下の写真で左から右に伸びているのがアシボソです。 多くの場合はこんなに倒れないのですが、穂が稔って重くなったのでしょうか。
アシボソはイネ科の1年草で、伸びた茎の先に、枝分かれしない穂を2~3本つけます。
上は穂の一部を撮ったものです。 小穂に芒のあるものと無いものがあり、アシボソとヒメアシボソに分けることもありますが、両者は中間型でつながりますので、区別する必要は無いようです。
上は小穂が分かり易いようにピンセットで少し広げて撮ったものです。 秋のイネ科はキビ亜科が多く、キビ亜科では有柄小穂と無柄の小穂が対を成しています。 上の写真では、このペアを水色の線で結んでおきました。
(2015.10.28.堺自然ふれあいの森)
2015-10-31
2015-10-30
2015-10-29
タムラソウ
タムラソウは筒状花のみからなるキク科の多年草です。 日本での分布は、本州、四国、九州ですが、自生地はそんなに多くはありません。 葉は羽状に深く裂けています。 花期は8~10月です。
上の写真、クリチャササグモがくっついていますが、今回は総苞片に注目。 総苞片は隙間なく並び、それぞれの先端は短いトゲになっています。
1つの花(小花)に注目すると、花弁は5枚で、他の多くのキク科の花同様に5本のオシベがくっつきあって筒を形成し、その筒の内側に花粉を出し、花粉は筒の内側を伸びてくるメシベに次第に押し出されます。
上の写真の黒っぽいものがオシベ(の集まり)です。
タムラソウは一見アザミ属のようにも見えます。 しかし葉が柔らかく刺が無いこと以外にも、以下のようにいろいろ違いがあります。
上の花は終わりに近づき、オシベの筒からはメシベが長く突き出ています。 花柱の先は深く2裂し、次第にくるりと巻きかえってきます。
上は花が終わり、果実が形成された時の姿です。 下の【 参考 】に載せたように、アザミ属の冠毛は羽状に枝を分けているのですが、タムラソウの冠毛は枝を分けません。
果実の下端は花床に斜めにつきます。 上の写真の少し凹んだように見えている所が花床についていたところです。
(最初の3枚は2015.9.22.に、後ろの3枚は10.27.に堺自然ふれあいの森で撮りました。)
【 参考 】 ヨシノアザミの冠毛(2015.10.9.撮影)
2015-10-28
2015-10-27
2015-10-26
ヤマトヨウジョウゴケ
2015-10-25
ウニヤバネゴケ
写真はコヤバネゴケ科のウニヤバネゴケ( Cephaloziella spinicaulis )、小さなコケで、茎の幅は葉を含めて 0.1mmほどです。
上は湿らせた状態で、水を含んで少し膨れますが、それでも茎の幅は、葉を含めて 0.2mmほどです。(拡大率は1枚目と同じではありません。)
左右に短く突き出しているのが葉でしょうが、小さなうえに、葉も茎も多細胞性の刺が密生していて、輪郭もはっきりしません。(そのわけのわからないところが魅力ですが・・・。) 和名はこのトゲを海に棲むウニの刺に見立てたものでしょうか。
上の写真の上に突き出した枝の部分を拡大したのが下の写真です。
(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)
◎ 表面のトゲの様子や枝の幅などがもう少し分かり易い写真をこちらに載せています。
2015-10-24
セグロシャチホコ(オス)
壁にとまっていたセグロシャチホコのオス、このおもしろいスタイルの持ち主がどんな顔をしているのか見たいのに、ガードが固くてどちらから写そうとしても、しっかり顔を隠しています。
しかたがないので、手乗りしてもらいました (-_^v
どれが複眼かわかるでしょうか。
セグロシャチホコは年2化性で、幼虫の食餌植物はポプラやヤナギです。 下は葉の上にいる春の成虫で、姿勢はやはり同じです。
2015-10-23
イワマセンボンゴケ
赤茶けた岩に鮮やかな濃い緑色をしたコケ、イワマセンボンゴケ( Scopelophilla ligulata )です。 「イワマ」は「岩の間」の意味のようです。
岩肌の赤茶けた色は鉄分が多いからでしょう。 鉄はもちろん植物にも必要ですが、土壌中の多すぎる鉄分は植物の生長を阻害するようで、特にリン酸の固定力を高めることで植物がリン酸を吸収しにくくしたり、拮抗作用によってカリウムイオンの吸収を阻害するようです。
コケの仮根は体を固定させるためのもので、吸収は植物体全体で行うのですが、多量の鉄イオンの有害性は維管束植物の根からの吸収の場合と同様でしょう。 ただ、イワマセンボンゴケは他のコケなどに比較して鉄イオンに対する耐性があるために、他のコケが育たない環境を“独り占め”できるのでしょう。
育っていた所では上の写真のように葉が開いていますが、乾くとすぐに2つ折りになって縮れます。 下の写真の葉は水に漬けて広がっていた状態から取り出し、ティッシュで水分を吸い取って数十秒後です。
そして縮れた葉を水に漬けても、なかなか広がりません。 このような吸収能力の低さが上記の耐性に関係しているのでしょうか。
葉縁に舷は見られませんでした。 葉身細胞は六角形~矩形です。
(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)
◎ こちらでは銅イオンに耐性のある同属のホンモンジゴケと葉の比較をしています。
2015-10-22
コモチネジレゴケ
写真は、京都市市街地のビルに囲まれた樹幹に育っていたコモチネジレゴケ( Tortula pagorum )です。 前に帰化種の苔類であるミカヅキゼニゴケを載せましたが(こちら)、コモチネジレゴケは帰化種の蘚類です。 原産地はオーストラリアと考えられていて、原産地では雄株も雌株も見られますが、日本でみつかっているのは雄株のみです。 雄株からは胞子体は形成されませんから、無性芽(=“子”)のみで分布を広げているのでしょう。 上の写真でも葉腋や茎頂にたくさんの葉状の無性芽が見られます。
葉は広いさじ形で、中肋は突出して透明尖となっています(上の写真)。
葉身細胞にはC字型のパピラが見られます(上の写真)。
(2105.10.18.)
2015-10-21
ナガシタバヨウジョウゴケ
写真は渓流横のウツギの小枝についていたナガシタバヨウジョウゴケ( Cololejeunea raduliloba )です。
ナガシタバヨウジョウゴケを枝から剥がし、腹面から撮ったのが上の写真です。 舌形の腹片が見られますが、腹葉はありません。
上は腹片にピントが来るようにして顕微鏡( 10×10 )で撮ったものです。 この写真の赤い長方形で囲った部分が下です。
腹片は第1歯が円頭で大きく第2歯は尖っています。
上は背片の細胞です。 たくさんの油体が見られます。
(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)
◎ 若い胞子体を持ったナガシタバヨウジョウゴケはこちらに、腹片に見られるスチルスについてはこちらに載せています。
2015-10-20
アズマゼニゴケ@10月
写真はアズマゼニゴケ(アズマゴケ:Wiesnerella denudata )です。 和名からは東国に多いイメージですが、むしろ西日本に多いようです。
上は葉状体の裏側です。 腹鱗片はほとんど透明に近い色をしています。(こちらでは葉状体から取り外した腹鱗片を顕微鏡で観察しています。)
ところで、1枚目の写真の葉状体は、丸い雌器托と雄器托を並べてつけています。 黄色っぽいのは精子を出し終わり、役割を終えた雄器托です。 雌器托は受精卵から胞子体を形成し、雌器托柄を伸ばして胞子を散布するという大仕事を控えており、緑色で元気なようです。
下はこの雌器托と雄器托の断面です。
上の写真は左が雌器托で、右が雄器托です。 雄器托は上に書いたように精子を放出した後のようで、造精器のつくりも確認できず、スカスカの印象です。
雌器托の縁の巻き込んだ部分の、少しゴチャゴチャしたように見える所(黄色の長方形で囲った中央付近)に造卵器があります。 この長方形で囲った部分を顕微鏡で撮ったのが下の写真です。
上の写真の中央のフラスコを逆さにしたようなものが造卵器ですが、卵細胞は既に受精して細胞分裂を繰り返し、若い胞子体になっているようです(細かい細胞がぎっしり詰まっています)。
(以上、2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)
下は、2017.5.10.に高槻市出灰で撮影した、よく伸びた雌器托をつけたアズマゼニゴケです。
まだ裂けていない胞子体も見えています。 この胞子体が裂けて胞子を散布している様子はこちらに載せています。
下は胞子です。
◎ こちらには、上のほぼ1ヶ月前にあたる時期の、柄がまだ伸びていない雌器托やその内部の様子などを載せています。
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