Part1、2014.6.29.からの引っ越し記事です。
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昔から十薬(じゅうやく)という名の生薬としても親しまれてきたドクダミ、あの嫌なにおいも乾燥させるとほとんど消えますし、加熱してもほとんど消えるので天ぷらにして食べたりもします。 今回はこのドクダミの花のつくりを見ていくことにします。
種子植物の花は生殖器官としてとても大切なもので、その植物を理解するためのポイントとなります。 花の中央にメシベがあり、その周囲にオシベがあり、それらを取り囲むように花弁があり、花弁の外側にガクがある、これが花のつくりの基本で、場合によってはそのいずれかが欠ける場合もありますが、これらの位置関係は変わりません。 このことを頭において、ドクダミの花を見ましょう。
ドクダミの花の白い4枚を花弁と思っている人もいるようです。 しかしもしこれが花弁なら、その内側にあるはずのオシベと、さらにその中心部にあるはずのメシベはどれでしょうか。
オシベが退化した雌花やメシベが退化した雄花の可能性も考える必要がありますが、メシベがあれば花粉をどこでどのように受け取るのかを考える必要がありますし、オシベがあれば花粉が出ているはずです。
じつはドクダミの花は小さく、たくさんの花が寄り集まっています。 上の写真の「たくさんの花のあつまり」と書いてある部分がそうです。
一見1つの花とは思えない小さなほんとうの1つの花を「小花」と呼ぶことにします。 また「花序」とは花の付き方を言うのですが、ここでは「花の集団」の意味で使うことにします。 すると、「ドクダミは棒状の花序に小花を密生させる」と表現することができます。
ここまで見てくると、4枚の白い花弁のようなものは、花弁では無いことが分かります。 花弁はそれぞれの花の構成要素ですが、この4枚の白い花弁のようなものはたくさんの花からなる花序の下に位置します。 この白い4枚は、“たくさんの花を包み込む”という意味で「総苞」と呼ばれています。 この総苞は、花の集団の存在場所を虫たちに教える“広告塔”としての働きをしているのでしょう。
上は花序の一部を拡大したもので、たくさんの小花(=ほんとうの花)が集まっています。 1つの小花は、白い色をした柱頭が3つに分かれた1本のメシベと3本のオシベからなり、花弁もガクも退化しています。
たくさんの小花がぎっしりと並んでいるので、上の写真では1つの小花が分かりにくいかもしれません。 そこで花序を横に切断し、切断面を上から見たのが下の写真です。 赤い四角で囲ったのが1つの小花です。 3本のオシベのうちの2本がメシベの左右に出ています。 メシベ基部の緑色に膨らんでいる部分は子房です。