮には多くの毛葉がついています。 下は上の中央付近の拡大です。

 上の写真の中央付近には中心束が写っています。

 蒴は傾き、非相称です(上の写真)。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮っています。 蒴歯は2列で完全です。

(2025.6.1. 京都市右京区京北上弓削町)

◎ 上のフトリュウビゴケは岩から垂れ下がっていましたが、本種は地上でも育ちます。 こちらには平らな所で育った本種の春の枝の伸び出している様子などを載せています。 またこちらには毛葉の顕微鏡写真などを載せています。

2025-06-07

イワダレゴケ

 写真はイワダレゴケ Hylocomium splendens でしょう。 新芽が伸びてきています。 濡れているのは雨後のためです。 京都市右京区京北上弓削町で2025年6月1日に撮影しました。
 平凡社では、「(本種は)深山,とくに亜高山の針葉樹林の林床や岩上,腐木上にしばしば大きな群落をつくる。」とあります。 私も針葉樹林帯ではたくさん見ていますし(例えばこちら)、一度だけブナ帯で見たことがありますが、市の外れとはいえ京都市の標高500m付近にあったのには少し驚きました。

 本種はふつう春に茎の途中から新芽が伸びますが、新しく伸び出した茎の下部では枝を出さず、上部で羽状に分枝します。 そのため、階段状に枝を広げた数から、何年成長を続けた茎かを推定することができます。 上の写真のものでは、少なくとも7年目に入ったと考えて良いでしょう。

 本種の茎葉と枝葉とは、上の写真のようにかなりの大きさの違いがあります。 また、茎や太い枝には多くの毛葉があります。

 上は茎葉です。 茎葉は長さ2~3㎜、卵形の葉身部から急に細く屈曲した葉先となります。 中肋はふつう2本です。

 葉縁にはほぼ全周に細かい歯があります(上の写真)。

 葉の基部には褐色の細胞が並んでいました。 上の写真の左下には毛葉も写っています。

 上は葉身細胞の背面で、右が葉先方向です。 細胞の上端に小突起があります。

 上は茎の横断面で、表面は多くの毛様で覆われています。 中心束はありません。

こちらには蒴をつけたイワダレゴケを載せています。