2022-06-29

チャタテムシの一種の幼虫

 樹幹にチャタテムシの幼虫が集まっていました。 チャタテムシの仲間には、このように幼虫時代に群をつくるものがいます。 樹幹につくカビや地衣類を食べて生活しているのだと思います。
 集団をつくる理由は、上の写真はかなり拡大していますが、この写真でも体の前と後ろが見分けにくく、「虫」としての姿を消して「木の幹の模様」になることで捕食を免れているのではないかと思います。

 写真はスジチャタテの幼虫ではないかと思うのですが、ネットに上がっている多くはもっと腹部全体に横縞がはっきりしていますので、タイトルも「チャタテムシの一種」としておきます。

(2022.6.24. 兵庫県西宮市 北山公園)

2022-06-27

エゾイトゴケ

 樹幹で育っていた写真のコケ、以下の監察結果から、エゾイトゴケ Anomodon rugelii だと思います。 和名に「エゾ」とありますが、平凡社の図鑑によると、分布は北海道~九州となっています。

 上は湿った状態です。

 ほぐしてみると二次茎の下部は密に仮根に覆われています。 上は乾いた状態で、葉は捲縮しています。

 葉は円頭または上のように広く尖り、基部の両翼は耳状に下延します。 多くのパビラのせいで、暗く見えます。

 上は耳状に下延している部分の拡大です。

 上は葉身細胞で、長さは8~10μm、たくさんの小さなパビラがあります。

(2022.5.30. 秋田県 中島台リクリエーションの森)

こちらには胞子体をつけたエゾイトゴケを載せています。

2022-06-25

ダニ体験記Part2

 またダニにやられました。 今回はとても小さなダニでしたが、小さいからといって安心はできません。 ダニは吸血時に唾液や体を皮膚に固定させるセメント様物質を出しますが、この唾液にウイルスや菌が含まれている場合があり、このウイルスや菌による感染症を心配しなければなりません。 小さなダニでも重篤な感染症を引き起こすウイルスや菌を持っている場合があります。
 今回は太ももに急に強いかゆみを感じたことで気がつきました。 このかゆみは注入された唾液によって引き起こされたアレルギー反応でしょう。 かゆみの強い所を見ると、皮膚が赤くなった所の中心に特に赤くなった小さな点と、その横に黒っぽい点がありました。 ダニにやられた経験が無いと見過ごしてしまったかもしれませんが、今回はダニではないかと直感的に思いましたが、自分の太ももをルーペで観察するほど体は柔らかくありません。

 上はカメラでマクロ撮影した写真です。 4対の脚が見えますので、ダニに間違いなさそうです。 土曜の夕刻で病院もありません。 仕方がないので、自分で除去することにしましたが、固くくっついているようです。無理に取ろうとして体がちぎれると、体液が逆流することもありますし、皮膚内にダニの体の一部が残ると、その異物に対する反応も起こります。
 今回私の採用した方法は、ダニの周囲に塩を盛り、水を1滴垂らし、その上を絆創膏で覆います。 ダニを塩漬けにして殺すとともに、塩で滅菌する作戦です。
 15分後、絆創膏を剝がし、塩も取り除いて、コケ観察用の先の鋭く尖ったピンセットの先をダニの体の下に入れるようにして、死んだダニをそっと持ち上げました。

 上が取り除いたダニです(死んでいます)。 口についている白いものは、ピンセットで引っ張っても取れませんでした。 セメント様物質で固められた部分だと思います。
 今回は比較的早期に除去できましたので、感染症の可能性も低いと思いますが、2週間ほどは体調の変化に注意するつもりです。

 このダニがどのようにして体についたかですが、前日に山を歩いています。 帰宅後にシャンプーとボディソープを使ってシャワーをして、着ていたものは洗濯したのですが、1つだけ、帰りの駅のトイレで上着を着変え、それをシャワー後も着続けました。 たぶんダニはその上着に乗り移っていたのでしょう。 やはり少しでも身につけたものは全て洗うことが必要なようです。
 ダニはすぐには刺しません。 体の柔らかい刺し易い所を求めて歩き回ります。 しかしこの大きさでは歩き回っている時にもぞもぞと感じることは不可能でしょう。

◎ 前回ダニにやられた時のことはこちらに書いています。

2022-06-24

ヒラウロコゴケ

 写真はヒラウロコゴケ Nardia compressa だと思います。 たくさん絡み合って塊状になっていたのですが、それをほぐして撮影しています。

 育っていたのは秋田県の鳥海山の麓にある獅子ヶ鼻湿原で、上の写真のような流れのきつい酸性の水中でした(撮影:2022.5.30.)。 この場所ではたくさん育っているようですが、2010年環境省の改訂レッドリストでは、ここと福島県の吾妻山の2カ所からしか知られていないことから、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 なお、世界的には北半球の冷温帯に不連続に分布するようです。


  平凡社の図鑑(検索表)では、「葉は横につき、左右に圧接する。」とあります。 上の写真のような状態をさしているのでしょうが、このような状態はよく成長している茎の先にみられるだけで、最初の写真のように多くの葉は開いていました。 もう少し流れが緩やかで水面近くの十分な光合成ができる場所では上の写真のような状態が多くみられるのかもしれません。

 上は乾いて葉は縮れ、長さもよく分かりませんが、よく生長した葉では幅が2mmほどになり(下の写真)、茎の長さは数cmになります。


 上の2枚は葉で、全円です。



 上の3枚は葉の細胞で、上から葉縁付近、葉の中央部、葉の基部です。

 上は腹葉です。 腹葉は小さく目立ちません。

 仮根は茎の腹面に散生します(上の写真)。

 同定にあたっては道盛氏より資料をいただきました。 ありがとうございました。


2022-06-22

ウスイロカザリバ?

  下は Part1の 2014.7.2.から大幅に書き換えての引っ越し記事です。

 上は5月30日に撮影したカザリバガ科の蛾です。 Cosmopterix属だと思いますが、この仲間はたくさんいて、よくわかりません。 とりあえず絵合わせでウスイロカザリバ C. fulminellx としておきます。
 和名の「カザリバ」は「飾り翅」だと思いますが、この仲間の翅はとても装飾的な色彩です。

 上は6月23日に撮ったもので、ササの葉の上で踊っている様子です。 常識的に考えれば、このようなディスプレーダンスでメスを呼んでいるのでしょうか。



2022-06-21

シワラッコゴケ

 


 写真はシワラッコゴケ Gollania ruginosa のようです。 生育環境としてはあまり良くないのか、緑色をしているのは新しく伸びた所だけで、少し古くなった葉は褐色です。

 上の写真は、上が乾いた状態、下が湿った状態ですが、違いはほとんどありません。

 枝の幅は葉を含めて1~2mmです。

 上は茎(といっても伸びたばかりの若い茎)の背面についていた若い葉で、卵形~長卵形の下部から細く針状に漸尖しています。 中肋は2本で、葉長の1/3ほどの長さです。
 下は同じ茎の腹面についていた葉です。

 先端付近は強くしわよっています。

 葉縁の上半には鋭い小歯があります。

 葉身細胞は長さ40~70μm、幅3~5μmで、背面上端に突起のある細胞もみられます。

 翼部には方形の細胞が集まっています(上の写真)。

 枝葉は上の写真のように小形ですが・・・

 葉縁に鋭い小歯があることや、背面上端に突起のある細胞があることなどは茎葉と同じです。

 偽毛葉の先は細く長く伸びています(上の写真)。

 上は茎の横断面で、表皮細胞は小形で厚壁です。

(2022.6.8. 神戸市北区 道場)

2022-06-19

ケクラマゴケモドキ

 樹幹をはい回る写真のコケ、以下の監察結果から、ケクラマゴケモドキ Porella fauriei のようです。 分布は、よく似たニスビキカヤゴケがブナ帯以下であるのに対し、北海道と本州のブナ帯以上です。

 上は覆面から撮っています。 湿った状態ですが、背片の先は内曲しています。

 上は葉(側葉)です。 背片の先は、内曲していますが、円頭で数歯があります。 下方には舌形の腹片がついています。


 上の2枚は腹葉です。 ニスビキカヤゴケの腹葉は基部が最大幅で歯は基部ほど目だつのですが、本種の腹葉は楕円形で、最大幅は中ほどにあり、歯は全周にあります。

(2022.5.30. 秋田県 中島台リクリエーションの森)

◎ ケクラマゴケモドキはこちらにも載せています。

2022-06-15

コフサゴケ

 

 北海道の苫小牧市にある北海道大学研究林のコケを許可を得て調べておられる泉田氏より、研究林内に生育しているコフサゴケ Rhytidiadelphus japonicus (上の写真:泉田氏撮影)を送っていただきました。
 分布は平凡社では北海道~九州の高地となっていますが、北海道では低地でも見られるようで、研究林の標高は50m前後です。

 和名に「コ(小)」とついていますが、大形のコケで、やや羽状に分枝し、大きさはフサゴケとほとんど同じです。

 茎は赤褐色で、茎葉の長さは 2.5~3.5mmです。 よく似たフサゴケは葉先が漸尖していますが、本種の葉先は枝葉も茎葉も急に細くなっています。

 葉は薄く、湿ると破れ易くなります。 平凡社の図鑑では葉先が反り返るとあるのですが、ほとんどの葉先は反り返っていません。

 上は茎葉です。 基部は狭まり、翼部は褐色の細胞が明瞭な区画を作っています。 中肋は2本あるのですが、上のように1本が欠けているものも散見されました。

 上の写真の茎葉の中肋は2本揃っています。

 上部の葉縁には細かい歯があります。

 上は翼部です。

 葉身細胞は、長さはいろいろですが、幅は5μmほどです。

 上は枝葉です。 葉縁の上部は波打つことがあるようです。

◎ コフサゴケはこちらにも載せています。