2017-04-30

ブログ再開

 ブログを再開します。 石垣島・西表島で撮ってきた写真も「そよ風に乗って」に載せはじめています。

ヒメシワゴケ


 上はヒメシワゴケ Erpodium noguchianum (旧学名:Aulacopilum japonicum) です。 イチョウの幹と、それに接するような石垣にびっしりとついていました。 葉を扁平につけた枝や茎は這っています。 蒴は直立し、蒴の大部分を覆う帽にはひだがあります。 蒴柄は途中まで苞葉に覆われています。


 上の写真の中央には、胞子は出てしまったが蓋が残っている蒴が、下には蓋も取れて空になった蒴が写っています。 蒴には口環が見られますが、蒴歯を欠いています。


 葉は中肋を欠いています。


 葉身細胞は長さ 20~30μmで、全面に密に小さいパピラがあります。

(2017.6.26. 徳島県牟岐町川長)

2017-04-28

セミナーのお知らせ

 前にもお知らせしたように(こちら)、5月5日に神戸市立森林植物園でセミナー「コケの世界を撮ろう-コケを理解するための写真入門-」を開催します。
 コケがどんな所に育っているのか、どのようにして子孫を残しているのか、どんな種類があるのかなどのコケに関する内容と、それらの観察したことを写真として記録するコツをお話しします。
 開始が午前10時からですので、この時間に森林植物園に来ていただくには、公共交通機関利用の場合は、三宮からの市バスでは間に合わず、神戸電鉄「北鈴蘭台」駅から 9:05 発の森林植物園の無料送迎バスに乗っていただくのが便利です。
 下に無料送迎バスの乗り場を載せておきます。「北鈴蘭台」駅から東に 50mほどのところです。


2017-04-14

ヒロハヒノキゴケ


 上はスギの根元に群生しているヒロハヒノキゴケ Pyrrhobryum spiniforme var. badakense です。 右上にスギの枯枝が写っていますので、おおよその大きさは分かるでしょう。
 この群落と接するように地面にはヒノキゴケが群生していて、両者を比較すると大きさが明瞭に異なり、ヒロハヒノキゴケの方が小さいのですが、単独の写真ではヒノキゴケとの区別は難しいですね。 ただ、小さい分、胞子体がヒノキゴケよりも飛び出しているように思います。


 ヒノキゴケとの違いは、胞子体のついている位置を見れば明らかで、ヒノキゴケの胞子体は茎の途中につくのに対し、ヒロハヒノキゴケの胞子体は茎の基部につきます。


 ヒロハヒノキゴケは、琉球など世界の亜熱帯~熱帯に分布するハリヒノキゴケの変種とされています。 上はヒロハヒノキゴケの雌苞葉を撮ったものですが、ハリヒノキゴケの苞葉は1mmあまりであるのに対し、ヒロハヒノキゴケの苞葉は4mm以上あります。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

こちらでは本種の配偶体をもう少し詳しく観察しています。


2017-04-13

イワダレゴケ


 上は岩から垂れ下がるイワダレゴケ Hylocomium splendens、まさに岩垂れゴケです。 イワダレゴケは大型で、世界に広く分布するコケです。 多年性のコケで、上の写真の右下でよく分かりますが、前年度に成長してアーチ形に曲がった茎の途中から今年度の茎が出て、植物体は全体として階段状になります。 年次成長が明瞭ですので、この階段を数えることで、何年経っているかが分かります。


 植物体を伐り株の上に置いてみました。 階段状になっている様子を平面の写真で表現するのは難しいうえに、毎年同じように成長できるとも限らず、難しいところもあるのですが、上の植物体で5~7年経っていると思います。


(2016.7.21. 北八ヶ岳)
 昨年の7月に撮った写真ですが、まだ載せていなかったことに気付き、載せることにしましたが、コケに限らず、そんな写真がまだまだあります。 ブログに載せるより野外に行きたい気持ちの方が強いからですが、どうしよう・・・

◎ イワダレゴケの蒴や葉の様子などはこちらに載せています


2017-04-11

KOBEコケ展2017


 KOBEコケ展2017 のポスターができました。

 私の担当するセミナーについてはこちらに載せています。


2017-04-10

キダチヒラゴケ


 上の写真の中央から左右に広がっているのがキダチヒラゴケ Homaliodendron flabellatum です。 大きなコケで、右上のスギの枯葉と比較しても、その大きさがわかるでしょう。
 渓谷の岩上に生えていましたが、濡れているのは雨のためです。


 這う一次茎(上の写真の左下)から立ち上がった二次茎は平らに羽状に分枝しています。 1枚目の写真も二次茎しか写っていませんが、一次茎からたくさんの大きな二次茎が出ているのですから、とても大きなコケですね(こちら)。 こちらでは一次茎から二次茎が分枝する様子などを観察しています。


 二次茎や枝につく葉は光沢があり、扁平についています。


 葉は非相称で葉先の縁には大きな歯牙があります。基部の縁は片側だけが内曲していて、上の写真でも折れ曲がっています。 中肋は葉の中部に達しています。



 上の2枚は同じ葉の葉身細胞で、歯牙に近い所と中肋に近い所とを載せました。 場所によって細胞の形や長さが異なっていますが、平凡社の図鑑に記載されている葉身細胞の形や長さは前者についてのみのようです。

 ところで、下の写真で、赤い丸で囲ったものはゴミ(小石?)ですが、これと似た大きさのものが茎に接してたくさんあります。 少しボケて見えるのは、これが葉と葉の間にあるからで、葉をとおして見ているからです。


 下の写真は、このうちの2つについて、上にある葉を取り除き、深度合成したものです。 写真の右上にはもう一つ、葉に隠されているものが存在します。


 葉よりも細く小さい褐色や緑色の苞葉に守られて何かがあるようですので、この部分を取り出し、光がとおるように半分に切って薄くして顕微鏡で撮影したのが下です。


 細胞が一列につながった糸状の側糸らしいものが見えることから、色の濃い部分は精子を出し終えた造精器ではないかと思います。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

こちらではキダチヒラゴケについて、胞子体を中心に観察しています。


2017-04-09

ツツハナバチ(オス)の羽化

 たまにはブログらしく今日の記事を・・・


 自宅に設置した竹筒で、ツツハナバチ Osmia taurus のオスの羽化が始まりました。 昨年より1週間ほど遅れています。 竹筒周辺の気温は 17.6℃でした。


 上の写真では、全身の見える1頭の他、竹筒の奥に7頭の顔が見えています。 産卵の日は竹筒ごとに違うはずなのに、羽化の日時はみごとに一致していて、不思議です。


 後ろから押されるように出てくるものもいますし、なかには上のように2頭が重なるようにして出てくるものもいます。


 竹筒から出てすぐに飛べるものは稀で、多くは竹筒の上を歩き回ったり、落下していまいます。 竹筒から出てしばらくすると蛹便を排出します。 蛹便は淡いクリーム色でした(上の写真)。


 竹筒から落ちておぼつかない足取りで歩き回っているツツハナバチを追いかけていると、普段はなかなか見せてくれない腹面を見ることができました(上の写真)。 オスですので腹部の下面に刷毛はありません。

 羽化してくるのは、見ていた限りでは全てオスでした。 竹筒のなかでは部屋が一列に並んでいるはずですから、竹筒の奥の部屋にはまだメスが残っているのでしょうか。 だとしたら、部屋は奥から順に作られていくはずですから、最初の頃にはメスになる卵が産みつけられ、産卵後期の竹筒の入口に近い所には雄になる卵が産みつけられるのでしょうか。

2017-04-08

トサハネゴケ


 上はトサハネゴケ Plagiochila fruticosa です。 渓谷脇の湿った岩上に生育していました。


 多くの枝は上のように左右に出ていますが・・・


 上の写真は腹面を斜め上から撮っています。 一部の枝は腹面からムチゴケ型分枝をし、その枝(上の写真では左上に伸びている枝)は鞭枝となっています。 下はその分枝している部分の拡大です。


 平凡社の図鑑のハネゴケ科の検索表は、この鞭枝の有無からはじまっています。 このような鞭枝を持つハネゴケ科は3種に限られるのですが、トサハネゴケでこのような分枝の個所は稀で、見逃せば検索表の別の分岐に入ってしまいます。


 上は枝の先を撮っていますので葉は下に行くほど大きくなっています。 植物体全体を見た場合、大きな葉は1~1.5mmほどになります。 葉の腹縁にも歯が存在しますが、内曲しているために縁と重なり、分かりづらくなっています。


 上の赤い円で囲ったものが腹葉です。 腹葉は小さく、不規則に裂けています。


 上は葉身細胞です。 油体は球形~米粒形で、小粒の集合です。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

2017-04-07

イサワゴケ



 写真はイサワゴケ Syrrhopodon tosaensis だと思います。 スギの根元で育っていました。


 葉の長さは2~3mmです。 葉先には褐色の無性芽をつけています。


 葉は披針形で、中肋は葉先に届いています。 基部は中肋の左右に網目状組織が広がります。 また、葉縁には透明な舷があります。


 各葉身細胞には1個の先の分かれたパピラがあります(上の写真)。 下はこのパピラが各細胞の中央に1つずつあることを示すために、ほぼ同じ所をピントを少しずらして撮ったものです。 なお、上と下のような写真を深度合成しても、像が同一面に重なるだけで、立体的に見えることはなく、かえって分かりづらくなります。


 同属のヒメイサワゴケにもパピラはありますが、葉形などが異なります。


 葉鞘部の肩には単細胞の透明な刺がありました。 上の写真はこの部分を撮ったものですが、葉が上下に波を打っていたので、上にも下にもピントを合わせるために8枚の写真を深度合成しました。 結果、刺の並んでいる様子はよく分かるようになったのですが、中肋の部分は上下関係不明の細胞が重なって写っています。


 上は葉の先端部分です。 中肋の背面にはたくさんの刺が見られます。

(2017.3.25. 徳島県海部郡海陽町相川)

◎ イサワゴケはこちらにも載せています。


2017-04-06

「KOBEコケ展 2017」とセミナーのご案内

 5月3日~5日に、神戸市立森林植物園で「KOBEコケ展 2017」が開催されます。
 私も参加して、写真展示の他、5月5日には「コケの世界を撮ろう-コケを理解するための写真入門-」と題してセミナーを担当します。

  日時 5月5日(金祝) 10:00~11:30 
  定員 40名 (申し込み先着順)
  費用 無料(植物園入園料は必要です)
  場所 神戸市立森林植物園 森林展示館2階研修室

 コケに関心のある人にも、小さな被写体の撮影に関心のある人にも聞いてもらえる話をするつもりで、現在準備中です。 ブログ未公開のコケの写真も使用し、関心が高まっている深度合成などについてもお話しします。
 参加申し込みはこちらからお願いします。

2017-04-05

タマコモチイトゴケ


 写真はスギの樹皮に着生していたタマコモチイトゴケ Gammiella tonkinensis です。 枝の上部にたくさんの無性芽をつけ、その部分が玉のように見えるということですが、残念ながら上の写真には写っていません。 写真の所を採集しましたので、採集品にも球状にたくさんついた無性芽はありません。
 球状に集まった無性芽は無いにしても、どこかに無性芽がわずかでもついていないか実体顕微鏡で探したのですが、葉腋につく細い糸状の無性芽はなかなかみつけることができません。 しかし、いつの間にか実体顕微鏡のステージに無性芽が数個が落ちていました。 それが下の写真です。 どこについていたのかは確認できていません。


 タマコモチイトゴケの無性芽は細胞が1列につながっています。


 上は枝葉です。 披針形で中肋を欠いています。 葉身細胞は線形です。


 翼部は10個ほどの方形の細胞で形成されています。

(2017.3.25. 徳島県海部郡海陽町相川)

2017-04-04

キブリナギゴケ


 写真はキブリナギゴケ Kindbergia arbuscula です。 大型のコケで、羽状に多数の枝を広げた茎もあれば、真っ直ぐに上に伸びた、まだ枝をほとんどつけていない茎もあり、なかなか見栄えがします。 手に取ってみると、丈夫そうな触感でした。
 平凡社の図鑑では生育場所は「渓谷の湿った岩上」となっていますが、写真の場所はスギ林の中の小径の脇の腐植土の上でした。


 一次茎は横に這い、二次茎は立ち上がって上に伸び、そこから多くの枝を2~3回羽状に出しますが、枝が多くなるにつれ、その重みで次第に傾いていくようです。


 上は二次茎の一部(左)と枝の先(右)を撮ったものですが、茎葉と枝葉は形も大きさもかなり異なっています。


 上は茎葉です。 葉だけうまく取れないので、二次茎の横断面つきです。


 せっかくですので二次茎の横断面も見ておきます。 茎の中心には明瞭な中心束があり、茎の周辺部には小さな厚壁の細胞がたくさん見られます。


 中肋は葉先近くにまで伸びていて、背面の先端に1個の刺があります。 あちこちが紅色になっている葉を観察に使いましたが、全体が緑色の葉と細胞の様子に違いは見られませんでした。


 葉身細胞は狭楕円形~線形で、長さは 35~45μmほどです。


 上は枝葉です。 枝葉は広卵形で短く漸尖し、鋭頭です。 中肋の先が1個の刺で終わっていることなどは茎葉と同じです。

(2017.3.25. 徳島県海部郡海陽町相川)

◎ キブリナギゴケはこちらにも載せています。