2021-06-30

コケ植物の葉序

 コケ植物の葉は、特に多くの蘚類の葉は一見ランダムについているように見えます。 しかしこれらの葉もよく見ると、とても規則的に配置されています(葉序)。
 6月21日~7月4日の期間、広島大学統合生命科学研究科シンポジウムがオンラインで開催されています(こちら)。 そのプログラムの1つとして嶋村先生が動画「広島大学のコケ植物自然誌研究 〜90年のあゆみと現在〜」を公開されていますが、その中で葉序についても触れられています。
 このブログでは前に葉序についても書いていますので、動画の葉序に関する内容の一部を、ブログの記事に追記する形で紹介させていただきました(こちら)。
 

 

2021-06-29

トガリシロオビサビカミキリ

 擬木にいたカミキリ、サビカミキリの仲間は似た種類が多く難しいのですが、トガリシロオビサビカミキリ Pterolophia caudata ではないかと思います。 この仲間は動きが緩慢ですが、体を擬木の模様(汚れ?)に合わせるようにして全く動きません。 普通に横を歩いて通っても、気がつかないでしょう。
 昆虫が周囲に合わせて目立たないようにしているところによく出会います。 しかし昆虫は周囲とどのような関係の位置にいるのか、どうして分かるのか、不思議です。

 光の当て方を工夫し、マクロ撮影で背景をボカせば、くっきり写ります。 翅端は和名のとおり尖っています。 赤い矢印で示した黒い班は・・・

 赤い矢印で示した所は、上から見ると黒い斑に見える部分ですが、瘤状に隆起しています。

 かなり厚みのある体です。

(2021.6.17. 箕面の森)

2021-06-28

ウツボホコリ

 

 朽木にあった変形菌、以下の観察結果から、ウツボホコリ Arcyria denudata だと思います。 子嚢壁は子嚢の上中部では無くなって細網体が露出しており、柄に接する所に杯状体として残るのみです。

 子実体の長さは、上の写真で約3mm。 育ち方などで長さは変化しますが、これで標準的なサイズだと思います。

 上は細網体で、杯状体に強く付着していました。 細網体の糸は枝分かれし、環状~半環状~歯状の突起があります。

 上は杯状体の内面で、網状の紋があります。 丸いものは胞子で、径6~8μm、表面に数個のいぼがあり、上の写真ではそれが暗色の点として写っています。

(2021.6.24. 兵庫県西宮市 北山)

2021-06-27

ヤマトフタマタゴケの胞子体

 ヤマトフタマタゴケ Metzgeria lindbergii については、その概要をこちらに載せていますし、特に造精器やシュートカリプトラに保護された状態の胞子体などについてはこちらに載せています。
 その胞子体がシュートカリプトラから顔を出して胞子を散布していました。 本種の胞子を飛散させる期間は、次々と胞子体が成熟し、かなり長期間継続するように思いますが、今年のピークはそろそろ終わりのように思います。
 

 上の写真中央には、多くの蒴が開裂していた中で、かろうじて残っていた開裂前の蒴が写っています。 下はこの胞子体のついている葉状体を取り出して撮った写真です。

 上の写真の左下の葉状体は腹面で、たくさんの若いシュートカリプトラがついています。

 上も群落の一部を腹面から撮った写真で、たくさんの開裂した蒴が写っています。 下はそのうちの1つの顕微鏡写真です。

 蒴は4裂し、裂片の先に弾糸がついています。 下は上の右下の裂片の拡大です。

 弾糸は裂片の先の1点に集中してついているようです。

 上は弾糸と胞子です。

(2021.6.23. 堺自然ふれあいの森)

2021-06-26

ヨツボシゴミムシダマシ & 模様の似た甲虫



 樹幹にあった古いツリガネタケ(?)に、ヨツボシゴミムシダマシ Basanus erotyloides が来ていました(撮影:2021.6.17.箕面の森)。
 上翅の黒い中に横長の橙色の模様は、昨日載せたオオモンキゴミムシダマシの模様に似ています。 しかしこの模様、同じゴミムシダマシ科だから、では済まされません。 ゴミムシダマシ科の甲虫で、このような配色の模様を持っている種は、とても少数です。 そして・・・

 上はやはり硬質菌(=多孔菌)を餌にしているヒメオビオオキノコで、オオキノコムシ科に分類されています。

 上はカタモンオオキノコで、やはりオオキノコムシ科の甲虫です。

 上はハネカクシ科のヤマトデオキノコムシです。

 上はヨツボシケシキスイで、ケシキスイ科に分類されています。 樹液に来る甲虫ですが、やはりよく似ています。

 このような科を越えて似た模様を持つのには、何か理由があるのでしょうか。


2021-06-25

ツガルサルノコシカケにオオモンキゴミムシダマシ

 

 立ち枯れたアカマツの幹に大きなツガルサルノコシカケ Fomitopsis pinicola ができていました。 大きさが分かるように100円硬貨を載せてあります。
 赤い円で囲った所に虫がいて、黒く写っています。 この虫たちを接写すると・・・

 きのこを齧って穴を開けています。 模様からすると、オオモンキゴミムシダマシ Diaperis niponensis(ゴミムシダマシ科)のようです。
 きのこの裏ではうまく写真に撮れないので、下に布を広げて軽く触れると、予想通り擬死で布に落下しました。 それをきのこの上に載せて撮ったのが下の写真です。

 腹面はほとんど黒一色です。 これを背を上にしてやり、撮ったのが下です。


 脚を伸ばすのを待つことなく撮ったので、どこか不自然ですが、頭部の様子、特に触角のつくりはよく分かります。

(2021.6.17. 箕面の森)

◎ オオモンキゴミムシダマシはこちらにも載せています。


2021-06-24

ヒラフスベに来ていたルリオオキノコ

 

 朽木のきのこに黒い甲虫が来ていました。

 きのこはヒラフスベ Laetiporus versisporus だろうと思います。 このきのこは、上の写真では管孔状の部分が形成されているようですが浅く不完全です。 上の写真ではレモン色ですが、次第に褐色になり、内部が粉状になって崩れていくのが主な胞子散布の方法のようです。

 次に、甲虫ですが・・・

 最初にみつけた時は、上の写真のようにきのこによじ登って齧っていました。 じつは最初の写真は、カメラを近づけたために写真の位置で動かなくなった状態です。 これでもキノコの陰に避難しているつもりなのでしょう。 写真を撮るにはとても楽です。

 きのこに来る黒い甲虫はいろいろいるのですが、体形や触角の形状などから、写真の甲虫はオオキノコムシ科のルリオオキノコ Aulacochilus sibiricus ではないかと思います。

(2021.6.11. 兵庫県西宮市 甲山山麓)


2021-06-23

オオムラサキホコリとタマキノコムシ科の一種

 

 コナラの朽木上で、周囲に胞子をたくさん落としているムラサキホコリの一種がありました。 変形膜が目立っています。

 子嚢は褐色系で、柄は黒く子実体の高さの 1/5前後です。

 上のように子嚢の先端がくっついている所もありました。

 上は胞子がほとんど出てしまい、表面網をとおして子嚢の内部の軸柱が見えています。 軸柱は子嚢の先端近くまであるようです。
 以上の特徴から、写真のムラサキホコリはオオムラサキホコリ Stemonitis splendens だろうと思います。
 このムラサキホコリに下のような甲虫がいました。 胞子を食べに来ているようです。

 タマキノコムシ科の一種だと思いますが、胞子まみれで特徴がよくわかりません。 カメラを向けるとゴソゴソと子嚢の間に潜り込んでしまいました。

(2021.6.11. 兵庫県西宮市 甲山山麓)

こちらではオオムラサキホコリの細網体や胞子などを顕微鏡で観察しています。


2021-06-22

ベニエキンシゴケ

 

 昨日載せた(こちら)、胞子体にスジクワガタが来ていたベニエキンシゴケ Ditrichum rhynchostegium です。

 蒴柄は長いのですが、茎の長さは1cmに達せず、葉は針状に伸び、長さは2~4mmです。

 上は葉の上部で、中肋が幅の大部分を占めています。

 上は葉の下部で、中肋は葉の幅の1/2~1/3ほどです。 葉縁は反曲していません。

 葉身細胞の長さは 15~30μmです(上の写真)。 細胞の縦の壁にくびれは見られません。

 蒴はやや傾き、長さ3~4mm、蒴柄は、写真には載せていませんが、3~4cmでした。

 蒴歯は線状で・・・

 蒴歯は基部で2裂し、細かいパピラで覆われています(上の写真)。

 胞子は径 12~17μmで、表面にはヒヒ割れ状の模様があります(上の写真)。

 上は蒴をつけた植物体で、雌包葉の様子を見るために多くの葉を下げ下ろしています。 蒴をつけた植物体の葉はほとんど緑色を失っていました。 雌包葉の鞘部は長く、蒴柄を抱いています。

(2021.6.17. 箕面の森)

こちらにはベニエキンシゴケの葉の横断面などを載せています。

2021-06-21

スジクワガタがコケの胞子を食べる?

 


 ベニエキンシゴケの胞子体にスジクワガタがいるのをみつけました。 遠目にはじっとしているように見えましたが、カメラを向けるとゴソゴソと逃げ出しました。 蒴に齧られた跡はみつけられませんでしたが、蒴がなくなり、蒴柄だけになっている胞子体は散見されました。 胞子を食べに来ていたのかもしれません。
 なお、いた場所の上に木は無く、スジクワガタが木から落ちてそこにいたとは思えません。

(2021.6.17. 箕面の森)

※ ベニエキンシゴケについては、こちらに載せています。

2021-06-20

マルサカズキホコリ



  枯葉の上で育っていた変形菌、マルサカズキホコリ Craterium leucocephalum var. scyphoides ではないかと思います。 学名で分かるように、シロサカズキホコリの変種とされていますが、別種とする見解も出ているようです。
 上は 2015.6.17.に河内長野市の烏帽子形公園で撮った写真ですが、コケを優先させてブログに載せていて、同定にも自信が無いことなどから、まだブログに登場させていませんでした。