2017-01-31
銀色のギンゴケ
擬木の上で、上のようなまっ白なコケをみつけました。
上のように背景を黒くすると、一層白さが引き立ちます。
白いコケで真っ先に思い浮かぶのはシモフリゴケですが、みつけたのは奈良市の標高170mほどの場所で、高山に生えるシモフリゴケがあるはずもありません。 持ち帰って葉を調べると・・・
見覚えのあるギンゴケ Bryum argenteum の葉でした。 葉の基部には葉緑体がありますが、この部分はその上を覆う葉によって隠され、外からは見えません。
ギンゴケにとっての厳しい環境下では、ここまで白くなるんですね。
(2017.1.15. 奈良市白毫寺町)
◎ 緑色をしたギンゴケはこちらに載せています。
2017-01-30
コシジロウミツバメ
上はコシジロウミツバメ Oceanodroma leucorhoa です。 弱って飛べなくなってU動物病院に保護されていた個体を見せていただきました(2017.1.28.)。
和名に「ツバメ」とついていますが、スズメ目ツバメ科のツバメに対してコシジロウミツバメはミズナギドリ目ウミツバメ科で、系統的にはかなり離れています。 これらの仲間は嘴の基部の上に「管鼻」という器官を持っていて(上の写真)、この器官で海水からの余分な塩分をこしとるようです。
和名の「コシジロ」は尾羽上面を被う羽毛が白しところからです。 この白色部の正中線上には、上の写真のように黒い縦縞が見られる場合が多いとのことです。
コシジロウミツバメは海洋で暮らし、夏に千島列島などで繁殖します。 北海道厚岸町の大黒島はこれらの鳥の繁殖地として国の天然記念物に指定されています。
たぶん発達した低気圧に巻き込まれて来たのでしょうが、このような鳥が大阪府下で見つかるとは驚きです。
2017-01-29
2017-01-27
ヨツボシテントウダマシ
写真は樹皮の割れ目で越冬していたテントウダマシ科のヨツボシテントウダマシ Ancylopus pictus です。 餌は菌類だと言われています。 春から秋にかけての活動的な季節よりも、冬に石などの下で越冬しているのがよく見つかります。
(2017.1.21. 堺自然ふれあいの森)
2017-01-26
カンハタケゴケの群落
昨年みつけたカンハタケゴケ(こちら)が今年は大きな群落を形成していました。 上はその群落の一部です。
カンハタケゴケなどのウキゴケ科の胞子体は葉状体の中で成熟し、葉状体が腐ることで胞子が外に出ます。 カンハタケゴケなどの場合は、胞子が拡散されるのは耕されて土が移動することによるのでしょう。
上はカンハタケゴケの葉状体背面の接写です。 カンハタケゴケの背面には1~2細胞からなる突起が密生していて、拡大すると凸凹しています。
上に書いたようにカンハタケゴケの胞子体は葉状体の中で成熟し、2枚目の写真でもそれがうっすらと黒っぽく見えています。 前回はこの胞子体の断面を載せましたが、今回はカミソリの刃で切断するのではなく、葉状体を折って胞子体の表面を出してみました(上の写真)。
いくつか葉状体の組織に囲まれた胞子体を見ていると、未熟でまだ黒ずんでいない胞子体も出てきました。 それが下の写真で、うっすらと未熟な胞子も見えています。
(2017.1.11. 堺自然ふれあいの森)
2017-01-22
ヤママユの繭と卵
ヤママユは卵で越冬し、春に孵化した幼虫はクヌギ、コナラ、クリ、カシなどのブナ科の葉を食べて成長して繭を作り、8~9月頃に羽化します。 成虫のメスはこちらに、オスはこちらに載せていますが、メスは交尾後に幼虫の食餌植物となる木の枝に卵を産みつけ、一生を終えます。
繭は葉でカムフラージュされ、葉の茂っているうちは見つけにくかったのですが、今の時期はよく分かります。 もちろん成虫が出た後の空の繭ですが・・・。
上がその繭で、クリの木にありました。 右上に繭を破って成虫が出た跡があります。
そして上がコナラの枝に産み付けられたヤママユの卵です。
(2017.1.21. 堺自然ふれあいの森)
◎ ヤママユの幼虫はこちらに載せています。
繭は葉でカムフラージュされ、葉の茂っているうちは見つけにくかったのですが、今の時期はよく分かります。 もちろん成虫が出た後の空の繭ですが・・・。
上がその繭で、クリの木にありました。 右上に繭を破って成虫が出た跡があります。
そして上がコナラの枝に産み付けられたヤママユの卵です。
(2017.1.21. 堺自然ふれあいの森)
◎ ヤママユの幼虫はこちらに載せています。
2017-01-20
ケチャタテの一種の幼虫
ミカンの葉にいたケチャタテの一種の幼虫です。 体長は2mmでした。 前や横からも撮りたかったのですが、この大きさで動き回られると、私の技術では上からしか撮れません。 で、本日の写真は1枚のみです。
眼も体の色も黄色いケチャタテは複数種いるようですし、翅脈の分からない幼虫では種名の調べようもありません。 ただ、翅がかなり長くなっていますので、成虫もそんなに大きな種ではなさそうです。
(2017.1.19. 長居公園)
2017-01-19
ハネヒツジゴケ?
帷子雪に見え隠れする写真のコケ、以下の観察結果からはハネヒツジゴケ Brachythecium plumosum のように思えるのですが、アオギヌゴケ属は似た種が多く、特にハネヒツジゴケは変異が著しいようで、こちらとも葉形が異なっていて、同定には自信が持てません。
蒴柄の上部にのみパピラがあるようですが、顕微鏡では撮影できず、はっきりしません。 上は乾いた状態で、下は湿った状態です。 撮影倍率はほぼ同じにしています。
湿った状態でも、葉はそんなに開きません。 不規則に多くの枝が出ています。
湿った状態でもう少し拡大してみました(上の写真)。
葉は縦じわが少しあり、葉先は漸尖しています。 中肋は葉長の2/3くらいで終わっていますが、終わりははっきりしません。 葉縁はほぼ全縁です。
上は葉の中央部の葉身細胞です。
翼部の細胞はほぼ方形~矩形です。
(2017.1.15. 奈良市登大路町)
2017-01-18
ヒノキバヤドリギ
上はツバキの枝についていたヒノキバヤドリギ Korthalsella japonica です。 上の写真では耐寒性を高めるためか赤褐色になっていますが、今の時期でも風当たりの弱い所では緑色で、自身で光合成を行い、宿主の組織内にも根を伸ばす半寄生の常緑小低木です。 葉は退化していて、光合成は扁平になった茎で行っています。
雌雄同株で、枝の節に咲く花は、3枚の花被片が合着しています。 今は花の少ない時期のようですが、上は、雄花なら花被片がもう少し深く3裂しているはずで、3本のオシベらしきものも見当たらず、雌花(の咲き終わったところ)ではないかと思います。 そして・・・
上が果実で、大きさは2mmほどしかありません。 果実の横にも雌花があります。
果実は熟すと自ら破裂するようです。 果実のついた枝を1晩水に漬けておくと、上のようになりました。 熟すと、水を吸って膨れた果肉によって、もろくなっていた果皮が破れ、果肉に包まれた種子が放出されるように思います。
1つの果実の中には果肉に包まれた1つの種子が入っています。 上は種子と果肉をピンセットで分けようとしたところですが、写真でも糸を引いているように、果肉には粘着性があります。
ヒノキバヤドリギの扁平な枝の上に上の写真のうなものがありました。 種子が枝にくっつき、そこで根を出したようです。 種子にまとわりついている薄い膜状のものは果肉が乾いたものでしょう。 このように果肉は、その粘性で種子を枝にくっつけ、その後は乾いて種子の根が出るまで固定するのでしょう。
同種の枝に寄生しては意味がないと思うのですが、このような種子はあちこちで見られました。 下の写真は別の種子ですが、乾いた果肉の多くをピンセットで取り除き、横から撮ったものです。
ヒノキバヤドリギのことを検索して調べてみると、アリが種子散布に関係しているとあちこちに書かれています。 ネバネバの衣をまとった種子がどのようにして他の木に運ばれるのか、果皮が破れた勢いだけで種子が遠くにまで飛ぶものなのか疑問は残るのですが、上に書いたような果肉の特性を考えると、アリが木から木へとヒノキバヤドリギの種子を運ぶとは、私には考えられません。
枝の維管束も奇妙な並び方をしています。 上は枝の断面で、白っぽく見えているのが維管束ですが、あちこち断面を作って調べても、いつも2つの維管束が写真のように向かい合って並んでいます。 維管束が2つというのも奇妙ですが、なぜ幅の広い方向に並ばないのかも不思議です。 顕微鏡で確認すると師管が外側に、道管が内側にあって、これは納得できるのですが・・・。
(2017.1.15. 奈良市白毫寺町)
2017-01-17
ミカドテントウ
イチイガシの葉の裏にいたミカドテントウ Chilocorus mikado です。 体長は4mmでした。 頭部をすくめて真っ黒で、写真で拡大すると翅の縁なども確認できるのですが、はじめはルーペで見てもどちらが頭か分からないほど。 上の写真では葉の主脈に頭を接しています。
持ち帰って暖かい室内に置くと歩きだしました。
裏も観察。うまく足を収納するスペースがあるようです。
ミカドテントウはイチイガシに特異的につくテントウムシで、夏季には木の高い所に分散しているのか、冬季の方が見つけ易いようです。
和名の「ミカド」は何を意味するのか、「帝」なのか地名なのか人名なのか、いろいろ考えられますが、調べても分かりませんでした。
(2017.1.15. 奈良市高畑町)
2017-01-16
イヌマキ(胎生種子のことなど)
イヌマキ Podocarpus macrophyllus は関東以南の比較的暖かい地域に見られる雌雄異株の常緑樹で、葉は尖っていませんが、マツ目に分類される針葉樹です。 大気汚染や潮風にも強く、防風林や生け垣として人気があります。 また、枝を伸ばす力が強く、様々な樹形に仕立てあげ易いことから庭木としても人気があります。 尤も生け垣や大きな庭木を植えている庭自体が少なくなってきていますが・・・。
花は5~6月頃に咲き、雌株には種子が形成されていきますが(裸子植物なので果実ではありません)、その柄の一部(「花床」と呼ばれています)が膨らみ、下の写真のように赤くなっていきます。
上は11月上旬の撮影で、写真的にはいちばん美しい時期ですが、もう少し経つと花床は赤黒くなり、美味しく食べることができます。 もちろんイヌマキは人に食べてもらうのが目的ではなく、鳥に食べてもらい、その際に種子散布をしてもらうのがねらいでしょう。
木によっては、樹上に残った種子が発芽を開始することがあります。 この状態は、母樹からの栄養補給を受けながら育っているという意味で、「胎生種子」と呼ばれています。
上がその胎生種子です。 種子の中の胚が生長を始め、種皮の外へ幼根が伸び出しています。 花床は干乾び始めていて、イヌマキの胎生種子は花床に蓄えていた栄養分を使って発芽しているのかもしれません。 いくつかのイヌマキの胎生種子を見た印象では、花床が干乾びているほど、立派な幼根を出しているように思いました。
胎生種子が見られる植物としてはオヒルギがよく知られていて、これはマングローブ林という特殊な環境における適応と考えることができますが、イヌマキの胎生種子はどのような意義があるのでしょうね。
上は、分かり易いように周囲の葉を取り除いて撮ったイヌマキの胎生種子です。 たぶん種子の中に残っている子葉で栄養分を吸収し、その栄養分で幼根が伸び出しているのでしょう。
種子の断面を作ってみたのが上です。 断面作成時に子葉の一部が取れてしまったのですが、その下にもう1枚子葉があるのが見えます。
撮影データ
1枚目:2005.11.5. 大阪府和泉市
2~4枚目:2017.1.15. 奈良市および採集品を自宅で撮影
花は5~6月頃に咲き、雌株には種子が形成されていきますが(裸子植物なので果実ではありません)、その柄の一部(「花床」と呼ばれています)が膨らみ、下の写真のように赤くなっていきます。
上は11月上旬の撮影で、写真的にはいちばん美しい時期ですが、もう少し経つと花床は赤黒くなり、美味しく食べることができます。 もちろんイヌマキは人に食べてもらうのが目的ではなく、鳥に食べてもらい、その際に種子散布をしてもらうのがねらいでしょう。
木によっては、樹上に残った種子が発芽を開始することがあります。 この状態は、母樹からの栄養補給を受けながら育っているという意味で、「胎生種子」と呼ばれています。
上がその胎生種子です。 種子の中の胚が生長を始め、種皮の外へ幼根が伸び出しています。 花床は干乾び始めていて、イヌマキの胎生種子は花床に蓄えていた栄養分を使って発芽しているのかもしれません。 いくつかのイヌマキの胎生種子を見た印象では、花床が干乾びているほど、立派な幼根を出しているように思いました。
胎生種子が見られる植物としてはオヒルギがよく知られていて、これはマングローブ林という特殊な環境における適応と考えることができますが、イヌマキの胎生種子はどのような意義があるのでしょうね。
上は、分かり易いように周囲の葉を取り除いて撮ったイヌマキの胎生種子です。 たぶん種子の中に残っている子葉で栄養分を吸収し、その栄養分で幼根が伸び出しているのでしょう。
種子の断面を作ってみたのが上です。 断面作成時に子葉の一部が取れてしまったのですが、その下にもう1枚子葉があるのが見えます。
撮影データ
1枚目:2005.11.5. 大阪府和泉市
2~4枚目:2017.1.15. 奈良市および採集品を自宅で撮影
2017-01-14
トゲトビムシ科の一種
上は昨日載せたキャラボクゴケに潜んでいたトゲトビムシ科の一種です。 体表は鱗に覆われています。 鱗の厚さが薄いために上の写真ではほとんどその存在は分かりませんが、光の当たり具合で所々鱗が光を反射しています。
上は死にかけている個体(元気のいいものではジャンプされてこんな写真は撮れません)を腹面から撮っています。 下にある目盛の最小単位は0.1mmで、体長は2mmほどです。 トゲトビムシ科のトビムシは3~4mmの大型種が多い(こちらには体長6mmのトゲトビムシ科の一種を載せています)ので、トゲトビムシ科としては小型の種です。 また、トゲトビムシ科の触角はトビムシ全体の中では長い方で、体長の半分からそれ以上の長さがありますから、写真のトビムシの触角はトゲトビムシ科の中では短い方になります。
トビムシも六脚類で、胸部は昆虫と同じように3節からなり、それぞれの節から1対の肢が出ています。 上の写真で肢と胸部の節とを対比して見ていくと、胸部第1節は退化的で細く、首状になっています。 これもトゲトビムシ科の特徴です。 各肢の先端には主爪と副爪の2本の爪が見えます。
眼にはピントが合っておらず、上の写真からはよく分かりませんが、左右それぞれ6個の小眼からなっています。
触角は4節に分かれますが、そのうちの第3節と第4節はさらに環状に小分節しています。
腹面から見ると、6本の肢で抱え込まれるように、体の長さの半分ほどある跳躍器が腹面に見えます。 トビムシはこの跳躍器を地面に叩きつけてジャンプするのですが、トゲトビムシ科の跳躍器は、トビムシ全体の中でも特によく発達しているようです。 トゲトビムシ科の跳躍器には棘が並んでいます(上の写真では毛のようにも見えますが、立派な棘です)。 科の名の由来はこの棘によるようです。
(2017.1.12. 堺市南区 フォレストガーデン)
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