上はオガラバナ Acer ukurunduense です。 カエデの仲間で、ホザキカエデという別名があります。 分布は北海道と本州中部以北と奈良県です。 花序の印象からはカエデらしくなく、名前も〇〇カエデではありませんが、葉を見れば対生ですし、カエデの仲間らしい葉の形をしています。 葉は5~7裂し、裂片の先は鋭く尖っています。
上は花序の一部ですが、よく見ると、雄花と両性花が混じっています(雄性同株)。
(2021.7.8. 秋田駒ケ岳)
秋田県の標高640mにある温泉宿の庭の岩上(?:メモしていませんでした)にあったコケです(撮影日:2021.7.8.)。 小さなコケですが、すくっと伸びた胞子体が印象的でした。
コゴメゴケ科かウスグロゴケ科だろうと思い、検討しましたが、どうもよく分からず、Facebookに出したところ、ネジレイトゴケ Pterygynandrum filiforme だろうと教えていただきました。
なお、平凡社の図鑑には、ウスグロゴケ科の分類についてはいろいろな考えがあると書かれていて、インターネットで検索しても、本種はシノブゴケ科、ツヤゴケ科、ネジレイトゴケ科など、いろいろな科に分類されています。
小形のコケで、枝の幅は葉を含めて 0.5~0.7mm、枝葉の長さも 0.5~0.7mmしかありません。 上の写真では蒴柄は8mmほど、蒴は2mmほどの長さがあります。
上は枝葉です。 中肋は不明瞭で、上の写真の場合は1本で、葉の中部まで伸びていますが、ぼんやりと短く二叉している中肋もありました。
上の写真の葉先は鈍頭ですが、もう少し尖ったものもありました。 葉縁には目立たない凸凹があります。
上は葉の中央部で、写真中央に中肋がうっすらと写っています。 葉身細胞は厚壁で、葉先近くの菱形から、中央部では長菱形~ウジ虫形、長さは 18~25μmです。
真上から見たのではなかなか分かりませんが、細胞の背面を少し斜めから見ることができる所では、上端と下端に、大形で緩やかに盛り上がっているパピラが確認できました(上の写真)。
上は葉の基部で、翼細胞は方形~矩形です。 葉身細胞は長くなり、50μmに達するものもあります。
上は蒴歯です。 外蒴歯は線状披針形、上部は平滑で下部には細かいパビラがあります。 内蒴歯の歯突起は短く、間毛はありません。
上の写真にはスケールを入れていませんが、ピントの合った胞子の径を別途測定したところ、10~12μmでした。
蒴の頸部には気孔がありました(上の写真の赤い円内)。
現在放映中のNHK大河ドラマ「晴天を衝け」で、渋沢栄一が藍葉を買い付ける様子が描かれていました。 アイ(藍)は、合成インディゴが発明されるまで、紀元前より世界各地で青色染料の材料として重用されてきました。 原産地はインドだと言われています。
上の写真のアイは「堺自然ふれあいの森」で育てられていたものです。 よく利用される植物は品種改良が進むもので、アイにもさまざまな品種が見られるようです。 現在よく育てられているアイは丸みを帯びた葉のものが多いようですが、写真のものは野生種に近い葉の形をしているようです。
アイ Persicaria tinctoria は別名タデアイとも呼ばれているように、タデ科の1年生草本です。 上の写真のように、花も葉の付け根の托葉鞘も、他の多くのタデ科植物と、特に変わった所は見られません。 青い色素を持っているとも思えません。 しかし・・・
上は葉の表面を引っ掻いて数分経過した状態ですが、傷つけられた部分が青く変色しています。
大河ドラマでは渋沢の生家でアイの葉を発酵させて「すくも」を作り、それを搗き固めて藍玉を作る様子も出てきました。 すくもは保存が楽で、年間を通して藍染が可能で、木綿もよく染まることなどの利点があり、本格的な藍染は、このすくもを使って行われます。 しかし、良質なすくもを作るには高度の技術と手間が必要で、合成インディゴが発明されたことなどで、現在は徳島県で行われているだけのようです。
藍染(あいぞめ)に使う材料としては、アイ(タデアイ)の他に、特別な場合はヤマアイを使用することもあります。 ヤマアイに関してはこちらに載せています。
※ 上は、2013年の9月11日と21日に撮影し、Part1の9月29日に載せていた記事を、一部書き換え、こちらに引っ越しさせたものです。
● ジョウカイボン Lycocerus suturellus
ジョウカイボンという甲虫がいます。 全国の平地や山でよく見る甲虫で、以前にブログに載せた記憶があって、最近はみかけても写真も撮っていませんでした。 ところが見直してみると、載せたのはサービス終了になってしまったホームページでした。 そこで改めて古い写真を引っ張り出したのが下の2枚です。
2018.4.27. 堺自然ふれあいの森 |
2012.5.13. 堺市南区岩室 |
このジョウカイボン、他の虫を補食する、わりとどう猛な昆虫です。 名前の由来は、一説には平清盛の法名「浄海坊」が訛ったものと言われています。 以前、ジョウカイボンはカミキリモドキと混同されており、カミキリモドキが持つカンタリジンは皮膚に付くと火傷のような炎症を起こすことから、熱病で苦しんだ平清盛の名前に結びつけた、というものです。
同じ肉食でこれに近い仲間はたくさんいて、「〇〇ジョウカイ」という名前が付けられています。 下はそのうちの1種で、 2021.7.8.に秋田駒ケ岳で撮影しました。
● アオジョウカイ Themus cyanipennis
分布は北海道、本州、四国で、大阪付近の山でも何度か見たことがあります。
写真はミヤマリュウビゴケ Hylocomiastrum pyrenaicum でしょう。 秋田県と岩手県の境に広がるブナ林の地上に育っていました。(撮影:2021.7.9.)
上がそのブナ林です。
茎は這い、不規則に分枝しています。
茎は緑色から時間の経過とともに赤っぽくなってくるのですが、毛葉が茎の表面を覆い、はっきり見えません。 また古くなると、毛葉にいろいろなものが絡んで、ますます茎の色は分かりにくくなります。
茎葉の長さは2mmほどです。
茎葉は卵形で、基部はやや狭まり、先は急に細くなっています(上の写真)。 深い縦じわがあり、中肋は細く、葉長の1/2~3/4の長さです。 葉縁の上半には鋭い歯があります。
中肋の背面上端は刺で終わっています(上の写真)。
上は葉身細胞です。
枝葉は披針形で、やはり上半の葉縁には鋭い歯があります。 平凡社の図鑑には枝葉には縦じわはほとんど無いと書かれてあり、前に観察した本種(こちら)はたしかにそのとおりでしたが、今回のものは上の写真のように縦じわが見られました。
毛葉は1~2細胞列枝分かれしています(上の写真)。 毛葉は多く、上に載せた枝葉にも茎葉にも基部にくっついてきています。
はじめに少し地衣類の話を・・・
地衣類は菌類と藻類の共生が高度化し、あたかも単独の生物のように見ることもでき、かつては独立した分類群として扱われたこともありました。
しかし生物として大切な生殖のしくみは菌類によって決められていますし、同一の地衣類で別の藻類が見られる場合もあり、最近では地衣類は菌類の生き方の選択肢の1つとされ、国際植物命名規約でも、地衣類に与えられた学名は、それを構成する菌類に与えられたものとみなす、と定められています。
地衣類として生きている菌類の大部分は子嚢菌です。 これを子嚢菌側から見ると、子嚢菌は菌として菌根を形成したり、地衣化するなど、さまざまな生き方を工夫していると言えるでしょう。 なお、地衣化は多起源で、特定の分類群の子嚢菌に限られたものではないようです。 ちなみに、子嚢菌の約1/4が地衣化しているとのことです。
上の写真の地衣類はセンニンゴケの仲間(コナセンニンゴケ?)でしょう。 菌類の分類はまだ確定されていませんが、ある分類によれば、子嚢菌門チャワンタケ亜門チャシブゴケ綱モジゴケ亜綱センニンゴケ目センニンゴケ科の1種ということになります。 なお、チャシブゴケ綱の多くは地衣化していて、ウメノキゴケやサルオガセなども、この分類群に含まれます。
チャシブゴケ綱の子嚢菌は子嚢盤を形成します。 センニンゴケの子嚢盤はまるでキノコのようですが、そもそもキノコとは比較的大きな子実体をいう俗称であり、子嚢盤も子実体です。
(2021.7.23. 京都府 けいはんな記念公園)
コケを同定する場合、葉や茎の横断面の観察が必要になる場合が多くあります。 今回は私がそのような切片をどのように作成しているかを紹介します。
上はある種のコケの葉の翼部の横断面作成の様子を上から見たイメージ図です。 赤い線の所で切断するのですが、葉が指で押さえられないほど小さい場合は、葉が動かないように何かで葉を押さえなくてはなりません。 私はそのために、上のような自作の“長刀型へら”を使っています。
上は“長刀型へら”の実写です。 これで幅が1mm程度のものまで押さえる事ができます(上の写真のスケールの数字の単位はmmです)。 それより大きなものを切るには、指で押さえられるでしょう。
“長刀型へら”は、針の頭を焼きなまして柔らかくし、金槌で叩いて扁平にした後、砥石で整形して作成しました。 なお、この“長刀型へら”は、蘚類の上に苔類がくっついている時に、両者の間に差し込んで分離したり、種によっては葉を茎から外す時に使用するなど、いろいろ応用できます。
次に切る時のテクニックです。 茎や葉など切りたいもの(以下、「対象物」と書きます)を安全カミソリで切るのですが、対象物の下まで刃が突き抜けないとうまく切れません。 そのために・・・
上は対象物の切断の様子を横から見たイメージ図です。 私はスライドグラスの上に少し厚めのビニールを載せ、その上に対象物を載せて切断しています。 対象物が小さい場合は上に書いたように“長刀型へら”で対象物を押さえています。 これを 20倍の実体双眼顕微鏡下で行っています(倍率が高すぎるとピントの合う高さが少なくなりすぎますし、倍率が低いとなかなか薄く切れません)。
安全カミソリの刃はできるだけ薄いものの方が美しく切れるのですが、私はフェ〇ー剃刀替え刃(青箱)を2つに切って使用しています。 過去にはもっと刃の薄い緑箱があったのですが、残念ながら生産終了になっているようです。
以前、このようなことを説明していた時に、厚めのビニールとは具体的にどれくらいの厚さなのか聞かれたことがあります。 特に理想的な厚さがあるわけではないのですが、参考までに、下に写真を載せておきます。
上はスライドグラスの上に、私が使っているビニールを載せ、比較のためにその上にカバーグラスを載せて撮った写真です。 私が使っているビニールは、上の写真からすると、カバーグラスの 1.5倍ほどの厚さ(=0.3mmほどの厚さ)のようです。
落葉に半ば埋まるようにして育っていたコケ、比較的大きな葉がうつむき加減についています。 以下の観察の結果はオオフサゴケ Rhytidiadelphus triquetrus のようでした。
茎葉の長さは約3mm、平凡社では4mmとなっていますので、適した生育環境ではなかったようです。 茎や枝は赤い色をしています。
上はカバーグラスで押さえつけず、葉を立体のまま撮っていますので、葉の基部が茎を抱いていることが分かります。 中肋は、皺と紛らわしいのですが、二叉して長く、葉の中部以上に達しています。
葉縁上部には鋭い歯があります(上の写真)。
上の2枚は葉を背面から撮っています。 多くの細胞の背面上端が刺状に突出しています。 中肋の細胞も同様に刺状に突出していて、先端も刺状になって終わっています(このことは平凡社に触れられていません)。
上は葉の基部です。 翼部の細胞はあまり分化していません。
上は葉のほぼ中央の葉身細胞で、腹面から撮っています。 左上と右下には中肋が写っています。 細胞壁にはプラスモデスム(原形質連絡)の場所とみられる壁孔がたくさん見られます。
(2021.7.16. 長野県 八方尾根)
◎ オオフサゴケはこちらやこちらにも載せています。
2021.7.16.に八方尾根の黒菱平で撮ったシジミチョウです。 ヒメシジミ Plebejus argus だと思うのですが、ミヤマシジミとよく似ています。 両者の違いは、オレンジ帯の中にある黒斑に、ミヤマでは水色の構造色があり、本種では見られないとのことで、上の写真では見られないようですが、すぐに飛ばれてしまい、撮れたのは上の2枚だけですので、「?」をつけておきます。