2015-07-31
トゲナナフシ
上からだとトゲはよく分かりませんが・・・
横から見ると背中にトゲがあります。 ナナフシの仲間は成虫も幼虫も姿があまり変わらないものが多いのですが、トゲナナフシの成虫はトゲがもっと立派なはずで、幼虫だと思います。
トゲナナフシは、野外でオスが見られるのは極めて稀で、主にメスの単為生殖によって子孫を残しているようです。
(2015.7.20. 兵庫県川西市笹部)
2015-07-30
クシノハスジゴケ
木の切株に生えていた上の写真のコケは、スジゴケ科のクシノハスジゴケ( Riccardia multifida )だろうと思います。 いちおう検索表で調べてみましたが、この仲間も似たものが多く、個体変異の幅が大きいので、あまり自信はありませんが・・・。
上は崖に生えていたものですが、1枚目のすぐ近くですし、たぶん同種だと思います。 以下、この苔を少し持ち帰り、調べてみました。
上の写真の画面中央右のゴチャゴチャした部分は生殖枝でしょう。 クシノハスジゴケは雌雄同株ですので、写真のものがクシノハスジゴケであれぱ、この生殖枝は大きさからして両性枝だと思いますが、雌枝や雄枝の可能性もあります。
上は顕微鏡で見たものです。 枝の中央部は複数の細胞が層になっていますが、枝の周囲は単細胞層になっています。 また、縁の細胞は他の翼部の細胞より小さく、凸状に張り出しています。
あちこちの細胞内に見える色の濃いものは油体でしょう。
油体は細胞に1~3個あり、小粒が集合したような形態です(上の写真)。
(2015.7.15. 高槻市摂津峡)
ヤマトコミミゴケ
岩上に育っていた上の写真のコケは、クサリゴケ科のヤマトコミミゴケ( Lejeunea japonica )でしょう。
上は腹面から撮ったものです。 背片は卵形で倒瓦状に重なり、腹片は存在しますが、小さく、腹葉にほとんど隠されています。 腹葉は横に広く、幅は茎の2~3倍あり、1/2~1/3までに2裂しています。
上は腹片が比較的よくわかる所を撮ったもので、中央下がその腹片です。
顕微鏡下でも撮ってみました(上の写真)。 腹片にピントを合わせていますので、腹葉の広V字型の切れ込みは、ぼやけていて分かりません。
上はさらに拡大したもので、写真の中央に腹片が写っています。 腹片はポケット状になっています。
(2015.7.15. 高槻市摂津峡)
◎ 蒴をつけたヤマトコミミゴケをこちらやこちらに載せています。
2015-07-29
2015-07-28
カマサワゴケ
上の写真の右側は休耕田の畦の側面に生えているカマサワゴケ( Philonotis falcata )です。 画面の左にはイチョウウキゴケやウキクサが土にはりついています。 土の黒っぽい所までは湿っていて、よく水が来るのでしょう。
上は用水路の壁面に育つカマサワゴケです。 群落の下部は水に接していますが、濡れている様子はありません。
上はカマサワゴケを水に載せたところです。 所々に気泡が見えますが、水をはじいているようです。
もう少し拡大すると、葉の表面がザラザラしていて(上の写真)、これが水をはじく原因となっているように思います。 なお、和名の「カマ」は、上の写真のように中肋が鎌状にカーブしていることからのようです。
上のザラザラをもう少し詳しく見るために、顕微鏡観察を行いました。
上の2枚の写真は、葉を背面(茎に面していない側)から見たものです。 細長い矩形の細胞の先端部分にパピラ(乳頭)があります。
顕微鏡のピントを調節するねじを回していくと、ピントの合う所が上下に移動していきます。 これを見ていると、上下関係が分かります。 そのようにして葉の背面からも腹面からも観察した結果は、パピラは葉の背面に見られ、腹面にはありませんでした。
(2015.7.15. 高槻市)
◎ こちらには無性芽をつけたカマサワゴケを、こちらには胞子体をつけたカマサワゴケを載せています。
2015-07-27
クビレケビラゴケ
写真はケビラゴケ科のクビレケビラゴケ( Radula constricta )でしょう。 円い葉の葉縁にたくさんの無性芽をつけています。
上は腹面から撮ったものです。 腹片は背片の長さのほぼ1/2で方形です。 腹葉はありません。
ケビラゴケ科は日本ではケビラゴケ属のみです。 上の写真のように、仮根が腹片の中部に束生するのは、この属の特徴の1つです。
(2015.7.15. 高槻市摂津峡)
------ (追記) -------------------------------------------------
クビレケビラゴケの葉身細胞の写真を下に追加しておきます。
(材料:2017.5.10. 高槻市出灰で採集)
◎ クビレケビラゴケはこちら(蒴あり)やこちらにも載せています。
ネジロハキリバチ
長居植物園で、もうネジロハキリバチがたくさん飛び交っていました(2015.7.25.)。
温度が高いこの時期の蜂の多くは活動的で、なかなか近寄らせてくれません。 しかしネジロハキリバチは、前伸腹節と腹部第一背板に純白の毛があり、翅の先端2/3が黒ずんでいて、離れて見ても、他の種類と間違うことはまず無いでしょう。
雌雄の違いも、メスの腹部にある刷毛は淡黄褐色ですので、離れて見ても分かるのですが、おもしろいことに気付きました。 ロシアンセージ(Perovskia属の園芸品種)に来ているのはオスばかりで(上の写真)、その近くにあるシダレエンジュの花に来ているのはメスばかりです(下の写真)。
同じ場所での過去の写真も調べてみたところ、2012年7月18日に撮った写真でも、ロシアンセージに来ているのはオスで、シダレエンジュの花に来ているのはメスでしたし、2012年7月31日に撮った写真でも、シダレエンジュの花に来ているのはメスでしたので、この偏りは偶然とは思えません。 しかしその理由は分かりません。シダレエンジュの方が花粉を集め易いのでしょうか。
ちなみに、昨年の10月4日に長居植物園で撮った写真では、もちろんこの頃はシダレエンジュの花はありませんが、メスもオスもロシアンセージに来ていました。 下はその時撮った、ロシアンセージに来ていたメスです。(これだけ近寄れているのは、気温が下がってネジロハキリバチの動きが緩慢になっていたのかな?)
温度が高いこの時期の蜂の多くは活動的で、なかなか近寄らせてくれません。 しかしネジロハキリバチは、前伸腹節と腹部第一背板に純白の毛があり、翅の先端2/3が黒ずんでいて、離れて見ても、他の種類と間違うことはまず無いでしょう。
雌雄の違いも、メスの腹部にある刷毛は淡黄褐色ですので、離れて見ても分かるのですが、おもしろいことに気付きました。 ロシアンセージ(Perovskia属の園芸品種)に来ているのはオスばかりで(上の写真)、その近くにあるシダレエンジュの花に来ているのはメスばかりです(下の写真)。
同じ場所での過去の写真も調べてみたところ、2012年7月18日に撮った写真でも、ロシアンセージに来ているのはオスで、シダレエンジュの花に来ているのはメスでしたし、2012年7月31日に撮った写真でも、シダレエンジュの花に来ているのはメスでしたので、この偏りは偶然とは思えません。 しかしその理由は分かりません。シダレエンジュの方が花粉を集め易いのでしょうか。
ちなみに、昨年の10月4日に長居植物園で撮った写真では、もちろんこの頃はシダレエンジュの花はありませんが、メスもオスもロシアンセージに来ていました。 下はその時撮った、ロシアンセージに来ていたメスです。(これだけ近寄れているのは、気温が下がってネジロハキリバチの動きが緩慢になっていたのかな?)
2015-07-26
ヒメトサカゴケ
写真はウロコゴケ科のヒメトサカゴケ( Chiloscyphus minor )でしょう。 葉は2裂しています(こちらのように、とても浅い場合もあります)が、写真の中央から左側では葉縁に無性芽がたくさんついていて、2裂していることが不明瞭になっています。
上は腹葉です。 腹葉は小さく、茎の幅とほとんど同じで、1枚目の写真では茎と重なってほとんど分かりません。
腹葉は深く2裂し、多くは上の写真のように各裂片の外側に弱い1歯を持っているのですが、下の写真のように、外側の1歯が長く伸びたり、ほとんど歯が目立たない腹葉もありました。
和名の「トサカ」つまり鶏の冠は花被の形からのようですので、今回は確認できませんでした。
(2015.6.17. 岩湧山 標高400m付近)
◎ こちらには本種の乾いた状態などを、こちらには細胞の様子などを、こちらには本種の花被とその内部の様子などを載せています。
2015-07-25
ウロコアリ
フミン酸で黒くなった凹凸の激しい木片にいたウロコアリです。 多女王性のアリで、働きアリと女王アリには大きさの差はあまりないとのことですが、女王アリには単眼があり、胸部には翅の痕跡があるようですので、写真のアリは働きアリでしょう。 働きアリは、長く伸びた大顎でトビムシ類を餌にして暮らしているようです。
アリの動きは緩やかなのですが、凹んだ所にいるのでレンズが届かず、光は回らずで、まともな写真はありませんが・・・。
(2015.7.20. 兵庫県川西市笹部)
2015-07-24
オオスギゴケ
上は岩上のオオスギゴケです。 コケ庭などにも利用されるオオスギゴケですが、このような場所も好むようです。
オオスギゴケ( Polytrichastrum formosum )は、湿っている時は上のように葉を開いていますが、乾くと下のように葉を茎に密着させます。
なお、学名は、属名はギリシャ語の poly(多い)+tricos(毛) からきており、毛のような細い葉が多いことからでしょう。 また、種小名は「美しい」という意味です。
前にコスギゴケのところで、コスギゴケの仲間( Pogonatum属)とスギゴケの仲間( Polytrichum属)では、乾いた時の葉の様子が異なることを書きました。 オオスギゴケの乾いた時の様子は、同じ属のウマスギゴケなどとよく似ています。
オオスギゴケは「大きなスギゴケ」の意味ですが、どれくらいの大きさなのか、これまでの写真では大きさが分かりにくいので、1枚の葉の長さを下に載せておきます。
上の写真の目盛は1mmですので、この葉の長さは9mmほどです。 たしかにコケ植物の1枚の葉の長さとしては長い方でしょう。
上はオオスギゴケの葉の横断面です。 スギゴケの仲間(スギゴケ科)の特徴として、葉の腹面(茎に面している側)に薄板(ラメラ)があり、この薄板の様子が分類時にも大切になることをこれまでも書いてきました。
上は葉の横断面の中肋付近と端付近の拡大です。 オオスギゴケの薄板は、高さ4~6細胞で、頂端細胞の先は円くなっています。
(2015.5.20. 滋賀県東近江市)
◎ オオスギゴケはこちらにも載せています。 またこちらにはよく育って長く伸びたオオスギゴケを載せています。
ホウライスギゴケ
ホウライスギゴケ( Pogonatum cirratum )は南方系の種で、日本での自生地は多くありません。 よ~く見ると、葉の上部の縁にも中肋背面にも鋸歯が見られます。
コスギゴケ属( Pogonatum )の多くは乾くと葉が巻縮します。 ホウライスギゴケも、コスギゴケほどではありませんが、上の写真のように巻縮します。
ちなみに、この属名 Pogonatum は、ギリシャ語の pogon(髭)を語源としています。 地面に密生する様子からでしょう。
上は葉の横断面です。 ホウライスギゴケの薄板の高さは2細胞程度です。
(2015.7.15. 高槻市 摂津峡)
◎ ホウライスギゴケはこちらにも載せています。 また、胞子体や造精器の様子はこちらに載せています。
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