2020-08-07

ユミゴケ


 朽木に育っていた上の写真のコケ、蒴と配偶体は同一種だと思って撮ったのですが、調べてみると、蒴はヨツバゴケ(葉は隠れてしまっています)で、配偶体はユミゴケ Dicranodontium denudatum のようでした。
 以下はユミゴケの観察結果です。 なお、ユミゴケの国内の分布は、平凡社の図鑑によれば、本州~九州の山地となっています。


 群落をよく見ると、たくさんの遊離した葉が見えます。 これらの葉は栄養繁殖に使われるのでしょうか。 なお、上の写真のあちこちにある褐色~緑色のものはヨツバゴケの無性芽器です。


 白い皿の上で写真を撮ったりした後を見ると、皿にたくさんの葉が落ちていました。 上はその葉を集めて撮った顕微鏡写真で、どうやらほぼ同じ所で切れているようです。


 上の写真のように、茎の下部の葉がとれて仮根のみになっているものもありました。


 茎の長さは1~2cm(上の写真のものは少し短かめです)、葉の長さは5~6mmです。 上の写真はすこし乾き気味で、葉が弓形に曲がってきていますが、和名はこのことに由来するようです。
 上の写真でも、茎の下方に枯れた葉が残っていますが、その上に葉の無い部分があり、この部分の葉は落ちてしまったのでしょう。


 上は葉の基部近くです。 葉は乾くと縁が寄って円筒状になるのですが、湿らせてもその傾向は残り、上の写真でもプレパラート作成時に片方の縁が大きく折れ曲がってしまいましたので、黒い線で折れ曲がった縁を示しています。
 下の2枚は、上の青い四角で囲った部分と赤い四角で囲った部分の拡大です。



 葉鞘部の縁の細胞は細くて薄壁です。 翼細胞は透明~褐色、大きくて薄壁で、しばしば上の写真のように耳状に下延します。 中肋は葉先にまで達しているのですが、葉身細胞との境が不明瞭なのも特徴の1つです。


 上は葉先近くの様子です。


 上は葉の下部の横断面です。 葉身細胞は1層で、複数の細胞が層を成しているのは中肋の部分です。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。


 中肋の横断面で中央のガイドセルの上下にステライドがあるのは、この属の特徴の1つです。


 上は葉の上部の横断面で、葉の下部と同様の中肋の構造があります。

(2020.8.4. 兵庫県佐用町)