2017-11-30
アゼゴケ(蒴や胞子など)
畑のすぐ近くにあったアゼゴケ Physcomitrium sphaericum です。 前に載せたアゼゴケの蒴は、みんなまだ青かったのですが(こちら)、今回の蒴は褐色になったものも、胞子をだしているものもあります。
今回は葉をコンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使った偏光顕微鏡で撮ってみました。 平凡社の図鑑には「ほとんど舷がない。」と書かれています。 「全く」ではなく「ほとんど」であるのは、上の写真で納得できます。 中肋は葉先近くで終わっていて、葉先から突出はしていません。
葉身細胞は矩形~六角形です(上の写真)。
上はまだ青く帽のある蒴です。 1枚目の写真でも、蒴の上にある長い嘴状のものが目立ちますが、上の写真を見ると、嘴があるのは帽だけで、蓋の頂が長く伸びているのではないことが分かります。
上の蒴は色も褐色になり、帽も取れて、蓋とツボとの境に色の異なる線状の部分が見えています。 この部分を顕微鏡で見たのが下です。
色の濃い部分は、小さく細長い厚壁の細胞からできています。 この部分は口環と呼ばれていて、蓋が取れた後はツボの口の縁になります。
上は蓋の取れたツボを上から覗き込んだところで、まだ残っている胞子が見えます。 なお、この仲間の蒴には蒴歯はありません。
上は胞子です。 アゼゴケの胞子の表面には小さな刺が密生しています。
(2017.11.28.)
◎ アゼゴケの造精器に関してはこちらに載せています。
2017-11-29
クビキリギス
大顎をいっぱいに広げたクビキリギス Euconocephalus thunbergi、噛まれると痛そうです。 顎の力は強く、噛みつかれた状態で強く引っ張ると首が引きちぎれるのが和名の由来です。 口の周囲が赤いことから「血吸いバッタ」の俗称もありますが、食性は雑食であるものの、植物食の傾向が強く、強力な顎は種子などを食べることにも役立っているようです。
とまっている姿勢は、いつも上のようで、尖った頭部の頂を前に突き出し、下を向いているように見えます。
バッタ・キリギリスやコオロギの仲間は秋に産卵して死んでしまうイメージが強いのですが、このクビキリギスなどは夏に孵化して秋に成虫になり、そのまま越冬して翌年の春に交尾・産卵します。 ですから、写真の個体も新鮮です。
新鮮な個体であっても、昆虫は変温動物です。 温度が低いと活動は鈍ります。 写真の個体も容易に捕まえることができ、上の写真も葉にとまらせて撮ったのですが、飛んで逃げたくても体の自由がきかないようで、さかんに震えて体温を上げようとしているようでした。
(2017.11.28. 堺自然ふれあいの森)
クビキリギスの体色は、上のような緑色の他に、褐色の個体もいます。 こちらには褐色の個体や、体色が終齢幼虫時代の湿度で決まることなどを載せています。
2017-11-27
地衣類3種のせめぎ合い
写真の地衣類は左からモジゴケ属 Graphis の一種、チャシブゴケ属の一種(たぶんナミチャシブゴケ Lecanora megalocheila )、コフキジリナリア Dirinaria applanata ではないかと思います。 上の写真では、これら3種の地衣類が木の幹で互いに勢力を広げようとせめぎ合っているように見えます。 特にチャシブゴケが他の2種の地衣類と接している所は茶色くなっています。 何か他の地衣類にダメージを与える物質を出しているのでしょうか。
(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)
2017-11-26
ハイイロチビフサヤスデ・ウスアカフサヤスデ
昨日載せたカラヤスデゴケ(こちら)の中からノソノソと這い出してきたフサヤスデです。 背面や側面には剛毛があり、側面の剛毛の隙間から脚が少し見えています。 また、尾端には毛束があります。 和名はこの尾端の毛束に由来しているようです。 尾端の毛束などを含めず、体長は 1.9mmでした。 なお、写真の個体は片方の触角を失っています。
フサヤスデの仲間(フサヤスデ目)は日本では2科3属5種(3種2亜種)が知られていますが、いずれも成体または亜成体の胴体節は11節で、体節数からの区別はできませんが、写真の個体は剛毛の様子などからハイイロチビフサヤスデではないかと思います。 フサヤスデは生物の死骸などを食べていて、石の下や樹皮裏などでよく見かけます。
コケの中にいたのは、樹皮裏に続く環境ということなのか、枯れたコケを食べに来ていたのか、コケの間に棲む小動物(の死骸)を食べに来ていたのか、他に何か理由があるのか、たまたまなのか、よく分かりません。
この機会に、最近見たフサヤスデの写真を下に載せておきます。
上は3月上旬に撮った、ケヤキの樹皮裏で集団越冬していたハイイロチビフサヤスデ(?)です(2015.3.6. 堺市 大蓮公園)。 体長のいろいろなものが混じっていますが、大きいものの体長は2mmです。 左端には脱皮した後の殻が残っていますから、越冬中に脱皮する個体もいるようです。 写真の中央上にある孵化前の卵とフサヤスデとの関係は分かりません。
上は12月上旬に撮った、樹皮下で集団越冬中のフサヤスデで、体長は 2.2mmでした(2016.12.7. 堺自然ふれあいの森)。 はじめの2枚の写真より剛毛が長く湾曲しているので、ウスアカフサヤスデだろうと思います。
上も樹皮下で集団越冬中のウスアカフサヤスデ(?)で、3月上旬の撮影です(2015.3.8. 堺市南区 茶山公園)。 上の写真では大小さまざまな体長のものが混じっていて、いちばん長いものでは3mmあります。 脱皮した抜け殻もありますので、やはり越冬中に脱皮しているのでしょう。
※ 同じフサヤスデの仲間のイソフサヤスデはこちらに載せています。
2017-11-25
カラヤスデゴケの雄花序
上はカラヤスデゴケ Frullania muscicola の雄株です。 水色の円で囲った所など、あちこちに雄花序が見られます。
上は若い雄花序です。 これと同様な雄花序は前にも載せていますが(こちら)、今回は苞葉が褐色なので、花序の様子がよく分かります。
上はもう少し伸びた雄花序で、重なっていた苞葉も1枚ずつ認識できるようになりました。
ちなみに、下は上のすぐ近くにあったカラヤスデゴケの雌株で、黄色の矢印で示した所など、花被があちこちに見られます。
(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)
2017-11-23
カビゴケのにおいの元
山中を走らせてあった管の表面にたくさんのカビゴケがついていました。 下はその管です。
カビゴケ Leptolejeunea elliptica は前にも載せていますので(こちら)、今回は葉の眼点細胞を大きく写してみました。
カビゴケがたくさん育っている所に行くと、特有のにおいが漂っていますが、このにおいは眼点細胞に含まれている油体に由来するようです。
(2017.10.4. 奈良県 川上村)
2017-11-22
コマユバチ科コウラコマユバチ亜科 Phanerotoma属の一種
カミヤツデの葉の裏で越冬体制に入ろうとしていたと思われる体長 3.5mmのハチ、寒い日だったのですが、この時期ですから写真を撮りだすとすぐに動きだし、次第に移動速度が速くなり、そうなると、もう上からしか撮れません。
藤江さんによると、コマユバチ科コウラコマユバチ亜科の Phanerotoma属の一種だということです。 上の写真には翅を通してかすかに産卵管が写っていて、コウラコマユバチであれば、この産卵管を支えるように腹部の腹面を覆う甲羅のようなものがあります。 下の横から撮った写真では、かすかにそのようなものがあるように見えますが、もっとしっかり撮っておくべきでした。
(2017.11.19. 大阪市立長居植物園)
2017-11-21
11月上旬のヒナノハイゴケ
帽のある蒴がたくさん並んだヒナノハイゴケ Venturiella sinensis です。 年が改まると帽子を取って新年のあいさつでもしてくれるのでしょうか。
(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)
◎ 1月上旬の胞子を出している蒴や蒴歯の様子や、葉や葉身細胞の様子などは、こちらに載せています。
カミヤツデ
Part1 2013.12.25. からの引っ越し記事です。
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カミヤツデ Tetrapanax papyriferus は中国、台湾原産の常緑低木です。 日本では、寒いと葉が傷んで汚くなるのですが、暖かい所では常緑のまま冬を越すことができるどころか、繁殖力が強く、生態系のバランスを崩す心配もされています。
カミヤツデは「紙八手」で、葉はヤツデのように掌状深裂し、茎の白い髄からは通草紙(つうそうし)という紙を作るところからの名前です。 この通草紙は、漉いて作る紙ではなく、髄の薄片を紙のように使うらしく、少し前までは造花や書画でよく使われていたようですが、合成樹脂などに変えられて需要は減少しているようです。
カミヤツデはヤツデと同じウコギ科です。 花の時期も11~12月頃で、ヤツデとほぼ同じ頃に、ヤツデと同様、球状の散形花序を円錐状につけます。 葉も花序全体もヤツデより大きいのですが、球状の散形花序そのものはヤツデより小さく、花は密につきます。
(2013.12.22. 大阪市立長居植物園)
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カミヤツデ Tetrapanax papyriferus は中国、台湾原産の常緑低木です。 日本では、寒いと葉が傷んで汚くなるのですが、暖かい所では常緑のまま冬を越すことができるどころか、繁殖力が強く、生態系のバランスを崩す心配もされています。
カミヤツデは「紙八手」で、葉はヤツデのように掌状深裂し、茎の白い髄からは通草紙(つうそうし)という紙を作るところからの名前です。 この通草紙は、漉いて作る紙ではなく、髄の薄片を紙のように使うらしく、少し前までは造花や書画でよく使われていたようですが、合成樹脂などに変えられて需要は減少しているようです。
カミヤツデはヤツデと同じウコギ科です。 花の時期も11~12月頃で、ヤツデとほぼ同じ頃に、ヤツデと同様、球状の散形花序を円錐状につけます。 葉も花序全体もヤツデより大きいのですが、球状の散形花序そのものはヤツデより小さく、花は密につきます。
(2013.12.22. 大阪市立長居植物園)
2017-11-20
クロヒメバチ?
堺自然ふれあいの森で育てられていたビロードスズメの蛹から出てきたのは寄生バチでした。 ヒメバチ科の Amblyjoppa属の一種だと思われます。 スズメガ類の幼虫に卵を産み付けるクロヒメバチ A. cognatoria かもしれません。
体のクリーニング中です。 横から見ると、触角中央部の白い部分は背面だけのようです。
2017-11-19
ナガバチヂレゴケ
写真は蒴も若くてよく分からないのですが、ナガバチヂレゴケ Ptychomitrium linearifolium ではないかと思います。 先日載せたチヂレゴケのすぐ傍にありましたが、さすがに(?)同じ属、よく似ています。
蒴柄は黄色です。 上の写真は乾きかけで、葉が内曲しかけています。
乾き具合によって、葉の上部が二つ折りに折り畳まれる傾向にあるようです。
茎の下部の比較的短い葉では卵形の基部から線状披針形に伸びていますが、茎上部についている比較的長い葉では全体が線状披針形になるようです。 葉には大きな鋸歯があります。 中肋は葉頂に達しているようです。
葉の中部の葉身細胞は丸みを帯びた方形で、長さは7~10μmほどです。
蒴はまだ若かったのですが、帽を無理やり脱がしたのが上です。
上は胞子です。 胞子を散らばらせるためにカバーグラス上から押したのですが、胞子が若かったために、つぶれて内容物が小さな粒子になって散らばってしまった胞子が多くありました。 残った胞子の径は 10μmもありませんが(上の写真)、完成した胞子ではありませんから、あまり参考になりませんね。
(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)
2017-11-17
チヂレゴケ
雨にぬれたチヂレゴケ Ptychomitrium sinense です。 濡れたコケは葉をいっぱいに広げて美しいのですが、表面が水に覆われると細かいつくりが分からなくなります。 また、コケは乾いた時の方が違いがよく分かります。 このコケの「縮れ」の特徴も、濡れると分からなくなります。
上は少し乾きかけたところで、葉先が巻きかけています。 もっと乾くとこちらのように縮れます。 また、蒴をすっぽり覆っていた帽は、はちきれていて、まもなく取れてしまうのでしょう。
葉は全縁で、中肋は葉の先近くに達しています。
上は葉身細胞で、左は中肋です。
蒴の帽を外してみました(上の写真)。 蓋には長い嘴があります。
蒴歯は密にパピラで覆われています(上の写真)。
胞子の径は 20μmほどです(上の写真)。 ちなみに、チヂレゴケとよく似た同じ属のヒダゴケの胞子の径は 10μmほどしかありません。
(2017.11.8. 宝塚市・武庫川渓谷)
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