下は Part1からの引っ越し記事で、2013.8.27.に堺市岩室で撮影し、同年9月3日の記事にしていたものです。
クスノキの葉の裏で、羽化したばかりのクスグンバイをみつけました。 白い体と赤い眼が印象的です。 上の写真の下側には終齢幼虫の脱皮殻も写っています。
グンバイムシは体の形が軍配に似ていて木の葉などから吸汁する小さな昆虫のグループで、クスグンバイ Stephanitis fasciicarina はクスノキやタブノキなどのクスノキ科の葉から吸汁します。
下は羽化から時間が経過した本来の色のクスグンバイです。
美しさはともかくとして、立体的な体のつくりは、これくらいの色がついている方がよく分かりますね。
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連日の猛暑が続く大阪を離れ、明日から避暑に出かけますので( → こちら)、ブログはしばらく休みます。
2020-08-29
2020-08-28
オオセンチコガネの色彩変異
上はオオセンチコガネ Phelotrupes auratus です。 必死に落ち葉の下に逃げ込もうとするオオセンチコガネと、落ち葉を取り除いて撮ろうとするいたちごっこでした。
オオセンチコガネは獣糞や動物の死がいを餌にするいわゆる糞虫です。 上は兵庫県佐用町で 2020.8.4.に撮影した写真ですが、本種は地域によって体の色に違いがあり、紀伊半島~奈良に生息するものは青味が強く、近畿中央部には緑色が多く、それ以外の場所では赤色が多い傾向があるようです。
上は 2020.7.8.に箕面公園で撮影したもので、赤色に緑色が混じってきています。 また、大阪府北部の三草山で撮影したもう少し緑色のはっきりしたものはこちらに、奈良公園で撮影した青い色をしたものをこちらに載せています。
昨年、日本の自然と文化の関わりを伝えるシリーズ展示「Where Culture Meets Nature」が京都で開催され、そこでは下のようなオオセンチコガネの色彩変異も展示されていました。
2020-08-27
このコケは?
上は湿った状態の、岩についていたラセンゴケ Herpetineuron toccoae です(撮影:2017.11.8.武田尾)。
上は乾いた状態のラセンゴケで(2020.5.1.奈良市)、葉は茎に接しています。
上も乾いた状態のラセンゴケで(2020.5.1.奈良市)、樹幹についていました。
ラセンゴケは1枚目の写真のように、二次茎につく葉が先端に向かうにつれて次第に小さくなり、ついには二次茎の先端が鞭状に伸びることもしばしばあり、また3枚目の写真のように、乾いた状態ではしばしば二次茎が犬の巻き尾のように(または「?」の文字のように)曲がるという特徴があり、ルーペでも比較的見分け易い種です。 そのうえ葉を顕微鏡で観察すると、下の写真(2枚目の写真の葉です)のように、中肋が葉先近くでうねうねと左右に揺れ(和名はこのことに由来)、細胞の配列も特殊で、数個の細胞がまとまりをもって,平行四辺形のように見える区画をつくっていて、同定間違いが少ない種でしょう。
以上のようにすぐに同定できるので、普段はあまり一次茎のことは気にしませんが、1枚目~3枚目の写真は二次茎で・・・
上の写真のように二次茎は基物上を這う一次茎から出ています。
◎ ラセンゴケについてはこちらにも載せています。
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ところで・・・
上のようなコケがありました(2020.8.4.兵庫県佐用町)。
上は育っていた場所の様子で、湿岩の上をヒメシノブゴケと絡み合って垂れ下がっていました。
上の4枚は葉の様子です。
種名の見当がつかなかったので、コケに関心のある者が集うコケサロン(最近はCOVID-19の影響でZoomを使って実施しています)で写真を見ていただいたところ、K氏からラセンゴケではないかと言っていただきました。
改めて葉を見ると、基部からあまり幅の変わらない中肋が、葉の上部でわずかですが揺らいでいます。 また葉の上部の規則的とは言えない鋸歯もラセンゴケににています。
また、平凡社の図鑑を見ると「(ラセンゴケの)二次茎は長さ数mmから5cmと変異が大きく(以下略)」と書かれています。
普段見るラセンゴケの姿とはずいぶん違うのですが、一次茎がよく伸びて二次茎が伸びていないラセンゴケだと思いました。
このことをSNSに載せたところ、秋山先生からコメントをいただきました。 先生によると、 葉がわずかだが舟形にくぼんでいること、葉先に明瞭な重鋸歯がでること、葉細胞が短い卵形であること、葉翼部の細胞が矩形であること、平行四辺形の区画をつくらないことなどから考えると、Thamnobryum(オオトラノオゴケ属)の1種だろうということでした。 この属は整理が進んでいないので、種名まではわからないということです。
先生、ありがとうございました。
2020-08-25
サガリバナ
大阪市の「咲くやこの花館」や京都府立植物園などで撮った写真を使い、サガリバナについて書いてみました。
サガリバナ Barringtonia racemosa は熱帯アフリカから太平洋諸島にかけて分布する常緑高木で、日本では奄美大島以南の西南諸島に自生しています。
昼間には多くの場合、上のような長い花序を垂らした姿しか見ることができませんが、夏の夜にはたくさんの花が連日次々と咲き、周囲を芳香で満たします。 花の色は木により白とピンクがあるのですが、夜の暗闇の中に浮かび上がる白っぽい大きなたくさんの花は、なかなか見ごたえのあるもののようです。(夜に虫に来てもらうためには、においと暗闇で目立つ白さが有効です。)
上は咲き残りの花ですが、多くの花は翌日の朝にはメシベを残して散ってしまいます。 しかし、自生地は川べりで、早朝にたくさんの落花が芳香を残しながら川面いちめんに漂う様子はすばらしいようで、西表島などではカヌーでその様子を見に行くツアーも行われているほどです。
上は、植物園で撮った写真ですので、ほんの数輪ですが、水に浮かぶ落花です。
上の写真の左奥の花序は、上半分は咲いた後で、下半分はツボミです。 そして右側の褐色の卵形のものが果実です。 果実は右上隅にも写っています。 この果実は水に浮き、水の流れによって運ばれ、分布を広げます。
◎ 石垣島の庭に植えられていたサガリバナの、冬の昼間にどうにか咲こうとしている花の写真をこちらに載せています。
サガリバナ Barringtonia racemosa は熱帯アフリカから太平洋諸島にかけて分布する常緑高木で、日本では奄美大島以南の西南諸島に自生しています。
昼間には多くの場合、上のような長い花序を垂らした姿しか見ることができませんが、夏の夜にはたくさんの花が連日次々と咲き、周囲を芳香で満たします。 花の色は木により白とピンクがあるのですが、夜の暗闇の中に浮かび上がる白っぽい大きなたくさんの花は、なかなか見ごたえのあるもののようです。(夜に虫に来てもらうためには、においと暗闇で目立つ白さが有効です。)
上は咲き残りの花ですが、多くの花は翌日の朝にはメシベを残して散ってしまいます。 しかし、自生地は川べりで、早朝にたくさんの落花が芳香を残しながら川面いちめんに漂う様子はすばらしいようで、西表島などではカヌーでその様子を見に行くツアーも行われているほどです。
上は、植物園で撮った写真ですので、ほんの数輪ですが、水に浮かぶ落花です。
上の写真の左奥の花序は、上半分は咲いた後で、下半分はツボミです。 そして右側の褐色の卵形のものが果実です。 果実は右上隅にも写っています。 この果実は水に浮き、水の流れによって運ばれ、分布を広げます。
◎ 石垣島の庭に植えられていたサガリバナの、冬の昼間にどうにか咲こうとしている花の写真をこちらに載せています。
2020-08-23
ハラアカヤドリハキリバチ
下は Part1の 2013.8.24.からの引っ越し記事です。
堺自然ふれあいの森でイヌザンショウの花が咲きはじめ、さまざまな虫たちが来ていました。 今日はそのうちのハラアカヤドリハキリバチ(ハラアカハキリヤドリ) Euaspis basalis です。 ハラアカヤドリハキリバチは、その名のとおり、ハキリバチ科の蜂です。
ハキリバチの仲間は、既存孔や地中に巣を作ります。 その時に、植物の葉を丸く切り取って巣材にする種が多く、そのことが科名になっています。 巣には花粉と花蜜を混ぜた花粉団子を蓄え、そこに産卵します。
ところがこのハラアカヤドリハキリバチは、同じハキリバチ科のオオハキリバチの巣を乗っ取り、卵を産み付けます。 つまり巣作りの苦労も花粉団子作りの苦労もオオハキリバチにさせるわけで、このような宿主の労働を搾取する形の行動を労働寄生と呼んでいます。
同じイヌザンショウの花には、ハキリバチ科のツルガハキリバチも来ていて、熱心に花粉を集めていました。 ところがハラアカヤドリハキリバチは自分の腹を満たす蜜を吸えばいいのですから、訪花時間は短く、蜜の少ない花を次から次へと移動します。 つまり、なかなかまともな写真が撮れません・・・。
ハラアカヤドリハキリバチの体には、短い毛は生えていても、目立つ毛はありません。 花粉を毛にくっつけて集める必要が無くなったからでしょう。
(2013.8.21. 堺自然ふれあいの森)
堺自然ふれあいの森でイヌザンショウの花が咲きはじめ、さまざまな虫たちが来ていました。 今日はそのうちのハラアカヤドリハキリバチ(ハラアカハキリヤドリ) Euaspis basalis です。 ハラアカヤドリハキリバチは、その名のとおり、ハキリバチ科の蜂です。
ハキリバチの仲間は、既存孔や地中に巣を作ります。 その時に、植物の葉を丸く切り取って巣材にする種が多く、そのことが科名になっています。 巣には花粉と花蜜を混ぜた花粉団子を蓄え、そこに産卵します。
ところがこのハラアカヤドリハキリバチは、同じハキリバチ科のオオハキリバチの巣を乗っ取り、卵を産み付けます。 つまり巣作りの苦労も花粉団子作りの苦労もオオハキリバチにさせるわけで、このような宿主の労働を搾取する形の行動を労働寄生と呼んでいます。
同じイヌザンショウの花には、ハキリバチ科のツルガハキリバチも来ていて、熱心に花粉を集めていました。 ところがハラアカヤドリハキリバチは自分の腹を満たす蜜を吸えばいいのですから、訪花時間は短く、蜜の少ない花を次から次へと移動します。 つまり、なかなかまともな写真が撮れません・・・。
ハラアカヤドリハキリバチの体には、短い毛は生えていても、目立つ毛はありません。 花粉を毛にくっつけて集める必要が無くなったからでしょう。
(2013.8.21. 堺自然ふれあいの森)
2020-08-22
ネジレゴケモドキ
写真はネジレゴケモドキ Tortella tortuosa でしょう。 燈籠の上で育っていました。 平凡社の図鑑では「石灰岩地の土上や石灰岩転石にふつう。」とあります。 前に載せた(こちら)のは溝の側壁ですし、今回は燈籠、たしかにどちらも石灰岩を原料にしたセメントが使われています。
前に載せたのは6月中旬のもので、蒴歯の見える蒴は少なかったのですが、今回(8月4日に採集)は蒴の観察にはちょうど良い時期でした。
センボンゴケ科の蒴歯は微小なパピラが密生している場合が多いのですが、本種の蒴歯は、長いという共通点もあって、ネジクチゴケの蒴歯とよく似ています。(1枚の葉の様子などはかなり異なりますし、蒴の見られる時期も異なります。)
本種の葉は破れやすく、葉の全形は前に載せているので、今回はパス。 ポイントだけにしておきます。
中肋は葉先から少し突出しています。
葉基部の細胞は長い矩形で平滑、透明で、この透明の細胞群は葉縁に沿ってせり上がり、中部の緑色の細胞群との境界は明瞭なV字形になっています。
葉身細胞は方形~丸みのある方形で、多くのパピラがあります。
(2020.8.4. 兵庫県佐用町)
2020-08-20
ヒロオビジョウカイモドキ
写真はヒロオビジョウカイモドキ Intybia historio のオスです。 近くで羽化したばかりだったのでしょうか、オスもメスもたくさんいました。
ヒロオビジョウカイモドキは、体長が3mm前後の小さな虫ですが、赤みがかった広い帯が目立ち、存在していればすぐに分かります。 しかしこの虫のおもしろさは、拡大して見てはじめてわかるオスの触角の様子でしょう。
触角の基部近くの2節が、膨らんでいるだけではなく、窪みや突起もあります。
上はメスです。 メスの触角は、基部近くの節に少し膨らみが見られるものの、オスの触角ほどには異形ではありません。
オスとメスで形態的に異なるケースの多くは、交尾か産卵に関するものでしょう。 オスの触角はどのような機能を担っているのでしょうか。
おちゃたてむしさんのところでは、雌雄が触角をこすり合わせる求愛行動らしきものが載せられています(こちら)。 この時、オスの触角は折りたたまれ、窪みがメスの方に向き、何か物質のやり取りをしているようにも見えます。
ところで、上の写真のメスは、葉をかじっているようにも見えます。 ジョウカイモドキ科の昆虫は、ジョウカイボン科に似ているところからの名前でしょうが、分類学的には離れています。 似ている点といえばどちらも肉食で、花や葉の近くをうろうろしながら獲物を待ち構えるといった生態的な類似点でしょう。 しかしジョウカイモドキ科の昆虫は、幼虫はたしかに肉食なのですが、成虫では植物を食べるケースもあるようです。
上の写真のメスは、葉の表面で小さな虫を食べていたのでしょうか、それとも葉をかじろうとしていたのでしょうか。
(2013.8.14. 堺市南区槙塚台)
※ 上は Part1の 2013.8.14.からの引っ越し記事です(内容を一部追加しています)。
2020-08-19
フトスズゴケ
上のコケの最初の印象は「大きくごわごわしたコケ」でした。 樹状に枝分かれしながら、基物上を這った状態から枝先が巻き上がっています。 葉は枝の周囲に丸く密につき、乾いた状態で枝にくっついていて縮れる様子はありません。
育っていたのは燈籠の上です(上の写真:いろんなコケが混ざっています)。
葉面は凹んで縦じわがあり、全縁で、葉先は急に細くなって尖り、中肋は葉の中ほどで終わっています。 葉身細胞は細長いのですが、翼部の細胞は丸みを帯びた方形です。
これらの特徴はスズゴケに似ています。 そこでスズゴケの標本と比較してみました。
左がスズゴケ、右が今回のコケです。 スズゴケの標本が2年前の標本で緑色が薄れていますし、生育状況で大きさも変わるでしょうが、上の写真を見るかぎりでは、今回のコケの方が葉を含めた枝の幅は太く、枝は比較的少数のようです。 また、最初に書いたように、第一印象もスズゴケより大形で硬いものでしたので、フトスズゴケ Forsstroemia neckeroides ではないかと思います。
両者の明確な違いは蒴柄の長さで、フトスズゴケの蒴柄は短く、蒴は苞葉の間に隠れるようですが、蒴はつけていませんでした。
以下、各部をもう少し数値化して見ておきます。
上の2枚は同じ枝で、上が乾いた状態、下が湿った状態です。 湿ると葉も枝の角度も少し開きます。 葉の長さは 1.5~3mmです。
上は葉のほぼ中央の葉身細胞で、長さは 30~45μm、長楕円形で厚壁です。
(2020.8.4. 兵庫県佐用町)
2020-08-18
ヒメコクサゴケ
上の写真はヒメコクサゴケ Isothecium subdiversiforme だと思います。
育っていたのは上の写真のように石の上です。
二次茎は不規則に分枝しています。
上は乾いた状態で、葉は茎や枝に接していますが、湿らせてもほとんど変化しませんでした。 枝の幅は葉を含めて1~1.5mmです。 葉は重なりあっていて1枚の長さがはっきりしませんが、枝の中部の葉で2mm前後のようです。
所々から細く長く伸びた枝を出していますが、特に基物近くで多く出ているようです。 この枝も群落の拡大に使われているのだと思います。
上は葉を背面から撮っています。 葉は舟状に凹んでいますので、葉縁にピントを合わせると中央部はボケてしまいます。 中肋は葉長の1/2以上の長さで単生ですが、上の写真のように上部で不等に2叉することもあります。
葉先は鋭頭で、葉先近くの葉縁には不規則な歯があります。
翼細胞は短く、濃緑色の区画をつくっています(上の写真)。
葉身細胞は線形で、長さは 25~40μmです。
新しい胞子体が伸び出していましたが蒴歯の様子などを調べるには若すぎます。 上の写真からは、蒴は長卵形でほぼ直立していること、蒴柄が赤いことや、雌苞葉の様子などはよく分かります。
昨年の蒴は蒴歯もほとんど残っていませんでした。 上はかろうじて残っている蒴歯ですが、外蒴歯は基部から先端までパピラがあることくらいで、それ以外のことはよく分かりません。
上は伸びはじめていた若い胞子体の基部です。 周囲を保護していた雌苞葉は、1枚を残して取り去ってあります。
上は雌包葉です。
(2020.8.4. 兵庫県佐用町)
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