2016-07-31

リンネソウ


 リンネソウ Linnaea borealis が咲いていました。 スイカズラ科の花の多くに見られるように、2つの花が対になっています。 そのためメオトバナと呼ばれることもあります。(APGⅢではリンネソウ科をスイカズラ科から独立させてもよいとなっています。)
 葉は対生し、先に数個の鈍鋸歯があります。(上の写真のスギゴケの仲間に混じって見えている葉がリンネソウの葉です。)



 清楚な花で、以前私がこの植物名を聞いた時には「輪廻」が頭に浮かび、ハスなどのように仏教に関係する植物かと思ったのですが、実際は「分類学の父」と称される カール・フォン・リンネの名前に由来しています。
 リンネソウは北半球の亜寒帯に広く分布していますが、リンネはこの可憐な植物が特にお気に入りで、自らの名前を属名につけたようです。
 リンネソウは写真のように小さな植物ですが、草本ではなく、冬の寒さは雪の下でじっと耐える常緑の木本です。 日本では本州の中部地方以北から北海道にかけての針葉樹の林床に生育しています。 日本を含む東アジアでは結実しにくく、主に地下茎による無性生殖によって個体群を維持しているようです。

(2016.7.21. 北八ヶ岳)

2016-07-30

ニセフタオビヒメハナカミキリ


 上はシシウドの花で交尾中のニセフタオビヒメハナカミキリ Pidonia testacea でしょう。 よく似たフタオビヒメハナカミキリより上翅の微毛が短く密で、より標高の高い所に分布しています。
 このヒメハナカミキリはあちこちの花で見かけたのですが、いろんな色の花が咲いているのに、来ているのはいつも白っぽい花でした。

コバイケイソウの花に来ていたニセフタオビヒメハナカミキリ

色あせしつつあるベニバナイチヤクソウの花に来ていたニセフタオビヒメハナカミキリ

(2016.7.21. 北八ヶ岳)

2016-07-29

カギバトモエ




 コナラの樹液に来ていたカギバトモエ Hypopyra vespertilio です。 眼がよく光ってます。 春と夏の2化性のようですが、写真はほとんど傷みの無い個体で、羽化したばかりでしょう。
 幼虫の食餌植物はネムノキやアカシアなどマメ科の木本のようです。

(2016.7.24. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-28

オオコケシノブ?


 上はオオコケシノブ Hymenophyllum badium ではないかと思います。 2016.7.20.に北八ヶ岳で撮りました。 本種の分布は伊豆半島以西の常緑樹林内とされていて、このような針葉樹林帯には存在しないはずなのですが、下に書くように胞子のう床が塊状で、これは本種の最大の特徴だと思います。 植物体の大きさも本種の本来の大きさよりかなり小さいのですが、どうにか生きている状況ではないかと思います。


 葉の裏面の軸上に密生した毛はみつかりません。 上の写真で画面ほぼ中央に1本毛のようなものが見えますが、これも糸くずです。


 上は葉の先についていた若い胞子嚢群です。 2弁状の包膜は全縁~少し波打っています。 上の写真のように胞子のう床は塊状で、大きな場合は横に広がっています。 ホソバコケシノブなどでは胞子のう床は棒状で、包膜から外に伸び出していますし、包膜の切れ込みも上ほど大きくないように思います(こちら)。
 上の写真でも、うっすらと環帯の存在が分かりますが・・・


 上は1つの胞子嚢を撮った写真です。 細胞が区別できるところまで拡大すると、できかけの環帯もどうにか分かります。 プレパラート作成時に押しつぶしていますので、左上には四角錐の形をした未完成の胞子が出てきています。

◎ 同じ場所で撮った、上より成熟の進んだ胞子嚢の様子をこちらに載せています。


2016-07-27

カムリゴケ


 写真はカムリゴケ Pilophorus clavatus でしょう。 固着地衣の一種で、地衣体は岩上に広がり、所々で柄を伸ばし、その上に黒っぽい子器をつけています。

(2016.7.20. 北八ヶ岳)

2016-07-26

ヒシウンカの一種の交尾


 交尾中のヒシウンカです。 翅の模様が違いますが、雌雄の違いなのか、個体差なのかも分かりません。


(2016.7.12. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-25

ヒカリゴケ


 岩の隙間の暗い空間を懐中電灯で照らすと、黄緑色に光る点が散らばって見えました。 ヒカリゴケです。
 上はフラッシュの光を当てて撮った写真のコントラストを少し強めています。 肉眼的には光る点が散らばっているようにしか見えなかったのですが、写真を確認すると、ヒカリゴケの植物体もたくさん写っていました。
 ヒカリゴケ Schistostega pennata は、その名のとおり光るコケとして知られていますが、上の写真のように、ヒカリゴケの植物体(=茎葉体=配偶体)は光っておらず、光っているものはその周囲に散らばっています。 じつはこの光っているものは、ヒカリゴケの原糸体のレンズ状細胞です。
 一般に、蘚類は胞子から発芽すると、一方向に細胞分裂を繰り返し、糸状に伸びていきます。 これを原糸体と呼んでいて、植物体はこの長く伸びた原糸体のあちこちにできる細胞の塊からできます。 多くの蘚類は植物体が育ちはじめると原糸体は消えていくのですが、ヒカリゴケの原糸体は残存性が高く、そこにレンズ状細胞と呼ばれる球形の細胞が混じります。 このレンズ状細胞が光を反射するので光って見えるわけです。


 上が顕微鏡下で撮ったレンズ状細胞です。 レンズ状細胞は光の当たる方向には光って見えますが、光は下から当てていて、上から見ていますから、光っているようには見えません。
 上の写真のようにレンズ状細胞は葉緑体を持っています。 ですからレンズ状細胞に白色光を当てても反射光には緑色が混じり、黄緑色に輝きます。


 上は植物体(=茎葉体=配偶体)です。 葉は左右2列に並んでいます。


 上は上下2枚の葉が接する所を撮った顕微鏡写真です。 下中央から右上隅に茎が走っています。 葉の基部は下延して下の葉と融合しています。 葉身細胞は長い菱形です。

 ヒカリゴケの分布は本州中部以北です。 1枚目の写真は 2016.7.20. に北八ヶ岳で撮影しました。

◎ ヒカリゴケの胞子体などについては、こちらには生育地での様子を、こちらには生殖器官をつけたものも含め、室内での観察結果を載せています。


2016-07-24

テガタチドリ



 写真は北八ヶ岳で見たラン科のテガタチドリ Gymnadenia conopsea です(撮影:2016.7.20.)。 和名は、地下の白い多肉根の形を人の手に見立て、混み合って咲く花を群れ飛ぶチドリに見立てたものでしょう。
 分布はユーラシア大陸北部で、日本では北海道と本州中部以北の亜高山帯~高山帯の草原で見られます。


2016-07-23

オオツボゴケ


 写真はオオツボゴケ Splachnum ampullaceum です。 北半球の寒冷地に分布しますが稀で、環境省RDBでは絶滅危惧Ⅰ類になっています。


 多くの蘚類の蒴は、細い蒴柄から、蒴柄の径が次第に大きくなったような頸部を経て、胞子を入れておく比較的大きな壺へと続きます。 ところがオオツボゴケでは頸部が壺よりもずっと大きく膨らみます。 上の写真の頸部はまだ若く黄緑色をしていますが、既に壺よりも大きく膨らんでいます。 この頸部が熟すと・・・


 熟した頸部は肩を張ったように大きくなり、色も赤紫に変化します。
 オオツボゴケの「オオツボ」は「大壺」でしょう。 しかし上に書いたようにオオツボゴケの壺は頸部よりも小さなものです。 和名は蒴全体を長頸壺に見立てたものでしょう。


 上の写真で、大きく膨れた頸部の上にある緑色の筒状の部分が壺です。 反り返っている褐色の蒴歯は、8本のように見えますが、じつは16本の蒴歯の2本ずつがピッタリとくっつきあっています。
 壺からは緑色の胞子が互いにくっつきあってドーナッツ状になってせり上がってきています。 このように胞子がバラバラにならずに粘着性があるのは、ハエなどの体にくっついて運んでもらうためです。
 オオツボゴケは動物の糞に生えるコケです。 ですからオオツボゴケも糞に似たにおいを出し、糞に集まるハエなどを呼び寄せ、胞子を糞に運んでもらおうとしているようです。


 上は蒴を真上に近い位置から撮ったものです。 この蒴では胞子がかなり減っています。 既にハエなどに運ばれたのでしょうか。


 上はオオツボゴケの植物体(=配偶体)です。 1枚目の写真で分かるように、オオツボゴケの植物体は胞子体に比較してとても小さなものです( 1枚目の写真の左下隅はミズゴケです )。 卵状披針形で鋭頭の葉の葉縁上部には、大きな歯がまばらに見られます。 中肋は葉先に達しています。

 写真のオオツボゴケは、北八ヶ岳の「麦草ヒュッテ」で 2016.7.20.に撮らせていただきました。 昨秋にヒュッテのオーナーが、見慣れないコケがあったので持ち帰って育ててみたところ、胞子体が出てきて名前が分かったということです。 帽のついた若い蒴の様子は麦草ヒュッテさんのFacebookに載せられています(こちら)。
 冬を室内で過ごしたので、野外で胞子体が見られるのはまだ先になるだろうということでした。

◎ 2017年6月にオオツボゴケの若い蒴を見ることができました。 その様子はこちらに載せています。

 北八ヶ岳ではコケはもちろん、種子植物や昆虫なども、たくさんの写真を撮ってきました。 このブログでは大阪“付近”で見られる生物を「そよ風のなかで」で、大阪付近とは異なった生物の様子は「そよ風に乗って」に載せています。 北八ヶ岳の亜高山帯の生物をどちらに載せようかと迷ったのですが、カナダで撮った写真もまだたくさん残っていますし、北八ヶ岳は無理をすれば日帰りもいちおう可能ですので、この「そよ風のなかで」で載せることにしました。 地元で撮った「そよ風のなかで」に載せたい写真もまだまだたくさん残っているのですが・・・。

2016-07-19

ブログをしばらく休みます

 避暑を兼ねて明日(20日)から取材旅行に行ってきます。 このところ何かと忙しく、ブログの自動更新の準備はできませんでした。 再開は23日からかな?

マツモムシ


 水に泳ぐマツモムシ Notonecta triguttata は前に載せていますが(こちら)、水にいるマツモムシはいつも腹面を上にしています。 今回はつかまえて水から出して背面を撮影してみました(上の写真)。 同じような黒っぽい色ですが、カメムシの仲間らしく、前翅は革質部と膜質部に分かれているように見えます。


 水がかかると、すぐにクルッと腹面を上にします。 前脚は折り畳んでいます。

(2016.7.12. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-18

カザリバ


 カザリバ Cosmopterix fulminella が頭を中心にクルクル回るダンスをしていました。 オスがメスを呼んでいるのでしょうか。 1cmほどの小さな蛾ですが、この色彩で激しく動き回れば、よく目立ちます。
 しばらく見ていると、急に動かなくなりました。 上の写真は、その時に撮ったものです。 動き疲れてお休みモードに入ったのでしょうか。 触角を後ろに倒していることで休んでいることが分かります。


 いろんな方向から撮っていると、触角を少し持ち上げはじめました(上の写真)。

(2016.7.12. 堺自然ふれあいの森)

◎本種によく似たウスイロカザリバと思われるガのダンスをこちらに載せています。

 

2016-07-17

ハグルマトモエ


 写真はハグルマトモエ Spirama helicina のメスでしょう。 オスグロトモエ Spirama retorta ととてもよく似ているのですが、本種の方が前翅の幅に対する巴模様が大きいようです。
 幼虫の食餌植物はネムノキということです。

(2016.7.12.堺自然ふれあいの森)

2016-07-16

ヒメジョウゴゴケ


 上はよく見るヒメジョウゴゴケ Cladonia humilis (堺自然ふれあいの森で撮影)ですが・・・


 上もヒメジョウゴゴケだろうと思います。 写真は雨が上がったすぐ後にとったもので、ラッパ状の盃となった子柄の上に水滴が乗っていて、それが凸レンズの役割をしていて、顆粒状となった盃の表面を拡大してくれていました。


 水滴をダイヤモンドに、子柄を台座に見立てて・・・。

(2016.7.13. 京都・西芳寺川)

2016-07-15

フルノコゴケの蒴

 フルノコゴケ Trocholejeunea sandvicensis は以前にも載せていますが(こちら)、ちょうど胞子を出しているフルノコゴケの蒴がありましたので再登場です。


 上の写真、胞子を出し終えたたくさんの蒴があるなかで、中央左寄りにはまだ開裂していない黒い球状の蒴があり、左上隅にはまだ蒴が顔を出していない花被もあります。


 そんなフルノコゴケ群落の中で、胞子を出しつつある蒴がいくつかありました(上の写真の中央左寄り)。 一般に苔類の蒴の寿命は短く、胞子を出す時期はさらに短時間です。 以下、この胞子の見える蒴を、いろんな角度から撮ってみました。
 なお、上の写真は深度合成していますので、湿ると葉は立つように開くというフルノコゴケの特徴もよく出ています。




(2016.7.13. 京都・西芳寺川)

2016-07-14

クチベニマイマイ


 上はクチベニマイマイ Euhadra amaliae です。 成貝の殻口が上の写真のように赤みを帯びているのが名前の由来です。 また多くの場合、軟体の両側面に黒っぽい帯が見られます。
(2010.4.17. 富田林市錦織公園)


 多くの種で、成貝の殻口は外に反り返ります。 上もクチベニマイマイですが、殻口は1枚目の写真のようには反り返っておらず、殻口もそんなに赤っぽくなく、まだ成熟していないようです。 殻の巻数は多いので、成熟一歩手前でしょうか。
(2016.6.24. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-13

ヒゴトゲハムシ



 写真はヒゴトゲハムシ(旧名ヒゴノトゲトゲ) Dactylispa higoniae でしょう。 体長は 2.8mmしかなく、ヒゴトゲハムシとしても少し小さすぎるのですが、前胸背の模様など形態的にはよく一致しますし、食餌植物のヤブムラサキの葉の裏にいたので間違いないでしょう。

(2016.7.12. 堺自然ふれあいの森)



2016-07-12

ケラ


 写真はケラ Gryllotalpa orientalis です。 土の中にトンネルを掘って生活する昆虫で、目にする機会も少ないのですが、写真は田植後間もない田で、土が掻き回されて追い出され、張った水に浮かび畦につかまっていたものです。
 系統的には大きくかけ離れているほ乳類のモグラに前脚などがよく似ているのは、似た生活をすることで形態も似てくるという「収斂進化」の例としてよく挙げられます。


 背側を見ると、翅が発達していないように見え、飛べないように思われがちですが、発達していないのは前翅だけで、折りたたまれた長い後翅を持っていて、よく飛ぶこともできます。

(2016.6.23. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-11

アオモジホコリ


 コケの葉腋から垂れ下がっているように見える丸いもの、じつはコケとは無関係で、変形菌の一種のアオモジホコリ Physarum viride だろうと思います。 変形体がコケをよじ登り、そこで子実体を形成したのでしょう。
 子のう壁は亀甲状に割れますが、柄に接している付近は割れず、下の写真の右下のように花弁状になります。 ちなみに和名の「アオ」は、未熟な子嚢が緑色だからです。


(2016.6.28. 堺自然ふれあいの森)

2016-07-10

リンゴドクガ


 上はリンゴドクガ Calliteara pseudabietis の幼虫です。(撮影:2016.6.26. 堺自然ふれあいの森)
 ドクガ科ですが、毒針毛は持っていないようです。 頭部は写真の右側で、目立つのは尾端近くの赤い毛束ですが、身を守るために丸くなると、体の前方にある毛束の間から黒い帯が現れます。
 リンゴやサクラなどのバラ科以外にも、クヌギやコナラなどのブナ科や、ヤナギやカエデなども食べるようです。 
 そして、下が成虫です。(撮影:2011.4.30. 堺市南区槇塚台)


(学名について)
 種小名 pseudabietis は pseud(偽)+ Abies、abietis(モミ属)です。 成虫がスギドクガに似ているところからでしょうか。

ミジンムシダマシ科の幼虫



 朽ちた切株の窪みにくっついていた正体不明の生きものです。 アブラムシの幼虫かとも思ったのですが、吸汁できるような所では無いし、全く見当がつきません。 でも、こんなわけのわからないものに出会うと、好奇心が湧いてくるんですよね。
 落ち着いて撮れる時でなかったので、体長もよく分かりませんが、2mm前後だったと思います。

 おちゃたてむしさんからコメントをいただき、Aclerisさんのブログに写真のものとよく似たものが載せられていることを教えていただきました。 たしかによく似ていて、同種かきわめて近い種のようです。 Aclerisさんはクロミジンムシダマシ Aphanocephalus hemisphericus の幼虫だと思うと書かれています。
 「正体不明」としていたタイトルも、Aclerisさんに合わせて変更しておきます。

(2016.6.28. 堺自然ふれあいの森)