平凡社の図鑑に記載されている日本産シモフリゴケ属(Racomitrium)は、最近の研究をまとめると5属に整理できるようで、出口ら(2020)が属の検索表を「日本産シモフリゴケ類の分類の現況」として蘚苔類研究12巻3号に載せられていることは知っていました。 しかしどの種がどの属に分類されたのかは分からないままで、そのままにしていました。
最近、スナゴケの仲間を観察していて、平凡社の図鑑や野口をみても分からないところがいろいろ出てきたのでM氏に相談したところ、2019年の蘚苔類学会で各属に含まれる種の発表もあったことを教えていただき、平凡社の図鑑と対比する形で、下のようにまとめてみました。
クロカワキゴケ属(新称) Bucklandiella
B. laeta トカチスナゴケ
B. macounii ssp. alpina フトスジスナゴケ(仮称)
B. microcarpa
B. nitidula テリカワキゴケ
B. sudetica ヒメスナゴケ
B. vulcanicola コモチシモフリゴケ 北海道と本州の標高の高い所に分布
エゾスナゴケ属 Niphotrichum
N. barbuloides コバノスナゴケ
N. canescens ssp. latifolium ヒロハスナゴケ
N. ericoides ハイスナゴケ
N. japonicum エゾスナゴケ
N. muticum タテヤマスナゴケ
シモフリゴケ属 Racomitrium
R. lanuginosum シモフリゴケ
チョウセンスナゴケ属(新称)Codriophorus
C. acicularis マルバスナゴケ
C. carinatus チョウセンスナゴケ
C. mollis ヤワラスナゴケ マルバスナゴケに似て楕円形の葉を持つ
ミヤマスナゴケ属(新称)Dilutineuron
D. brevisetum クモマスナゴケ
D. canaliculatum ナガエノスナゴケ
D. corrugatum クネリバスナゴケ(仮称)
D. fasciculare ミヤマスナゴケ
上で、ボールドは平凡社の図鑑には載せられていない種です。 一方で、下の3種は平凡社には載せられているのですが、上では無くなっています。
R. aquaticm ナミカワスナゴケ → ヨーロッパに分布する種のようです。
R. brachypodium ハリスナゴケ → チョウセンスナゴケのシノニム
R. heterostichum クロカワキゴケ → 日本には存在しない種で、誤同定だったようです。
------(以下、2026.8.3.追記)-------------------------------------------------------
OMN No.61(2026)に西村・大作によるシモフリゴケ属(広義)の新たな5属の検索表が載せられています。 この検索表は、Noguchi 1974 を改変し、一部は出口2001、Bedrenak-Ochyra et al.2015 を参照して作成されています。 とても分かり易い検索表ですが、ブログでは閲覧環境により行の文字数が変化しますので、ブログ用に改変した検索表を下に載せます。
1.葉の表面では,細胞腔上にパピラがでる ・・・ 2.へ
1.葉の表面はほぼ平滑,または細胞腔間の縦壁上に偽乳頭(注2)がでる ・・・ 3.へ
2.パピラは透明尖(注1)の細胞腔上に限られる ・・・ シモフリゴケ属(狭義) Racomitrium
2.パピラは葉身部の細胞腔上に主にでる ・・・ エゾスナゴケ属 Niphotricum
3.葉には毛尖がある.葉身細胞はほぼ平滑か,低く不明瞭な偽乳頭がでる ・・・ クロカワキゴケ属 Bucklandiella
3.葉の先端には毛尖注1がない.葉身細胞には高く盛り上がる偽乳頭がでる ・・・ 4.へ
4.中肋の横断面で,中肋背面側の膨らみは強く,中肋部と葉身部との境界は明瞭.葉の尖端近くで葉身細胞は短くなる ・・・ チョウセンスナゴケ属 Codriophorus
4.中肋の横断面で,中肋背面側の膨らみは弱く,中肋部から葉身部へは徐々に移り変り,境界は不明瞭.葉の尖端近くで葉身細胞は縦に長くなる(クモマスナゴケを除く) ・・・ ミヤマスナゴケ属 Dilutineuron
(注1)透明尖:葉の先端が尖り,透明になる場合に,本稿では,透明尖と呼び,透明尖が針状に細長く尖る場合は毛尖と呼ぶ.
(注2)偽乳頭 pseudopapillae:葉身細胞で,縦方向の細胞壁が背面と腹面に膨れて盛り上がる肥厚. Deguchi 1979 の“joint-thicknings"と同義である(Frisvoll 1988).なお,「ほぼ平滑」と記載されている場合でも,葉の横断切片を観察すると,高さの低い肥厚をしていて,偽乳頭となっていることがある. 本稿では,パピラpapillaeを細胞腔上の肥厚(突起)とし,偽乳頭やプロレイト(細胞上端の突出)とは区別する.