2019-01-31
ヤマトクラマゴケモドキ
上の写真はヤマトクラマゴケモドキ Porella japonica だと思います。 手前のヒメクジャクゴケと共に岩を覆っていました。
上は腹面から撮っています。 葉(背片)を含めた茎の幅は、上の写真では 1.5mmほどです。
上は空気中で反射光での腹面の拡大です。 中央やや右に雄苞葉の重なりが見えます。 中の造精器は既に胞子を放出してしまっていました。
腹葉は舌形で、茎の幅よりほんの少し広いようです。 細長い腹片は、茎に沿っていて、上の写真では、はっきりしていません。
前に載せたヤマトクラマゴケモドキでは、背片にも腹片にも腹葉の側縁にもたくさんの歯が見られました(こちら)。 今回のものではこれらの歯はほとんど見られませんが、これも変異の幅に収まるようです。
上は顕微鏡を使っての撮影ですから、水に浸した状態で透過光で見ていることになります。 今度は腹片がよく分かりますが、腹葉は茎に重なってはっきりしません。
上のものでは、背片に1~2歯が見られます。 また多くの腹片では、先端と背縁基部に歯が見られます。
腹片を拡大してみました(上の写真)。 背縁基部などの歯ははっきりしませんが、陰になっているのかもしれません。 先端には透明細胞が見られます。
茎の表面を糸状に這っているのは菌糸か何かで、本種とは関係なさそうです。
上は葉身細胞です。 クラマゴケモドキ科の油体は、どの種もよく似ていて、各細胞に数十個あり、均質な小さい楕円体です。
(2018.12.19. 滋賀県大津市 石山寺)
2019-01-29
ヒメハイゴケ
葉がクルクル巻いている写真のコケははヒメハイゴケ Calohypnum oldhamii だと思います。
育っていたのは、地表から1mほど離れたコナラの幹です(上の写真)。 ヒメハイゴケは低地ではハイゴケに次いで普通に見られる種で、平凡社の図鑑には「山地のやや湿った岩上、木の根元、地上、腐木上などに生える。」とありますが、木の幹にも生えるようです。
上の2枚は枝葉だったようです。 枝葉翼部の最下端の1細胞は薄膜透明で長楕円形の大きな細胞です(安藤,1995)。 しかしこの細胞は、うまく葉を剥がさないと、茎に残ったり、破損したりして、なかなかきれいに観察できませんでした。
◎ 茎葉の様子などはこちらに載せています。
(2019.1.25. 堺自然ふれあいの森)
2019-01-28
越冬中のウマノオバチ(オス)
写真はウマノオバチのオスでしょう。 コナラの朽木の中で越冬していました。 標本はお見せしていませんが、コマユバチ科に詳しいF氏にお聞きすると、ウマノオバチはオスも越冬するようですし、よく似たヒメウマノオバチとの区別は後翅の翅脈を見ないと分からないが、ブナ科でみつかったのなら、ほぼ間違いないだろうとのことでした(ヒメ-はネムノキに入るカミキリ幼虫に寄生)。
(2019.1.25. 堺自然ふれあいの森)
◎ ウマノオバチのメスはこちらに載せています。
2019-01-25
コメバキヌゴケ
上はコメバキヌゴケ Haplocladium microphyllum のようです。 木の根元にあったイヌケゴケの群落に混じっていたことに帰宅後に気がつきましたので、生態写真はありません。
茎の自由奔放な曲がり方は同属のノミハニワゴケによく似ています。
葉も、ノミハニワゴケよりもやや小さいのですが、とてもよく似ています。
本種とノミハニワゴケとの明確な違いは、前者の葉身細胞には、上の写真のように、中央にパピラがあるのに対し、後者のパピラは細胞の背面上端にあります。
上は葉の基部で葉縁に注目し、横からパピラを見ています。
上の2枚は毛葉です。 平凡社の図鑑には「枝分かれした毛葉がまばらにつく。」とありますが、茎によって毛葉がついている所とそうでない所がありました。 また、時期によるのか生育状態によるのかわかりませんが、枝分かれしそうな雰囲気のある毛葉はあっても、枝分かれした毛葉は見あたりませんでした。
(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)
2019-01-23
オオサワゴケ
写真はオオサワゴケ Philonotis turneriana でしょう。 みごとに水をはじいていて、大きな水滴も見えます。
乾くと、葉は縮んで細くなっていきます。 今回見たオオサワゴケは、枝先に房状に無性芽をつけていました(上の写真)。
茎は長く伸び、上の写真では数字の単位がmmですから、まっすぐ伸ばせば2cmほどですが、もっと長く5cmほどになることもあるようです。 葉の長さは、上の写真の場合では、1mm前後のものが多いようです。
葉は狭三角状披針形で、最下端が最も幅広くなっています。 葉形を見るとコツクシサワゴケなどによく似ていますが、葉縁が反曲することはありません。
葉の表面は強く水をはじくため、葉のプレパラートにはどうしても気泡が入ってしまいます。
葉身細胞の腹面上端にはパピラがあります(上の写真)。
(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)
◎ こちらには蒴をつけたオオサワゴケを載せています。
2019-01-21
2019-01-12
減数分裂が終わったばかりのチヂミカヤゴケ
上は、クモの糸が気になりますが、樹幹にあったチヂミカヤゴケ Macvicaria ulophylla を下から覗き込むようにして腹面を撮ったものです。 葉は著しく波打っていて、背片、腹片、腹葉の区別も容易ではありませんが、これらについてはこちらに載せていますので、今回はスルーします。
上のような状態で木についていました。
1枚目の写真にも写っていますが、あちこちに花被がついていました。 上の写真の中央に写っているのが花被です。
この花被の中を覗いてみると・・・
花被の中にはカリプトラに包まれた胞子体が大きくなっていました。 カリプトラの基部には生長できなかった造卵器がたくさん見えます。
この蒴の断面を作ってみたのが下です。
蒴の中に小さな粒子状のものが詰まっています(上の写真)。 これを少し取って顕微鏡で観察すると・・・
膜に包まれて4個の細胞がくっついたかたまりがたくさん見えます。3個セットに見えるものも、よく見れば、その上か下にもう1つの細胞があるのが分かります。
減数分裂では1個の細胞が4個に分かれます。 上の写真は1個の胞原細胞が減数分裂により4個の胞子になろうとしている姿のようです。 4個の若い胞子をまとめて包み込んでいる膜は、胞原細胞の細胞壁が残っているのでしょう。 そして、それらの間に帯状に見えるものは弾糸となる部分だと思います。
下は、減数分裂が終わったばかりで、まだ4個がくっつきあったままの若い胞子の拡大です。
(2019.1.11. 堺自然ふれあいの森)
2019-01-09
よく育ったオオスギゴケ
京都市の法然院の燈籠基部によく生長したオオスギゴケがありました。
大きさが分かるように人の手を添えて撮ってみました(上の写真)。 長さを測ってみると、25cmほどありました。
(2018.12.27.)
◎ オオスギゴケの葉の断面の様子などはこちらに載せています。
2019-01-05
エビゴケ
昨年の5月30日に青森県の「蔦沼めぐり自然研究路」でサンプリングしたエビゴケを観察し直してみました。 エビゴケ Bryoxiphium norvegicum subsp. japonicum は関東・東北あたりでは比較的よく見られるようですが、近畿以西では多くありません。
上は現地で撮った岩から垂れ下がっている状態の写真で、中央少し下には蒴も見えます。
蒴は茎に頂生します。 残念ながら蒴は古いものですが、蒴歯は無さそうです。
蒴の左右から葉の一部が長く伸びています。 和名は、植物体そのものもエビの腹部に似ていますが、これをエビの触角に見立てたのかもしれませんね。 この長く伸びているのは・・・
上の写真では“エビの触角”は見あたりません。 つまり“エビの触角”のある葉は苞葉なのでしょう。
蘚類の葉は、ホウオウゴケ科など一部を除き、放射状につきます。 しかし上のように拡大して撮ると、エビゴケの葉も左右に規則正しく並んでいるようです。 また、葉と葉の重なりもかなり大きいようです。 この葉の重なり具合は、岩に面している側もその反対側も観察する限りでは違いは見られませんでした。
平凡社の図鑑のエビゴケ科の解説を見ると、「葉の基部は2枚になって、ホウオウゴケの葉のように茎を抱く。」と書かれています。 また、種の解説では「腹翼は長くて葉先に達し、ホウオウゴケのように茎を抱く。」となっています。 これまでサラッと読み流してきていたのですが、きっちり読むと分からないことだらけです。 茎と葉の関係は書かれていますが、葉と葉の関係は何も書かれていません。 また、「腹翼」とはどの部分なのでしょうか? 「腹翼」があるのなら「背翼」もどこかにあるのでしょうか? 顕微鏡を使って、もう少し詳しく観察することにしました。
上は、基部が少し欠けてしまいましたが、1枚の葉を茎から外して撮ったものです。 赤い楕円で囲ったところなどを見ると、葉は2つ折りにたたまれているように見えます。
葉が2つ折りになっているなら、細胞は少なくとも2層になっているはずです。 上の2枚はそのことを確認したもので、同じ葉の葉先に近い同じ所をピントをずらせて撮っています。
2枚の写真が一致しているか否かは、写真を重ねてみれば明らかになります。 この2枚の写真を合成すると、下のような写真になります。
これで細胞は2層(以上)になっていることは分かりますが、2つ折りの葉であるか否かは、横断面で確認する方が確かです。 小さい葉ですから横断面作成は避けたかったのですが、チャレンジしてみました。
上が苦労して作った葉の横断面です。 切断は乾いた状態の葉を茎と共に実体双眼顕微鏡下で行いました。 切断時には扁平だった葉は、水を加えるとすぐにV字型に広がり、2つ折りになっていたことがはっきりしました。
上はV字に折れ曲がっている部分つまり中肋近くの拡大です。 赤い丸で囲んだ部分ですが、中肋の一部と見ることもできそうですが、とても短いながらも、これを中肋とは別のものとして、つまり背翼として見ることもできそうです。 そのような目で再度2つ折りになった葉を横から見ると・・・
葉は上の赤い文字のa、b、cの3つの部分に分けられそうです。 aが腹翼、bが中肋、cが背翼(と呼ぶにはあまりにも狭いですが・・・)でしょう。 中肋は葉先から突出しています。
上は腹翼が茎を抱いている様子で、偏光を使って撮影しています。 エビゴケの植物体が扁平なのは、扁平な茎の左右にのみ葉がつくからのようです。
上は葉の基部を側面から見ています。 やはり腹翼、中肋、背翼が区別できます。 腹翼の細胞は方形から線形へと連続的に形と大きさを変えています。
◎ 大阪府下で観察したエビゴケはこちらやこちらに、北海道の「苔の洞門」で観察した蒴のついたエビゴケはこちらに載せています。
上は現地で撮った岩から垂れ下がっている状態の写真で、中央少し下には蒴も見えます。
蒴は茎に頂生します。 残念ながら蒴は古いものですが、蒴歯は無さそうです。
蒴の左右から葉の一部が長く伸びています。 和名は、植物体そのものもエビの腹部に似ていますが、これをエビの触角に見立てたのかもしれませんね。 この長く伸びているのは・・・
上の写真では“エビの触角”は見あたりません。 つまり“エビの触角”のある葉は苞葉なのでしょう。
蘚類の葉は、ホウオウゴケ科など一部を除き、放射状につきます。 しかし上のように拡大して撮ると、エビゴケの葉も左右に規則正しく並んでいるようです。 また、葉と葉の重なりもかなり大きいようです。 この葉の重なり具合は、岩に面している側もその反対側も観察する限りでは違いは見られませんでした。
平凡社の図鑑のエビゴケ科の解説を見ると、「葉の基部は2枚になって、ホウオウゴケの葉のように茎を抱く。」と書かれています。 また、種の解説では「腹翼は長くて葉先に達し、ホウオウゴケのように茎を抱く。」となっています。 これまでサラッと読み流してきていたのですが、きっちり読むと分からないことだらけです。 茎と葉の関係は書かれていますが、葉と葉の関係は何も書かれていません。 また、「腹翼」とはどの部分なのでしょうか? 「腹翼」があるのなら「背翼」もどこかにあるのでしょうか? 顕微鏡を使って、もう少し詳しく観察することにしました。
上は、基部が少し欠けてしまいましたが、1枚の葉を茎から外して撮ったものです。 赤い楕円で囲ったところなどを見ると、葉は2つ折りにたたまれているように見えます。
葉が2つ折りになっているなら、細胞は少なくとも2層になっているはずです。 上の2枚はそのことを確認したもので、同じ葉の葉先に近い同じ所をピントをずらせて撮っています。
2枚の写真が一致しているか否かは、写真を重ねてみれば明らかになります。 この2枚の写真を合成すると、下のような写真になります。
これで細胞は2層(以上)になっていることは分かりますが、2つ折りの葉であるか否かは、横断面で確認する方が確かです。 小さい葉ですから横断面作成は避けたかったのですが、チャレンジしてみました。
上が苦労して作った葉の横断面です。 切断は乾いた状態の葉を茎と共に実体双眼顕微鏡下で行いました。 切断時には扁平だった葉は、水を加えるとすぐにV字型に広がり、2つ折りになっていたことがはっきりしました。
上はV字に折れ曲がっている部分つまり中肋近くの拡大です。 赤い丸で囲んだ部分ですが、中肋の一部と見ることもできそうですが、とても短いながらも、これを中肋とは別のものとして、つまり背翼として見ることもできそうです。 そのような目で再度2つ折りになった葉を横から見ると・・・
葉は上の赤い文字のa、b、cの3つの部分に分けられそうです。 aが腹翼、bが中肋、cが背翼(と呼ぶにはあまりにも狭いですが・・・)でしょう。 中肋は葉先から突出しています。
上は腹翼が茎を抱いている様子で、偏光を使って撮影しています。 エビゴケの植物体が扁平なのは、扁平な茎の左右にのみ葉がつくからのようです。
上は葉の基部を側面から見ています。 やはり腹翼、中肋、背翼が区別できます。 腹翼の細胞は方形から線形へと連続的に形と大きさを変えています。
◎ 大阪府下で観察したエビゴケはこちらやこちらに、北海道の「苔の洞門」で観察した蒴のついたエビゴケはこちらに載せています。
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