2020-03-31
ヤクシマムチゴケ
上は樹幹のコケを撮った写真で、いろんなコケが混生していますが、二又分枝を繰り返し、葉先を少し上に持ち上げているのが、屋久島のみに分布するヤクシマムチゴケ Bazzania praerupta です。
上は腹面からです。 少し乾いてきて葉は腹方に偏向しかけています。 白っぽく見えているのは雄花序だと思うのですが、若すぎるのか、解剖しても分かりませんでした。
葉の先端の歯は3(~4)個で、葉を含めた茎の幅は2~3.5mmです。 腹葉の幅は茎径の 2.5~3倍です。
上は腹葉です。 全縁で、基部が耳状になっています。
上は葉身細胞です。
(2020.3.3. 屋久島)
2020-03-30
ルソンゴヘイゴケ
写真はルソンゴヘイゴケ Thysananthus aculeatus でしょう。 生育場所は、平凡社の図鑑では樹幹に着生とありますが、渓流脇の岩上でした。 国内での分布は、鹿児島県~琉球列島となっています。
植物体は緑褐色で、背面から見ると、楕円形の背片が2列に重なりあっているように見えます。
上は腹面から撮っています。 葉を含めた茎の幅は1~2mmです。
上は腹面を上にして横から撮っています。 腹葉は立ち上がっています。
上は腹面からの顕微鏡写真です。 プレパラートにすると、腹葉はカバーガラスに押さえられて寝てしまいます。
背片は鈍頭で、腹片は上の写真では腹葉に隠されてよく分かりません。 腹葉は広卵形で茎径の約4倍幅です。
上は葉です。 背片には主に腹縁に微鋸歯があります。 腹片は背片の 1/3~1/4長で歯牙が見られます。
上は腹片の歯牙を中心に拡大しています。 第1歯は基部が2細胞幅で数細胞長、第2歯は不明瞭です。
上は腹葉です。 平凡社の図鑑では全縁となっていますが、縁は鋸歯状で、円頭です。
葉身細胞は厚壁で、大きなトリゴンがあります。 上の写真では多くの油体が白ツブレ状体になってしまいましたが、油体はブドウ房状です。
トリゴンは2辺(上の写真の赤丸)で膨れ、1辺(上の写真の青丸)で凹んでいます。
(2020.3.4. 屋久島)
2020-03-29
マツバウロコゴケ
写真はマツバウロコゴケ Blepharostoma trichophyllum です。 分布は全国のブナ帯以上です。
写真は屋久島の標高 1,000m付近で撮っていますが、屋久島には標高1,935mの山もあり、亜熱帯から亜高山帯までの気候帯に加え、複雑な地形も関係して、コケの分布も複雑に入り組んでいるようです。
葉は長さ 0.5mm前後あります。 前に低地の山道の土手などでよく見られるチャボマツバウロコゴケを載せていますが(こちら)、大きさは全く異なります。
葉は茎の先端部のものほど大きくなる傾向があるようです。
葉は基部まで3~4裂し、葉裂片は1細胞列です。 腹葉は葉とほぼ同じ形をしています。 チャボマツバでは各葉裂片は内曲していますが、本種の葉裂片の伸びている方向はバラバラです。 平凡社の図鑑では細胞の長さは幅の約3倍となっていますが、せいぜい 2.5倍ほどです。 下は葉裂片の細胞です。
(2020.3.3. 屋久島)
◎ マツバウロコゴケはこちらにも載せています。
2020-03-28
Bazzania siamensis (カマバムチゴケ)
以下の記事は2025年12月24日に大幅に書き換え(写真は変更なし)、タイトルも変更しています。
記事は当初カネマルムチゴケ Bazzania ovistipula として載せていましたが、本種について調べておられる Yasshiさんから古木先生に問い合わせていただいたところ、写真のムチゴケは Bazzania siamensis (Steph.) Bakalin & Klimova だろうということになりました。 本種は、以前はヤマムチゴケ B. pearsonii とされていましたが、欧州産のタイプ標本とは異なり、上記の学名に変更されています(2025年の日本蘚苔類学会滋賀大会で古木先生発表)。 本種については、古木先生は カマバムチゴケという新称を提案されています。
参考までに、片桐・古木(2018)の「日本産苔類・ツノゴケ類チェックリスト,2018」では次のようになっています。
Bazzania ovistipula (Steph.) Abeyw. カネマルムチゴケ
Bazzania pearsonii Steph. ヤマムチゴケ
( Bazzania siamensis については記載無し)
なお、これまでヤマムチゴケとされてきた B. pearsonii については、八ヶ岳産は欧州産に一致すると指摘されていましたが(樋口・古木 2018)、改めて八ヶ岳産を日本新産として確認されています(滋賀大会で古木発表)。 B. pearsonii は、葉の背縁基部が耳たぶ状に張り出し、トリゴンはより大きく、腹葉は縦長です。 この種については、古木先生は2025年の滋賀大会で、ミヤマムチゴケの和名を提案されています。
上は腹面から撮っています。 多くの葉の先端の歯は3個です。水に濡れていて少し分かりにくいですが、葉と腹葉はつながっていません。 腹葉は、葉と同じ色をしていて、外曲しています。腹葉の幅は茎径の2倍以下です。 腹葉の葉縁には鋸歯がほとんど無く、多くの腹葉の先端は欠けたように少し凹んでいます。
葉は鎌形状です(上の写真)。 葉の背縁基部は耳たぶ状に張り出していません。
腹葉は横長です(上の写真)。外曲した縁にピントを合わせていますので、中央部はボケています。
上は葉身細胞で、トリゴンがあります。
(2020.3.3. 屋久島)
記事は当初カネマルムチゴケ Bazzania ovistipula として載せていましたが、本種について調べておられる Yasshiさんから古木先生に問い合わせていただいたところ、写真のムチゴケは Bazzania siamensis (Steph.) Bakalin & Klimova だろうということになりました。 本種は、以前はヤマムチゴケ B. pearsonii とされていましたが、欧州産のタイプ標本とは異なり、上記の学名に変更されています(2025年の日本蘚苔類学会滋賀大会で古木先生発表)。 本種については、古木先生は カマバムチゴケという新称を提案されています。
参考までに、片桐・古木(2018)の「日本産苔類・ツノゴケ類チェックリスト,2018」では次のようになっています。
Bazzania ovistipula (Steph.) Abeyw. カネマルムチゴケ
Bazzania pearsonii Steph. ヤマムチゴケ
( Bazzania siamensis については記載無し)
なお、これまでヤマムチゴケとされてきた B. pearsonii については、八ヶ岳産は欧州産に一致すると指摘されていましたが(樋口・古木 2018)、改めて八ヶ岳産を日本新産として確認されています(滋賀大会で古木発表)。 B. pearsonii は、葉の背縁基部が耳たぶ状に張り出し、トリゴンはより大きく、腹葉は縦長です。 この種については、古木先生は2025年の滋賀大会で、ミヤマムチゴケの和名を提案されています。
上は腹面から撮っています。 多くの葉の先端の歯は3個です。水に濡れていて少し分かりにくいですが、葉と腹葉はつながっていません。 腹葉は、葉と同じ色をしていて、外曲しています。腹葉の幅は茎径の2倍以下です。 腹葉の葉縁には鋸歯がほとんど無く、多くの腹葉の先端は欠けたように少し凹んでいます。
葉は鎌形状です(上の写真)。 葉の背縁基部は耳たぶ状に張り出していません。
腹葉は横長です(上の写真)。外曲した縁にピントを合わせていますので、中央部はボケています。
上は葉身細胞で、トリゴンがあります。
(2020.3.3. 屋久島)
2020-03-27
ゴマダラヤスデゴケ
写真はゴマダラヤスデゴケ Frullania pseudoalstonii です。 樹幹についていました。 本種は宮崎県産のものについて 2006年に新種として発表されていますので、初版が2001年の平凡社の図鑑には記載されていません。 日本産の種ではホソヤスデゴケやアオシマヤスデゴケに似ていますが、背片全体に眼点細胞が散在していることや、早落性の葉を有していることで区別されます。 なお、種小名は「偽のalstonii」という意味で、F. alstonii は東南アジアに広く分布するヤスデゴケですが、日本での分布は確認されていないようです。
小さなコケで、葉を含めた茎の幅は 0.4~0.7mmでした。
上は背面から撮っています。 背片には基部に列状の眼点細胞があるほか、あちこちに眼点細胞が散在しています。 和名の「ゴマダラ」は、この散在している眼点細胞に由来しているのでしょうね。
上は腹面からです。 腹片は長さが幅の 1.5倍ほどの釣鐘型で、嘴があります。 腹片の先端は少し茎側に傾いています。
腹葉は長さの1/2~1/3まで2裂し、裂片は三角形てす。 幅は茎と同じか少し大きい程度ですが、細長く、腹葉どうしは接するか、少し重なっています。
上は腹片のスチルスにピントを合わせています。
上は背片の葉先近く(右が葉先の方向)の葉身細胞です。
(2020.3.4. 屋久島)
◎ ゴマダラヤスデゴケはこちらにも載せています。
2020-03-26
カクレゴケ
写真はカクレゴケ Garovaglia elegans です。 樹幹についていました。 基物上を短く這う一次茎から二次茎が立ち上がり、密に葉をつけます。 日本での分布は宮崎県以南で、絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。
学名の属名は人名ですが、種小名は「優美な」という意味で、よく生長した場合には、二次茎はほとんど分枝せずに長さ5cm以上にもなり、その自重で垂れた後に茎の先を持ち上げている群落は、たしかに風雅なのかもしれません。 写真の場所の木にも、高さ7~8mの所に大きく育った群落があったのですが、手の届く所には、上の写真のような二次茎の長さが2cmにも満たない小さな群落しかありませんでした。
二次茎の基部には、たくさんの仮根があります。 葉は光沢があり、長さは4mmほどです。
葉は卵形で、先は急に細くなっています(上の写真)。 葉面は凹んで、深い縦じわがあります。 中肋は短く、2叉しています。
中~上部の葉縁には、上の写真のような歯があります。
葉身細胞は長菱形で大きく、長さは 80~100μmもあり、赤い円で示したように、所々細胞壁にくびれが見られます。
ところで、和名はどういう意味なんでしょうね。 大きな群落の中に妖精でも隠れているのでしょうか。
(2020.3.4. 屋久島)
2020-03-25
マルバツガゴケ
写真はマルバツガゴケ Distichophyllum obtusifolium です。 水の滴る岩上で育っていました。 分布はこれまで九州以南とされていましたが、四国でも見つかっています(立石ら,2017)。
上の写真では不明ですが、蒴は茎の途中についていることを確認しています。
葉は扁平につき、密に重なりあっています。 長さは4mm前後で、ツガゴケよりひとまわり大きな葉です。
葉は倒卵形で、円頭~広い鈍頭です。 ちなみに、種小名の obtusifolium は「鈍形の葉の」という意味です。 中肋は長く、葉縁には全周に舷が見られます。
軟らかい葉で、上の写真では葉のあちこちが破れてしまいました。
上は葉先付近の拡大です。
上は蒴です。 平凡社の図鑑では、この属全体の蒴柄は平滑となっていますが、蒴柄全体にパピラがありました。
蒴の下部には気孔があります(上の写真)。
上の写真は蒴の内側から撮っています。 内蒴歯はまっすぐ伸びていますが、外蒴歯は内側に曲がっています。 蒴歯の長さは、両者でほぼ同じです。 外蒴歯には密な横条がありますが・・・
外蒴歯の先にピントを合わせて、他をボケさせると、外蒴歯の先にはパピラがあることが分かります。
(2020.3.3. 屋久島)
【参考文献】
立石幸敏・木口博史・西村直樹(2017).轟九十九滝(徳島県海陽町)の蘚類.Naturalistae21.
2020-03-24
オオシタバケビラゴケ
伐採木の上に育つコケ、円い葉が基物から少し浮いたように連なっています。
葉の長さは 0.3~0.4mmです。
基物から剥がして腹面から見ると、葉の下半分がポケット状になっています。 これが何なのかを理解するのに少し時間がかかりました。 と言うのも・・・
顕微鏡で観察すると、大きな油体を持つ細胞の様子から、ケビラゴケ科であることは見当がつきますし、ピントは合っていませんがケビラゴケ科らしい腹片が①にあります。 それでは⑤は何なのか、そして①と⑤の境である(と考えた)②~④が③付近で消えています。 顕微鏡のピントをずらしながら⑤は何なのか理解しようとしましたが、よく分かりません。
そこで背片をボカしたまま、①~⑤がはっきり写るように深度合成してみると・・・
①~⑤は連続した腹片で、高さが2段になっているだけでした。 腹片の長さが背片の長さとほぼ同じということが予想外で、頭が混乱してしまいました。 深度合成の有用性を改めて感じました。
このように葉のつくりが分かり、ケビラゴケ科の中を検索すると、オオシタバケビラゴケ Radula cavifolia がみつかりました。 分布は神奈川県以南ということです。
上は葉身細胞です。
(2020.3.3. 屋久島)
◎ オオシタバケビラゴケはこちらにも載せています。
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