2018-05-31

ユミダイゴケ


 写真はユミダイゴケ Trematodon longicollis です。 前に載せたものより少し若くて、ほとんどの蒴はまだ緑色で、帽がついています。


 大きさが分かるように、10円硬貨と並べてみました。

 前にヒョウタンゴケの若い蒴の縦断面を載せました(こちら)。 比較の意味でユミダイゴケの蒴の縦断面を作ろうとしましたが、カミソリの刃で切るには蒴が小さすぎて、蒴の中身がカミソリの刃にくっついて出てしまいます。 仕方なく胞子ができて少し硬くなった蒴を切ったのが下ですが・・・


 これでは長い頸部では胞子は作られないという、きわめて当たり前な事しか分かりませんね。

(2018.5.16. 大阪市 靭公園)

2018-05-29

ササオカゴケ(アオモリカギハイゴケ)



 5月22日のコケサロンでいただいたササオカゴケ Sasaokaea aomoriensis です。 滋賀県の湿田の縁で育っていたそうです。
 今年伸びた新しい茎の先は鉤爪状に曲がっています。


 茎には多くの毛葉があります。 毛葉は基部から2叉しているものや、先が分かれたものも見られます。


 上は茎葉です。 2枚目の写真でも分かるように、鋭頭で、鎌状に曲がっています。 中肋は葉長の3/4以上に達しています。


 上は茎葉のほぼ中央部の葉身細胞です。 線形で、長さは、平凡社の図鑑では 40~60μmとなっていますが、上の写真の細胞は 50~100μmの長さがあります。 生育環境の違いでしょうか?

◎ ササオカゴケはこちらにも載せています。

2018-05-28

ハマボウフウ


 写真はハマボウフウ Glehnia littoralis です。 海浜では汀線からの距離に応じて風邪で運ばれる砂の量が変わり、生育する植物が入れ替わります(成帯構造)。 この場所ではハマヒルガオ、ツルナやコウボウシバなどの後ろに帯状に育っていました。


 葉は1~2回3出複葉で、葉の表面にはクチクラ層が発達していて、肉厚でつやがあります。

 以下、花の変化を追ってみました。 花は花序の周辺から咲き始めますから、花序の中心部に近づくほど若い花を見ることになります。


 花は花弁5枚、オシベ5本です。 若いオシベは左右から花弁に挟まれて保護されています。 この状態ではメシベの存在はほとんど分からず、自家受粉を避けているものと思われます。


 花粉を出し終えたオシベが脱落した後、メシベが伸び出します(左下の花)。


 花弁も脱落し、メシベの柱頭が長く伸び出しています。 花と花の間は毛で埋められています。


 子房は果実へと変化を始め、色も紅色になってきました。

(2018.5.20. 泉南市 岡田浦)

2018-05-27

4月のエダツヤゴケ


 上はエダツヤゴケ Entodon flavescens でしょう。 褐色の球形のものはヒノキの球果です。


 上は湿った状態です。 羽状に多数の枝を出しています。 若い枝は直立していて、1枚目の写真ではこの直立した枝が目立っています。

※ 同じような姿をこちらに載せていて、春先にはこのような姿になるようです。 また、同じ場所の9月の姿をこちらに載せています。



 上の2枚は乾燥した状態です。 葉は乾燥しても、ほとんど縮んでいません。 茎葉と枝葉の大きさはかなり異なります。 枝の先端が細く伸びている所も多く見られました。


 茎葉(中央)と枝葉(右下)です。 茎葉は広卵形で漸尖して鋭頭、枝葉は卵形~卵状披針形で、大きさだけでなく葉形も異なりますが、中肋が短く二叉していることや、翼部に矩形の細胞が多数存在することなどは共通です。


 上は茎葉の葉身細胞です。


 上は茎葉の翼細胞です。

(2018.4.29. 京都市 大原)

◎ 蒴のついた11月のエダツヤゴケをこちらに載せています。 また、エダツヤゴケはこちらこちらにも載せています。


2018-05-26

ノラニンジン


 写真はノラニンジン Daucus carota です。 ヨーロッパ原産の2年性草本ですが、世界各地に広がっています。


 花弁は5枚ですが、花序の周辺に位置する花の花弁は大きさが異なります。 若いオシベの葯は花弁に左右から挟まれて保護されています。
 このように花序を上から見ていると、特に変わったことの無いセリ科の花ですが・・・


 上はまだツボミですが、花序を横から見ると、大きな苞葉が羽状に裂けています。 こんなに細かく裂けている苞葉は、そんなに多くないでしょう。
 なお、茎には荒い毛が生えています。

 ノラニンジンと栽培用のニンジンとは亜種または変種の関係にあるとされています。 しかし根は黄白色で赤くはならず、長さも数cmにしかなりません。

(2018.5.20. 泉南市 樫井川河口)

◎ 上より少し後の果実のできかけの頃のノラニンジンをこちらに、果実のできている様子はこちらに載せています。



2018-05-25

ムクゲコノハ



 写真はムクゲコノハ Thyas juno です。 と言っても、写真だけ撮って帰宅後に名前を調べたので、後翅の美しい模様が撮れていません (-_-;
 この成虫は樹液に集まりますが、果実を食害することもあります。 幼虫はブナ科のコナラやクヌギ、クルミ科のオニグルミやサワグルミなどを食餌植物としています。

(2018.5.22. 堺自然ふれあいの森)

2018-05-24

砂茶碗


 上は、2018.5.20.に泉南市の岡田浦で拾った砂茶碗です。 じつはこれ、ツメタガイ Glossaulax didyma の卵塊で、砂を粘液(?)で固めて作られていて、断面を見ると、その所々に白い卵が混じっています。



 上がそのツメタガイの貝殻です。 表面にアオサが張り付いたままで撮ってしまいましたが、なかなか美しい貝殻です。 しかしこのツメタガイ、他の貝を襲う肉食性の巻貝です。 殻頂部に小さな穴の開いた二枚貝は、多くの場合、ツメタガイの犠牲になった貝です。

2018-05-21

トゲムネアナバチ


 ハマボウフウの花に集まる虫たち、上の写真の緑色金属光沢のハエは、クロバエ科キンバエ族の一種(ヒロズキンバエ?)で、あちこちにいるアリはアミメアリですが、今回の主役は右下にいる小さなハチです。
 このハチはギングチバチ科のトゲムネアナバチで、ハエを麻酔して砂地に掘った穴に引き入れ、幼虫の餌とします。 上の写真の状態は、自分の胃袋を満たすことが優先なのか、近くのキンバエに関心を示す様子は見られませんでした。


 体長は5mmでした。


 上は背面から見た胸部の拡大です。 赤い円で囲った所に二又に分かれたトゲが見えます。 これが和名の「トゲムネ」の由来でしょう。



(2018.5.20. 泉南市 岡田浦)

2018-05-19

デーニッツハエトリ



 上の2枚はデーニッツハエトリ Plexippoides doenitzi のオスです。 正面から見ると、膨らんだ触肢が目立ちます。 オスは腹部から出した精子を触肢に移し、これをメスの外雌器に当てがって交接を行います。



 上の2枚がデーニッツハエトリのメスで、腹部が大きく膨らんでいます。 メスは頭胸部~腹部に1対の赤褐色の帯があります。

(2018.4.27. 堺自然ふれあいの森)

2018-05-18

ゼニゴケの“銭生産”


  ゼニゴケの名前は江戸時代からあり、当時は銭のような円い植物体の形に由来していて、地衣類のウメノキゴケの仲間なども「ゼニゴケ」であったようです。 しかし次第にゼニゴケ Marchantia polymorpha の和名は、その無性芽が銭(ぜに)に似ているところからだという人が増えてきました。 以下はこの無性芽の“銭”についてです。
 無性芽であるからには、植物体の一部が細胞分裂を繰り返し、肉眼でも見える大きさの銭のような円盤状の無性芽となってから、元の組織から切り離されるはずです。
 無性芽はどのように生長するのか、元組織との接点はどこなのか。 この“銭”の生産場所を探ってみました。


 上は“銭”の入っている杯状体の断面です。 低倍率すぎて光がうまく回らず、組織内部の色もグラデーションになっていますが・・・。
 “銭”は立っていて、円盤状の縁で元の組織とつながっています。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。


 上の写真では“銭の赤ちゃん”がたくさん見えます。 このようにして無性芽は杯状体の底で次々と作られ、完成した無性芽は下から押されて上へ上へと押し上げられるのでしょう。


 上は完成した無性芽です。 上で、無性芽は円盤状の縁で元の組織とつながっていたことを確認しました。 そのつながっていたところを探すと、ちゃんと確認する事ができます。 赤い円で囲った部分が、その部分です。
 下は1つの無性芽の拡大です。


(2018.4.29. 京都市大原)

2018-05-17

ガガンボの一種の産卵



 ジャゴケとアオハイゴケの混生しているところで、ガガンボの一種が産卵していました。 背中からの写真も撮れず、種名は分かりません。
 写真からはコケの表面が光っていることしか分かりませんが、数cmの水深のある場所で、ガガンボは水面を叩くように腹部を動かして産卵していました。
 ガガンボの種数も多く、産卵場所も様々で、このように水中に産卵し、幼虫が水中で育つ種もたくさんいるようです。

(2018.4.29. 京都市大原)

2018-05-16

ハルジオンとヒメジョオン

 Part1の2014.5.31.からの引っ越し記事です。 引っ越しにあたって、基本的に文は変更していませんが、学名を付け加えました。
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 ハルジオンとヒメジョオンは、同じ属( Erigeron )に分類されている植物で、とてもよく似ています。 両者の比較はあちこちに載せられていますが、このブログでも取り上げておきます。
 ハルジオン E. philadelphicus もヒメジョオン E. annuus も北アメリカ原産の帰化植物で、ハルジオンは大正時代の中頃に観賞用に日本に導入されたものが逃げて広がったと言われています。 またヒメジョオンは江戸時代の終わり頃にやはり観賞用に日本に導入され、明治時代には雑草となっていました。
 名前は、ハルジオンを漢字で書くと「春紫菀」で、秋に咲くシオンに対しての名前でしょう。 また、ヒメジョオンを漢字で書くと「姫女菀」です。 この漢字を読むわけですから、「ハルジョオン」や「ヒメジオン」は誤りです。
 花の時期は、ヒメジョオンの方が長いのですが、ハルジオンの方が少し早くに咲きはじめます。 年や場所で違いはありますが、今年の大阪では、ハルジオンは5月中旬にはたくさんの花が咲いていて、ヒメジョオンが咲き始めたのは5月下旬でした。


 上はハルジオンです。 ハルジオンもヒメジョオンもキク科なので、1つの花に見えるのはたくさんの花の集まり、つまり頭花と呼ばれる花序で、周辺にはたくさんの舌状花があり、中心部の黄色く見える所にはたくさんの筒状花があるのですが、ここではあえてこの頭花を「花」と書くことにします。
 ハルジオンの花はピンク系統の色が付き、ヒメジョオンの花は白いという傾向はあるのですが、ほとんど白色の花のハルジオンもあります。 上の写真の右手前の白い花もハルジオンです。


 上はヒメジョオンです。 ハルジオンの蕾は垂れ、ヒメジョオンの蕾は上を向くとよく言われます。 たしかにそのような傾向はあるのですが、上の写真の中央のヒメジョオンの蕾は垂れています。 蕾をつけて生長中の茎は柔らかく、少し乾燥が進むと垂れてしまうようです。
 両者の花を比較すると、ハルジオンの花の方が少し大きい傾向があり、舌状花は細くて数が多いのですが、その違いは微妙です。
 また、両者の高さを比較すると、ヒメジョオンの方が高くなれるのですが、もちろん小さなヒメジョオンもあります。

 以上、ヒメジョオンとハルジオンのいろんな微妙な違いを書きました。 慣れれば、これらの違いを総体的に見て区別できるのですが、もう少し確実に区別する方法があります。 それには目を奪われがちな花とは別の所を見る必要があります。


 上はハルジオンの茎の葉の付いている場所の縦断面で、下はヒメジョオンの同じ場所の縦断面です。 この写真のように、ハルジオンの茎は中空ですが、ヒメジオンの茎の内部は柔らかい髄で満たされています。 ここではその違いがず~っと続いていることを示すために縦断面を載せましたが、両者を区別するには無理して縦断面を作る必要はありません。 横断面で十分区別できます。
 もうひとつの違いは、葉の付き方です。 ハルジオンの葉の茎につく基部が広がっています。(よく「葉が茎を抱く」と表現されます。) ヒメジョオンではそのようなことはありません。


 ハルジオンは 2014.5.18.に、ヒメジョオンは 2014.5.22.に、いずれも堺自然ふれあいの森で撮影しました。


2018-05-15

ムネビロカクホソカタムシ



 シフネルゴケに混じっていた小さな甲虫、ケシキスイ科 Nitidulidae (の、たぶんヒラタケシキスイ属 Ipidia)だと思いますが、それ以上は分かりません。 体長は 2.3mmでした。 なお、ケシキスイ科の昆虫には、大型のものもいますが、この程度の大きさのものがたくさんいます。

 しぴ鳥さんから、ムネビロカクホソカタムシだと思うとのコメントをいただきました。 検索してみると、生態写真はみつからなかったものの、旧日本甲虫学会の和文誌「ねじればね」の No.110(2004)の「佐々治寛之:日本のカクホソカタムシ科序説-属 への検索」によく似た図がありました。
 カクホソカタムシ科のムネビロカクホソカタムシ Cautomus hystriculus のようです。 タイトルを含め、訂正します。
 しぴ鳥さん、ありがとうございました。(2019.1.7.)


 ケシキスイ科昆虫の食性は多様で、写真のケシキスイも菌類を食べているのか、植物の腐植質を餌にしているのかなど、想像はできますが、分かりません。
 ちなみに「ケシキスイ」の名の由来は、芥子(ケシ)粒のように小さく木の汁を吸うことからのようです。


 ほんの少し後方から撮ると、胸部の縁がシフネルゴケっぽくなっています。

(2018.4.29. 京都市大原)