2022-04-29

トゲヒゲトラカミキリ

 擬木に交尾中のトゲヒゲトラカミキリ Demonax transilis がいました。 メスの中脚と後脚はオスの前脚と中脚と絡み合っていて、互いに離れないようにしているようです。

 見ていると擬木の凹みにこだわっているようでした。 擬木を本物の木と間違えて樹皮の隙間に産卵しようとしているのかもしれません。

 和名の「トラ」は胸部が膨れたカミキリのグループにつけられた名前で、横縞模様のものがいるからですが、「トゲヒゲ」は触角の3~5節が角張り、トゲ状に張り出すことがあるからのようです。

(2022.4.29. 箕面公園)

◎ トゲヒゲトラカミキリはこちらにも載せています。


2022-04-28

ヒメアギスミレ

 ヒメアギスミレ Viola verecunda var. subaequiloba、ニョイスミレ(別名ツボスミレ)の変種で、葉はブーメラン形になります。
 茎が地表を這い、途中から根を出すのが特徴で、中部地方以北の湿地に多いアギスミレに対し、愛知県以西の湿地に分布します。

(2022.4.23. 箕面公園)

2022-04-25

コスギゴケの精子放出

  コスギゴケ雄株が精子を放出する様子を動画にまとめました。


 (2022.4.23. 箕面公園)

◎ コスギゴケの全般的なことはこちらに載せています。


2022-04-24

ホットリップス

 情熱的な唇、京都府立植物園の温室で見た Psychotria poeppigiana(サイコトリア・ペピギアナ)です。 アカネ科の常緑低木で、メキシコ~アルゼンチンの原産です。 植物園では「ホットリップス」の通称が使われ、実際に英名でも「Hot Lips」と呼ばれているようですが、「口内炎」という名もあるようです。

 この赤く見えるのは苞葉で、赤い色は鳥が好む色、ハチドリの仲間を呼んでいるのでしょうか。

 どんな花が咲くのか、調べてみると、Wikimedia Commons に花の写真がありました。 上はそこからお借りしたものを1枚目に合わせてトリミング等の処理をした写真です。 アカネ科らしい形の黄色い花ですね。

2022-04-22

Bulbophyllum falcatum(ブルボフィルム ファルカツム)

 

 上は京都府立植物園の温室にあった、私が関心を持ったランで、ラベルを見ると、Bulbophyllum falcatum とありました。
 関心を持った理由は後に書くとして、Bulbophyllumはラン科最大の属で、東南アジアを中心に、ほとんど全世界の熱帯~温帯に広く分布しています。 日本にもマメヅタランやムギランなどが分布していて、マメヅタラン属という属名が与えられています。
 少し調べてみると、Bulbophyllum falcatum は、シエラレオネからコンゴ、ウガンダ西部までの熱帯アフリカに分布しているようです。


 花茎は長さ10cmほどで、翼状になっていて、その両側に高さ1cmあまりの花が1列に10〜15個並んでいます。

 側ガク片は濃い赤色で、背ガク片は黄色く視覚的に最も目立っていて、上半が太くなっています。 花弁は極めて小さく、糸状です。

 花の形もおもしろいのですが、ラン科の花は多様性に富んでいて、そんなに驚きはありません。 私が関心を持ったのは花の向きです。
 花は全て花茎の方を向いていて、外側を向いていません。 つまり花粉媒介者は飛来する昆虫などでは無さそうです。 花粉媒介者は花茎を伝って歩いてくるのでしょうか?
 ネットで調べると、育て方などについてはいろいろ書かれてあるのですが、花粉媒介については情報を得ることができませんでした。 どんな生物が花粉を媒介しているのか、興味津々です。

2022-04-21

コメバギボウシゴケ

 赤い小さな蒴を点々とつけている写真のコケ、コメバギボウシゴケ Schistidium liliputanum だと思います。 コンクリート製の擬木の上で育っていました。
 前に載せたもの(こちら)は、ほぼ同じ時期ですが暗赤褐色で、今回は暗緑色です。 平凡社によれば、日当たりの良い場所のものは前者のような色に、やや日陰のものは今回のような色になるようです。

 蓋が取れそうになっている蒴がありました(上の写真)。 下で見るように、この蓋には帽が密着しているようです。 本種の属するシズミギボウシゴケ属の蒴は、その名のとおり、雌苞葉に沈んでいます。 雌苞葉の葉先は長い透明尖になっています。

 上は蓋が取れたところです。 蓋は帽に覆われています。 軸柱が蓋にくっついて脱落するのはこの属の特徴です。 蒴歯の何本かは雌苞葉に隠されていますが、蒴歯は単列で16本です。

 蒴歯の表面は微小なパピラで覆われています(上の写真)。

 上は蒴壁の表皮細胞で、短い縦長の矩形に少し横長の細胞が混じっていました。

 葉は狭披針形です。 葉先の透明尖は上のようにほとんど分からないものもありますが・・・

 拡大すると、短いながらも透明尖が見られます。 葉縁はほぼ全縁ですが、上の写真のように葉先に低い鋸歯が出ることもあります。

 葉の基部の細胞は縦長で、横壁は縦壁より厚くなっています。

 上は葉身細胞です。

 上は茎の断面で、中心束はありません。

(2022.3.28. 箕面公園)

2022-04-19

ヒメヤナギゴケ

 3月26日に高槻市の「あくあぴあ芥川」でコケの観察会があり(こちら)、その時、上の写真のように、水の溜まる容器の縁にびっしりと生えているコケがありました。

 配偶体は密に絡み合っていて、たくさんの胞子体をつけていました(上の写真)。 葉をルーペで見ると1本の中肋が葉の中部以上に達しているのが確認できたので、アオギヌゴケの仲間だろうとしておいたのですが、少し持ち帰り、調べてみました。


 茎は這い、多くの枝を上方に出しています。 蒴柄は平滑で長さは3~3.5cmでした。


 上は茎葉です。 葉先は細長く、尖っています。

 上は茎葉の基部です。 翼部は方形~短い矩形の小形の細胞がやや明瞭な区画をつくっています。

 上は葉身細胞です。


 上は枝葉(たくさん胞子がついてしまいました・・・)と、その基部です。

 以上のような観察結果を基に、アオギヌゴケ属だろうとあたりをつけて平凡社の検索表で調べたのですが、それらしいコケに行き当たりません。 あきらめて西村先生に標本を送り、同定をお願いしました。
 標本郵送後、水分の多い所に育っていたこと、葉先がやや急に細くなって長く伸びていること、葉身細胞の様子がアオギヌゴケ属らしくないことなどから、ヤナギゴケ科ではないかと気づきましたが、同定していただいた結果も、やはりヤナギゴケ科のヒメヤナギゴケ Amblystegium serpens だろうということでした。 その時、このコケの葉身細胞の形は Cratoneuron(シャグマゴケ属)にも近いが、この属は雌雄異株で、標本のものは雌雄同株(異包)だとお聞きしました。 雄器の存在には気づいてなかったので、探してみました。

 上は胞子体のついている茎(これをSとします)です。 胞子体は黄色い矢印の所から写真手前に伸びてきていて、ピントは合っていませんが、画面中央にぼんやり蒴が写っています。
 下は上の赤い四角で囲った所の拡大です。

 上の写真のあちこちに丸い芽のようなものが見られます(分かり易い所を赤い円で囲いました)。 これを顕微鏡で観察すると・・・

 芽のように見えたのは雄苞葉で、中には役割を終えた造精器がありました(上の写真)。 つまりAの茎の矢印の所には胞子体の元になった造卵器があり、同じ茎の別の枝には造精器があったことになります。

2022-04-18

トサホラゴケモドキの胞子散布

 いろいろなコケに混じって、トサホラゴケモドキ Calypogeia tosana が胞子を散布していました。 上の写真には、本種の配偶体と胞子を飛ばし終えた蒴が写っていますが、周囲にはまだ胞子を飛ばしていない胞子体もたくさん見られました。

 上は本種を背面から撮っています。 葉は重なり、先端に小さな2歯があります。 葉の背縁基部は茎との付着線よりも反対側へ大きくは張り出していません。

 上は腹面から枝分かれの様子を撮っています。 ほとんどの分枝は腹面から(ムチゴケ型)でした。

 腹葉は幅が茎径の約2倍で、基部近くまで2裂し、裂片はしばしば上の写真のように2裂します。 腹葉の両縁基部は細胞がほぼ正方形で、下延しません。

 胞子体はマルスピウムから伸び出しています。 上の写真は胞子散布の後で、蒴柄も配偶体もぐったりしていますが、もう少し早い時期の胞子体がマルスピウムから出ている様子をこちらに載せています。 なお、マルスピウムの解説はこちらに載せています。

 胞子散布の様子を上の動画にまとめてみました。 蒴は螺旋状に裂けます。

 上は胞子散布を終えた蒴です。 蒴の裂片も螺旋状にねじれています。

 上は胞子と弾糸です。

(2022.4.17. 槇尾山)

2022-04-16

ホソバミズゼニゴケの蒴の変化

 ホソバミズゼニゴケ Apopellia endiviifolia の開裂した蒴の様子や胞子・弾糸については既にこちらに載せていますが、この春には蒴柄が伸びだすところから蒴の開裂までの変化を記録することができましたので、改めて載せておくことにします。

 3月17日、箕面公園の一角で蒴柄が伸びだしていました。 冬の寒さで葉状体は紅紫色を帯びていますが、赤褐色の雌包膜が目を引きます。 雌包膜は円筒形で、先端は鋸歯状になっています。
 下の4枚は上と同じ場所で、3月28日に撮った写真です。

 3月28日、蒴柄は長く伸びていて、多くの蒴が開裂していました。 若い蒴は写真右上のように黒っぽい色をしていますが、成熟すると写真中央下のような緑褐色になってきます。 この色は、蒴壁や、内部の弾糸、胞子などの色が透けて見えているのでしょう。

 蒴柄が裂けたばかりの時は緑色をした胞子の色がめだっていますが・・・

 胞子の飛散が進むにつれて次第に弾糸が目立つようになり・・・

 ついには上の写真のように弾糸だけになります。 本種の弾糸は胞子と共に飛散することもなく、蒴壁にくっついているのでもなく、短い弾糸柄の先についています。 蒴壁は4裂しています。

 ほんの少し離れた所には、上の写真のようにほとんど開裂した蒴ばかりの群落もありました。

2022-04-14

ホソバトジクチゴケ

 

 上は3月26日に高槻市の「あくあぴあ芥川」で開催されたコケ観察会で撮った写真です。 左下にはワラジムシの仲間(オカダンゴムシ?)が写っているので、おおよその大きさは分かると思います。
 まだほとんどの蒴は若くて帽があり、この状態での同定は難しいので、参加の皆さんにはコゴケの一種(Weissia sp.)としておきました。 少し持ち帰り育てていたところ、今日(4月14日)蓋が取れて胞子を出している蒴をみつけ、調べ直してみたところ、平凡社の検索表に従えば、ホソバトジクチゴケ Weissia edentula のようです。

 胞子体には長い蒴柄があり、葉は狭披針形で鋭頭です。 下は上の一部の拡大ですが・・・

 葉の中上部の縁は内曲しています。

 葉は乾くと上の写真のように縮れます。

 中肋は葉の基部で葉の幅の1/5ほど、葉の基部の細胞は大きく透明です(上の写真)。

 葉身細胞はマミラ状で、数個のパピラがあります(上の写真)。

 上は帽の取れた蒴ですが、蓋には長い角があります。

 上は蓋の取れた蒴(左)と帽のある蒴(右)です。 蓋の取れた蒴を見ると、蒴歯は無いようです。


 上の2枚は、蒴口付近を、上は蒴の外側から、下は蒴の内側から撮った顕微鏡写真です。 口環はありますが、やはり蒴歯はありません。

 上は胞子です。 原糸体を伸ばしはじめている胞子が1つありました。

こちらには、上より2週間ほど早く、まだ蒴が緑色の時期の本種を載せています。