2020-08-08

ヘリトリシッポゴケ


 上の写真、蘚類はヘリトリシッポゴケ、苔類はミヤマホラゴケモドキだと思われます。 以下はヘリトリシッポゴケ Dicranodontium fleischeriana (と判断したコケ)の観察記録です。 昨日載せたユミゴケとは同じ属で、いろいろな点でよく似ています。


 上は湿った状態です。 葉は長さ5~6mmのものが多いようです。 茎の長さは、上の写真では1cmに達していませんが、茎の下部まで葉がたくさんついていてまだ若い株のようで、平凡社の図鑑では「茎は長く,ときに10cm。」と書かれています。 なお、本種でも葉は少し脱落しますが、ユミゴケほどひどくはありません。
 若い蒴がついていますが・・・


 上は乾いた状態です。 蒴柄が乾くと強くねじれ、湿るとハクチョウの首のように湾曲するのがこの属の特徴の1つで、このような若い蒴でもその特徴がはっきり見られました。
 葉は乾くと少し曲がりが強くなっているようですが、あまり大きな変化は無いようです


 上は葉の基部付近を斜め横から見ています。 基本的なつくりはユミゴケに似ていますが、葉鞘部の幅はユミゴケより広いようです。 やはり円筒状に丸まっていますので、これをカバーグラスで押さえつけると・・・


 上は葉の基部付近で、2枚の写真をつないでいます。 上に書いた理由で、葉鞘部の縁は左右とも少し折れ曲がっています。
 中肋と葉身細胞との境は明瞭です。 下の2枚は上の中肋の縁付近を拡大した写真です。



 葉の基部の中肋沿いには、大型で透明な細胞群が存在します。 このことが中肋と葉身細胞との境をはっきりさせている理由の1つでしょう。 上の2枚の写真は、どちらも中央が大型細胞で、その上が中肋です。 なお、上の2枚の撮影倍率は同じで、細胞の大きさが異なるのは場所の違いによるものです。


 葉鞘部の縁にも特徴があります。 上は縁の折れ曲がりが少し葉先側に寄った葉で、葉鞘部の縁が少し長めに観察できます。 下はその一部の拡大です。


 葉鞘部の縁には数列の細い線形の細胞があります(上の写真)。


 上は葉先の様子です。



 上の2枚は葉の横断面(一部)とその中肋部の一部の拡大です。 葉の横断面の特徴はユミゴケの場合とあまり変わらず、中肋の横断面では中央のガイドセルの上下にステライドが見られます。

(2020.8.4. 兵庫県佐用町)

◎ ヘリトリシッポゴケはこちらにも載せています。