2018-04-30

フクロヤバネゴケ


 水をたっぷり含んで柔らかくなった朽木の上で、フクロヤバネゴケ Nowellia curvifolia がたくさん蒴をつけていました。


 新しい枝は緑色ですが、少し古くなると赤みを帯びてくるようです。


 上は斜め下から腹面を撮っています。 腹葉は無く、仮根は腹面のあちこちから出ています。 下は斜め上から背面を撮っていますので、比較すれば、葉が背側に偏向していることが分かります。


 葉は1/2まで広U字形に2裂し、葉裂片の先は細く長く伸びています。


 上は1枚の葉を腹面から見ています。 背縁は円く張り出し、腹縁は著しく内側に巻き込んで袋になっています。 くっついている褐色の粒は胞子です。


 上は葉身細胞です。 厚壁で、トリゴンはありません。 油体は微小です。


 上は胞子体が花被から顔を出しかけている状態です。


 上はまだ開裂していない長く伸びた胞子体の蒴をプレパラートにし、カバーグラスの上から押し潰したものです。 多くの胞子が弾糸にくっついています。


 上は胞子と弾糸です。

(2018.4.29. 京都市大原)

2018-04-28

交尾中のバラルリツツハムシ



 ザイフリボクの葉の上で交尾中のハムシ、バラルリツツハムシ Cryptocephalus approximatus のようです。 風のある日で葉は揺れるし、虫は動くし、葉に指を添えて動きを止めるとすぐに逃げ出しそうで、ヒシッと動きの止まった写真は撮れませんでしたが・・・。
 ザイフリボクもバラ科ですが、バラルリツツハムシの食餌植物はバラ科に限らず、コナラ、フジ、イタドリなど、いろんな葉を食べるようです。

(2018.4.20. 堺自然ふれあいの森)

2018-04-27

ノコギリコオイゴケ


 イクビゴケの群落の隙間にたくさんの赤褐色の胞子体がありました(上の写真)。 調べてみると、胞子体形成で元気はありませんが、ノコギリコオイゴケ Diplophyllum serrulatum のようです(下の写真)。



 背片、腹片とも鋭頭で、縁は鋸歯状です。 腹片は背片の2倍の長さで、キールは弓形です。


 上は葉の上についていた胞子と弾糸です。


 上は葉身細胞です。 やや厚壁で、トリゴンはほとんどありません。 下は上と同じ所をピントを少しずらして撮ったものです。 2枚の写真を比較すると、細胞表面に複数の膨らみがあるようですが、このことについて平凡社の図鑑では何も触れられていません。


(2018.4.20. 堺自然ふれあいの森)

2018-04-26

マルバハネゴケ



 写真はマルバハネゴケ Plagiochila ovalifolia でしょう。 渓谷の湿った岩上で垂れ下がっていました。
 前に載せたものは大きく撮っていますので、今回は生育環境が分かるように引き気味に撮ってみました。


 上は背面から撮っています(スケールの数字の単位はmmです)。 背縁(=苔類の葉の背面側の縁)は外曲(=茎と反対側に巻き込む)し、その基部は下延しています。


 上は腹面を見ています。 腹縁は弓形で、葉先付近から腹縁基部にかけて歯が並んでいます。 腹葉は存在するのですが、痕跡的で、上の写真ではよく分かりません。


 上が腹葉です。 このマルバハネゴケはどの腹葉も汚れがひどく、くっきりと撮れる腹葉はありませんでした。


 上は葉身細胞です。 薄壁でトリゴンは小さく、油体は球形~楕円体で、微粒~小粒の集合です。(葉身細胞の様子はこちらにも載せています。)

(2018.4.11. 京都市 西芳寺川)

こちらにはマルバハネゴケの若い胞子体や造精器の様子などを載せています。


2018-04-25

アラカシ葉上のヒメクサリゴケ




 ヒメクサリゴケ Cololejeunea longifolia については、これまでにスギの枯れた枝葉についていたもの岩にくっついていたものを載せていますが、今回はアラカシの生葉上で育っていたものです。


 今回は腹片を重点的に観察しました。 上は深度合成していますが、第2歯牙もあるようです。
 背片と腹片の間に見られる丸いものは造精器でしょう。 このような場合、背片と腹片を合わせて雄苞葉と呼ぶべきなのでしょうか。



 上は造精器が見当たらない葉です。 やはり腹片に第2歯牙が認められます。 第1歯の基部の細胞の根元の内側には透明細胞が認められます。


 上は葉身細胞で、細胞壁に中間肥厚が見られます。

(2018.4.11. 京都市 西芳寺川)

2018-04-24

タチヒダゴケの蒴の開閉



 樹幹にくっついているタチヒダゴケ Orthotrichum consobrinum が胞子を出していました。 蒴壁が縮み、中の胞子を外に押し出しているようです。 蒴歯は反り返り、蒴壁にくっついています。
 葉が開いていると、もっと美しくておもしろい写真が撮れるだろうと、霧吹きで水をかけると・・・



 蒴歯はあっという間に閉じてしまいました。 胞子が無くなってしまったのは霧吹きで吹き飛ばされたのでしょう。

 胞子散布時期の蒴歯は乾湿で開閉します。 風に載せて胞子を飛散させたい種の蒴歯は乾くと開き、水で胞子の拡散を図りたい種の蒴歯は湿ると開くようです。 樹幹に着くタチヒダゴケは、幹を伝う水で胞子を広げるのだと思っていたのですが、逆でした。
 タチヒダゴケは幹から幹へと飛び移りながら分布を広げようとしているようです。 たしかにタチヒダゴケが密に集まった大きな群落はあまり無いようです。

(2018.4.20. 堺自然ふれあいの森)

2018-04-23

ジンガサゴケ(雌器托・胞子など)


 上はジンガサゴケ Reboulia hemisphaerica subsp. orientalis の雌器托で、2018.4.17.に堺市南区高倉台で撮ったものです。 まだ胞子は飛び始めていません。


 上は雌器托の柄の断面で、赤い四角で囲った部分で表皮が柄の内部に落ち込んでいます。 下はこの部分の拡大です。


 表皮で囲まれた空間には、上下に走るたくさんの仮根の断面が見えます。 上の写真では仮根の断面が少し分かりづらいので、コンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使った偏光顕微鏡で細胞壁を光らせて撮ったのが下です。


 仮根が集まり小さな隙間がたくさんできることで、毛管現象が起こり、水が上へ登って行く事ができます。 卵細胞が受精する時は、まだ柄は伸びていませんが、精細胞もこの通路の水の移動に乗って卵細胞へと向かうのでしょう。


 上は胞子と弾糸です。


 胞子を深度合成してみました(上の写真)。


 上は 2018.4.22.の撮影です。 多くの雌器托では、胞子を飛散し終えています。 右の雌器托では3個の胞子体はまだ開裂しておらず、右上の胞子体は、まさに胞子を散布中で、弾糸も細く黒っぽい糸状のものとして写っています。 下はこの胞子散布中の胞子体を拡大したものです。




2018-04-22

カマハコミミゴケ


 写真はカマハコミミゴケ Lejeunea discreta のようです。 葉(背片)はやや鎌状に曲がった卵形で、ゆるく重なっています。


 生育環境が分かるように引いて撮ってみました(上の写真)。 写真中央から右の方に写っているのがカマハコミミゴケの群落です。


 腹葉は長さと幅がほぼ同長で、茎径の3~4倍の長さがあります。
 腹片の大きさにはかなりのばらつきがあり、背片の1/2に近い長さのものから痕跡的なものまであります。


 腹葉は 2/5~1/2まで狭V字形に2裂しています。 腹片の歯牙は1細胞からなっているようです。
 腹片の歯牙の基部にある細胞(とそれに連なる細胞)が他の細胞より大きく、これが似た種と区別するのにいい特徴のようです。 この特徴を確認するために、下にもう1枚写真を載せておきます。


 このような腹片の特徴を持つ日本のクサリゴケ属は、平凡社の図鑑の検索表によれば、他には小笠原硫黄列島に見られるミズタニクサリゴケのみのようです。


 上は葉身細胞です。 葉身細胞の壁は薄く、中間肥厚し、小さなトリゴンが見られます。 油体は微粒の集合した楕円体で、各細胞に 10~14個ほど見られます。

(2018.4.11. 京都市 西芳寺川)

◎ カマハコミミゴケはこちらにも載せています。


2018-04-20

ウスモンカレキゾウムシ

 堺自然ふれあいの森でのこの虫との再会を機会に、Part1の 2014.6.4.の記事からこちらへ引っ越しました。


 フジの枯れ枝でよく見られるウスモンカレキゾウムシですが、夜間に灯火に惹かれて飛来したのか、壁にくっついていました。



 ウスモンカレキゾウムシはゾウムシ科アナアキゾウムシ亜科に分類されていて、同属には「○○モンカレキゾウムシ」という名前のゾウムシが何種類かいます。
 これだけ明瞭な模様を持ちながら、なぜ「ウスモン」なのかと思いましたが、同属の「○○モンカレキゾウムシ」には、黒っぽい体色に白い明瞭な紋のあるものが多く、それらに比較すると、たしかに紋がよくわかりません。


 それにしても、すごい鱗片ですね。

(2014.6.3. 堺市南区鉢ヶ峯寺)