4日前、アラカシの葉にカメムシの卵が産み付けられているのを見つけました(上の写真)。 見ると中が黒くなっているものがいくつかあります。 これは卵がハチに寄生されていて、黒い蜂の羽化が近いのだろうと思い、持ち帰ることにしました。
卵はプラスチックケースに入れておいたのですが、昨日気がついた時には、半数近くの卵は蜂が羽化した後でした。 蜂(下の写真)を見ると、タマゴクロバチ科のようです。 Hepota2さんによれば、タマゴクロバチ科の蜂の羽化は、最初に小さな穴を開け、その穴の縁を細く切り取って穴を広げるようです(上の写真)。
プラスチックケースの蓋を開けると、羽化していた蜂はほとんど飛び立ってしまいましたが、上の写真の1頭だけは飛び立たずに卵の上を歩き回っていました。 体長は翅端まで2mmでした。
今まで何度か見てきた蜂の羽化の様子からすると、上の写真のものはオスで、これから羽化してくるメスを待ち構え、交尾しようとしているのだと思いました。
おちゃたてむしさんのブログにはタマゴクロバチ科が何度か登場していますが、2010年7月6日のKurobachiさんのコメントでは、中胸楯板に2本の溝があるのはTrissolcus属で、そのうち、メスの触角の基部側が黄褐色で先端の太いところ(棍棒状部)が黒いのは T. mitsukurii ということです。 後に載せるように、メスはそのような触角をしていました。
ひげぶとさんから、Trissolcus japonicus (Ashmead, 1904) だと教えていただきました。 タイトルも変更しておきます。 同定の根拠となった特徴など、詳しくはコメントをご覧ください。 ひげぶとさん、ありがとうございました。
オスの行動を見ていると、特定の場所にこだわっているようで、そこを拡大してみると、上の写真のように羽化しはじめている蜂がいました。 上の写真を撮った時刻は 15:17 です。 以下、この羽化の様子を追いかけてみました。
15:21
15:22
15:23
15:23
羽化してきた蜂の触角は、オスのものとは、長さも太さも色も異なります。 やはりメスのようです。 メスの触角についているのは、卵の穴を広げる時に細長く切り取った卵殻です。
オスはいつごろからどのようにして羽化してくるのがメスだと分かるのでしょうね。
15:23
時間経過で分かるように、卵殻から体を出しはじめると速く、するりと抜け出ます。 メスの体が出るや否やオスはメスの体を抱きかかえ、交尾姿勢に入りました(上の写真)。
交尾を終えて離れたオスとメスですが、メスが近くをウロウロしていると、また同じオスが来て、交尾をはじめました。
メスはこの後飛び去りましたが、オスはまた卵の上に戻りました。 次のメスが羽化するのを待つつもりのように思いました。
下はその時のオスの様子ですが、このような様子を見ていると、これらの蜂では兄弟姉妹間の交尾がたいへん多いようで、有性生殖の意義はどうなっているのかと疑問に思います。 植物に自家受粉があるように、これらの蜂の世界でも、遠くの仲間を求めて飛び去るオスもおれば、とりあえず子孫を残す確率を高めるために“近親結婚”を行うオスも存在する、ということなのでしょうか。
体のクリーニング時に一瞬見せてくれた腹部背面
2 件のコメント:
はじめまして、そよかぜさん
素晴らしい写真を見せていただきました。
キャラクターがしっかり捉えられた生態写真ですので、写真から同定できました。
このクロバチは、Trissolcus japonicus (Ashmead, 1904)です。
根拠は、以下のとおりです。
①中胸背 (Mesoscutum)に明確な2本の長い溝(notauli=parapsidal furrows)がある。
②頭頂にシャープなリッジがある。
③中胸背 (Mesoscutum)の後半と小楯板(Mesoscutellum)は細かい印刻に覆われ、ピカピカ光ることはない。
ひげぶとさん、ありがとうございます。
種名が分かり、スッキリしました。
これからもよろしくお願いいたします。
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