2017-02-27

フクジュソウ


 上は自宅の庭に咲くフクジュソウ Adonis ramosa です。 もう20年以上も前に正月の寄せ植えにあった1株を植えたものですが、半日陰の場所で徒長気味で、肥料も全く与えていないのですが、徐々に増え、今年は4輪の花が咲きました。 フクジュソウもスプリングエフェメラルの一種。 この花を見ると春を感じます。
 フクジュソウの花を見ていると、開いていたり閉じていたり。 直射日光が当たっていると開いているようなので、明るさが関係しているのだと思っていたのですが、岐阜県教育委員会のこちらを見ると、どうもフクジュソウの花の開閉には温度も深く関係しているようです。 考えてみれば当然で、訪花昆虫が動けない低温時に花が咲いても意味がありません。


 上はフクジュソウの花です。 キンポウゲ科の花らしく、オシベもメシベもたくさんあります。 F値やシャッター速度に注意しながら写真を撮っていると感覚的によく分かるのですが、福寿草の花弁の光を反射する率は相当高いようです。 光と同時に熱も反射しているわけで、パラボラアンテナのような花の形と相まって、花弁で囲った空間の温度を上げることで、訪れた虫たちの活動を活発にし、受粉効率を高めているのでしょう。 フクジュソウの花は蜜を出さないのですが、この温かさも虫たちを呼び寄せるのに役立っているのでしょうね。

2017-02-26

ゼニゴケの造卵器

 1週間前にゼニゴケの精子をこのブログに載せました。 精子が作られている時期なら卵細胞も作られているだろうと、ゼニゴケの造卵器を観察することにしました。
 ゼニゴケの雌器床は深く8~10裂し、それぞれの裂片は指状突起と呼ばれています。 高さ5mmほどの雌器托の、まだ開ききっていない雌器床の指状突起の間にカミソリの刃を入れて手前の指状突起を取り去ったのが下の写真です。


 造卵器は簡単にみつけることができました。 上の写真の黄色い四角で囲った所に、薄茶色をした造卵器が並んでいます。


 上は1枚目の写真と同じ所をもう少し薄くして透過光で見たものです。



 上は別の切片で、造卵器のある場所をさらに薄く切り、造卵器を見易くしたものです。 造卵器の頸部が曲がっているのは、切り方がまずかったためでしょう (-_-;
 造卵器の基部には偽花被(たぶん)も見られました。

◎ 上記の造卵器に精子がどのようにしてたどりつくのかは、こちらに載せています。


2017-02-24

オオハリガネゴケ



 上は湿った状態のオオハリガネゴケ Bryum pseudotriquetrum です。 茎の中ほどにはたくさんの無性芽があり、上の写真では短い糸くずのように見えていて、湿らせる時に離れて葉にもくっついています。 茎の下部には仮根も多く、無性芽や仮根に覆われていない所の茎は赤く見えています。


 上は無性芽のついている所を拡大したものです。 乾いた状態では葉は上のように縮れています。


 上は無性芽で、細胞が1列につながっています。 なお、仮根の顕微鏡写真はこちらに載せています。


 葉の長さは3mmほどで、葉先は短く尖り、葉の上部には小歯が見られます。 葉縁には舷があります。 古い葉になるにつれて中肋も赤くなる傾向があるようです。


 上は葉の断面です。 葉縁は反曲しています。


 上は中肋の断面です。


 葉身細胞は菱形~六角形で、長さは 40~50μmほどです。

(2017.2.8. 西宮市名塩)

◎ オオハリガネゴケはこちらにも載せています。 また蒴の様子をこちらに、紅葉の様子をこちらに載せています。


2017-02-23

リョウブの冬芽と葉痕

 リョウブ Clethra barbinervis は幹の模様から、林の中でもその存在が目につきます。 しかしその他の特徴に関しては、一見平凡な植物にも見えますが、世界的にも1科1属(64種ほど存在するようです)で、日本では1科1属1種で、細かく見ると、いろいろおもしろい特徴を持っています。 花のつくりも特徴的ですし、ツボミから花を経て果実に至る変化もなかなかおもしろいものですが、今回は冬芽と葉痕に注目してみました。


 上はリョウブの冬芽です。 芽鱗はあるのですが、芽の生長で押し上げられるのか芽鱗が乾燥して縮むのか、上の写真のように芽鱗の基部が離れ、傘のように開いた姿をよく目にします。 風などでこの芽鱗が落ちてしまうと裸芽のようになります。
 葉痕はハート型~三角形で、冬芽近くでは幅広ですが、冬芽から離れるにつれて縦に長くなっていきます。 葉痕の中央には維管束痕が1つあります。
 上の写真の冬芽も鳥追い笠を被った顔と見れなくもないですが・・・


 上の写真、だれかさんに似てませんか? 複数の葉痕の配置によっては大きな維管束痕が目のように見えてきます。

(2017.2.22. 堺自然ふれあいの森)

2017-02-22

アブラゴケの胞子体

 蒴のついたアブラゴケの写真を集めてみました。

2015.10.30. 堺市南区豊田

2016.11.30. 堺自然ふれあいの森

2017.2.22. 堺自然ふれあいの森

2015.11.11. 六甲山

 日付けを見ると、アブラゴケの蒴は春(2月頃)と秋(11月頃)に目立っているようですが、2月頃の蒴は秋にできるはずのものが冬の寒さで遅れたのか、受精の時期が2度あるのか、どちらでしょうね。

◎ アブラゴケの葉の様子や無性芽などはこちらに載せています。

2017-02-20

ケチャタテの一種



 ヤツデの葉の裏にいたケチャタテの一種です。 体長は、きっちり測定できていないのですが、4mmほどです。
 体色が黄色系のケチャタテはこれまで何度か載せていて、いちばんよく似ているのはこちらですが、やはり別種のように思います。

(2017.2.3. 錦織公園)

2017-02-19

ゼニゴケの精子


 ゼニゴケの雄器床に水を垂らすと、たくさんの精細胞が雲が湧き立つように出てきました。(写真の右下の白い部分は水に光が反射したものです。)


 上が精細胞を出した雄器床です。 精細胞を出した後に乾かして撮りましたので、少し皺がよっています。 1枚目の写真は、ほぼ上の赤で囲んだ所です。

 精細胞で白濁した水をスポイトで取って顕微鏡で観察すると・・・


 造精器から出たばかりの状態で見られるものの多くは精細胞( 精子は細胞壁の中をグルグル回っています:上の写真では丸く写っています )です。 泳ぐのに必要な精子の持っているエネルギー源はほんのわずかです。 しかし精細胞の状態では細胞質にあるエネルギー源を使うことができます。 多くの精子は精細胞の状態で卵細胞の近くまで運ばれるのでしょう(こちら)。
 しかし細胞壁から抜け出して泳ぎ出す精子もいます。 上の写真の中央には泳ぎ出した精子が写っているのですが、このままでは分かりにくいので、墨を入れ名称を書き加えたのが下です。


 精子は凝集した核が大部分を占める長い胴体部を持ち、核に沿うようにスプラインと呼ばれる微小管の束があります。
 頭部からは2本の鞭毛が出ていて、これを動かして進みます。 上の写真では2本の鞭毛の長さが違うように見えますが、これは立体を平面の写真にしているためで、2本の長さは同じです。
 頭部と尾部、それに鞭毛の先には細胞質のかたまりがあり、その部分が膨れて見えています。
 
 下は動画で、開始早々に画面が拡大しますが、拡大後の画面の長辺が約 100μmです。


 倍率を上げれば上げるほど被写界深度は浅くなります。 大きな画面をお持ちの方は、上の動画を中央の“右向き三角”でスタートさせてから、画面右下隅の「全画面」(途切れ四角のアイコン)をクリックしていただくと、少しは分かり易くなると思います。 細くて動くスピードも速い鞭毛はほとんど見えません。

 観察材料にしたゼニゴケ(雄株)は、2017.2.8.に西宮市名塩で採集したものを持ち帰り、雄器托が育つのを待って、今日観察したものです。

◎ ゼニゴケの雄器床の断面などはこちらに載せています。


2017-02-18

クサシギ


 上はクサシギ Tringa ochropus です。 遠くて暗い所にいるのを無理して撮って大トリミングしていますので、画質は荒く、ブレていますが・・・。
 イソシギに似ていますが、① 体の下面の白が肩の部分に食い込んでいませんし、② 翼と尾がほぼ同じ長さです。
 クサシギは、春と秋の渡りの時期には旅鳥として全国的に渡来しますが、関東以南では冬鳥として越冬します。 写真のクサシギは、時期からしても、越冬中の個体でしょう。

(2017.2.11. 堺自然ふれあいの森)

2017-02-17

コマユバチ科チビコマユバチ亜科 Blacus属の一種





 ヤツデの葉の裏で越冬中のコマユバチです。 体長は1.7mmでした。
 藤江さんに見てもらったところ、チビコマユバチ亜科( Blacinae )の Blacus属のようだとのことでした。 Blacusは似たものか多く、日本未記録種もたくさんいて、既知種だとしても、正確な同定には、顔の正面からの写真、前伸腹節背面、腹部背板の形状などが必要だということです。
 1ヶ月ほど前に載せたもの(こちら)とも似ているのですが、体長は少し異なり、同種かどうかも不明です。

(2017.2.3. 錦織公園)

2017-02-16

サンカククラマゴケモドキ


 上はシゲリクラマゴケモドキ Porella densifolia var. fallax だと思っていたのですが・・・


 1枚目の写真は、上の赤い線で囲った部分の拡大です。 このように大きな塊になって岩にくっついていました。


 上は背面から撮ったもので、背片は長さ 1.7~2.3mmで、1~3歯があります。


 腹面からみると、腹片や腹葉の先端にも1~2歯があり、サンカククラマゴケモドキ P. densifolia var. robusta のようです。 学名から分かるようにシゲリクラマゴケモドキとは変種の関係になります。


 上は背片の先端部です。

(2017.2.8. 西宮市名塩廃線敷)

2017-02-15

オサムシ科ゴモクムシ亜科の幼虫?



 写真は、大きな牙や腹部末端の2本の角などから、オサムシ科ゴモクムシ亜科の幼虫ではないかと思うのですが、脚が確認できておらず、動きも非常に緩慢で、全く別のものかもしれません。 体長は 3.3mmで、ケヤキの樹皮の裏にいました。

(2017.2.3. 錦織公園)

2017-02-14

ツクシハリガネゴケ


 岩上に生えている写真のコケは、以下のような特徴からツクシハリガネゴケ Bryum billardieri だろうと思います。 無性芽は見当たりませんでした。 ツクシハリガネゴケはしばしば葉腋に糸状の無性芽をつけるようですが、「しばしば」は「必ず」ではありません。 (同行の人の観察によると、ほんのわずかですが、無性芽があったようです。: 2/28追記)
◎ たくさんの無性芽をつけたツクシハリガネゴケを【こちらに載せています(2019.7.追記)。


 ツクシハリガネゴケの葉は、上の写真のように茎の上部に集まり、傘状になる傾向があります。 そして葉の目立たないところの茎を拡大すると・・・


 たくさんの褐色の仮根に覆われています。


 葉は中央部より先で最も幅広くなっています。 上のスケールのいちばん大きな目盛が1mmですから、上の写真の葉は 5.5mmほどあります。 平凡社の図鑑ではツクシハリガネゴケの葉の長さは3~4.5mmとなっていますが、ハリガネゴケ属でこんな大きな葉を持つ種は他にありません。


 糸状のゴミが入ってしまいましたが、上は葉先の部分です。 中肋は短く突出し、明瞭な舷があります。 葉の上部には小歯があります。


 葉身細胞は長六角形で、長さは 50~80μmです。


(2017.2.8. 西宮市名塩廃線敷)

2017-02-13

ニセケチャタテ科の一種




 写真はのニセケチャタテ科(Pseudocaeciliidae)の一種だろうと思います。 ヤツデの葉の裏にいました。 体長は 2.5mmで、こちらに載せたものとは少し体長が異なりますが、同種のように思います。

(2017.2.3. 錦織公園)

2017-02-12

ゼニゴケの気室

 ゼニゴケ Marchantia polymorpha については、これまで有性生殖無性芽などについて書いてきましたが、葉状体に関してはあまり書いてきませんでした。 そこで今回は、葉状体の断面を作り、特に気室を中心に観察してみました。
 葉状体は層状構造を成しており、背面側には葉緑体を多く持った細胞からなる表皮組織があり、その下に葉緑体をほとんど含まない柔組織からなる分厚い髄質があります。 髄質は主に貯蔵組織として機能しているのでしょう。


 気室は表皮組織中にあります。 気室は気室孔で外部につながっています。 前にジャゴケの気室の様子を載せましたが(こちら)、ジャゴケの気室孔がアーチ形であるのに対し、ゼニゴケの気室孔は樽型です。 気室には葉緑体を多く含む同化糸が見られますが、これもジャゴケとはかなり様子が異なります。

(材料としたゼニゴケは 2017.1.25.に堺市美原区平尾で採集したものです。)

2017-02-11

ヒメコバネナガカメムシ


 ケヤキの樹皮の裏にいたヒメコバネナガカメムシ Dimorphopterus bicoloripes です。 体長は 3.3mmでした。 冬季には集団越冬することがあるようですが、みつけた時は1頭だけでした。
 このような小さな虫は、越冬中は確認が容易ですが、活動期にはなかなかみつからず、このヒメコバネナガカメムシの生態もよく分かっていないようです。
 なお、これとコバネナガカメムシの長翅型はとてもよく似ているようですが、後者は水辺に棲んでいるようです。


(2017.2.3. 富田林市 錦織公園)


2017-02-10

クロアオヤスデゴケ


 写真は岩上に育っていたクロアオヤスデゴケ Frullania pedicellata です。 岩にへばりついてカメラを持った腕を伸ばし、ピントはカメラに任せてどうにか撮った写真で、やはり少しブレてしまいました・・・。
 和名は色を表しているといえども、色は生育条件によって変化しますし、ヤスデゴケ属の種数は多く、上の写真のような背面からの写真だけでは、同定は難しいでしょう。


 上は腹面から撮った顕微鏡写真で、背片と腹片の関係が分かるようにピントを調節しています。 腹葉は存在しますが、ピントが合ってないので、ほとんどその存在は分かりません。
 上の写真では、ヘルメットのような形の腹片とウサギの耳のような形の腹片が写っていますが、ヘルメット型の腹片の場合、嘴の先が茎側に内曲している、つまり上の写真では下に垂れ下がっているように見えるのが、クロアオヤスデゴケの大きな特徴です。 ヘルメット型の腹片は縦横がほぼ同じ長さで、背片の約1/5の大きさです。


 上は腹葉にピントを合わせた写真ですが、腹片のウサギの耳型からヘルメット型への移行過程も捉えています。


 上は背片の葉身細胞です。

(2017.2.8. 西宮市名塩廃線敷)

◎ クロアオヤスデゴケはこちらにも載せています。