上は北海道の支笏湖近くの美笛峠で泉田氏が2023.8.29.に撮影されたコケですが、このコケを送っていただき、調べたところ、ハイヒバゴケ Hypnum cupressiforme のようでした。
平凡社では、本種は岩上や木の根元に生えるとありますが、上の写真では根元ではありません。 しかし Wikipedia によると、本種は世界的な非常に広い分布を持つコケ植物で、生息環境なども多岐に渡るが、通常は木の幹や丸太、壁、岩、その他の表面などで生育するとあります。
茎は這い、不規則な羽状に分枝しますが、変異が非常に大きい種で、これまでに載せたこちらやこちらなどと比較しても、分枝の様子や葉先の曲がりぐあいなどで、かなり肉眼~ルーペレベルの印象が異なるように思います。
葉は卵形の葉身部から急にまたは次第に細くなり、葉先は鎌状に曲がるかまっすぐ、翼部は暗緑色~褐色の明瞭な区画をつくっています。 また、上の写真の右側の葉のように、下部でしばしば反曲します。
翼部には方形の細胞が多数見られ、縁に沿っては6~15個が並びます。
上は葉先です。 葉先に限らず、葉縁はほぼ全縁か、わずかに目立たない歯があります。
葉身細胞は線形で、長さ40~60μm、幅3~5μmです(上の写真)。
偽毛葉は糸状です(上の写真)。
上は茎の断面です。 茎の表皮細胞は分化していません。
上は蒴です(泉田氏撮影)。 蒴はやや傾いてつき、円筒形で少し曲がっています。
上は雌苞葉です。 近縁の何種類かには雌苞葉に縦じわがあるのですが、本種の雌苞葉は披針形でしわはありません。