「コケの国のふしぎ図鑑」の販売開始から2年半が経過しました。 この間、コケブームで、コケの図鑑を1冊購入したい、という人も増えてきているようですので、改めてPRさせていただきます。
この本はコケに関心を持ちはじめた人にコケの持つ魅力を伝えたいと思って作成した本です。 しかし、むしろコケに詳しい人や植物の専門的な知識を持つ人に一定の評価を得ている一方で、コケを始めようとする人には、著者や出版社の意図がうまく伝わっていないようで、他の図鑑に比較して正直人気が高いとは言えないようです。 そこで、まずはこれまでお聞きできた不満の声に応える形で、この本の意図するところをお伝えしたいと思います。
・ 種類によってはほぼ拡大写真しか載っていない種類もあり、初心者が肉眼でパッと見たコケを見分けるのには向かない
コケは小さな植物です。 肉眼で見て何の仲間か見当がつけられるコケは限られていますし、コケ初心者が正しい種名まで肉眼で判断できるコケは皆無かもしれません。 また、コケは生育環境や季節などでも印象は大きく変わってきます。 名前を知るには細部をしっかり観察することが必要です。 コケ観察には、ほんとうは顕微鏡が必要なのですが、少なくとも 10倍程度のルーペが必要です。 一方、ルーペで拡大して観察すれば、そこには驚きの世界が広がっています。 それがコケの魅力であり、まだルーペを持っていない人にも、本書でそのコケの魅力を知ってもらえればと思っています。
・ 写真が大きく、その分掲載されている種が少なく、調べたいコケが載っていないかもしれない
コケの観察を始めたばかりの人がコンパクトにたくさんの種類が載せられている本を求める気持ちはよく分かります。 しかし、たくさんの種類を載せている図鑑では似た形態の種があちこちのページにあることになり、違いが分からなくなるばかりではないでしょうか。 初心者が複数の図鑑を使ってコケの名前を調べようとした場合、どの図鑑が同定にいちばん役立ったか、どなたかレポートしていただきたいものです。 たくさんの種類を載せている図鑑は、ある程度コケに詳しくなってから役立つ本だと思います。 それに、日本にあるコケは 1,800種と言われてからも、その後も増え続けています。 いくらたくさんの種が載っている図鑑でも、(案外身近な種であっても)載せられていない種はたくさん出てきます。
本書は身近によく見られるコケに絞り、さらにそれらのコケについて「似ているコケ/仲間のコケ」というページを作成しています。 もちろん本書に載っていないコケもたくさんありますが、本書でどのような仲間のコケか判断できれば、後はこのブログやネット検索でいろいろ調べることも可能になるでしょう。
・ ページが外れ易い
本書はコケの魅力を伝えたいと、写真を重視しています。 そのため、裏写りが無いよう、厚い紙を使用しています。 紙が厚くなると柔らかさに欠け、そのため、本を大きく開くとページが外れ易くなってしまいました。 この点は大きく開かないようお願いするしかありません。
変な言い訳になりますが、最近はページをバラバラにしてスキャンし、タブレットなどに入れて持ち歩く人も多くなりました。 そのような人にはとても扱い易い本になるのですが・・・。
(追記) 電子書籍『コケの国のふしぎ図鑑 Kindle版』が2022年9月2日から発売が開始されています。
内容は単行本と変わらず、固定レイアウトで作成されていますので、タブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適していますが、スマホ( Androidでも iPhoneでも )でも使用していただけます。 もちろんパソコンでも使用可能です。
・ 書店でみつけにくい
普段はあまり気にすることは無いと思いますが、本には「ISBN」と「Cコード」がついています。 ISBN(日本図書コード)は出版社記号や書籍出版物の固有番号などで構成されていますが、Cコードは、ISBNを基とした日本図書コードの分類コードで、販売対象、書籍形態、内容が4桁の数字で表されています。
本書のCコードは「C2077」で、実用(2)の単行本(0)で、その内容は家事(77)となっています。 「家事」は日常使用する「家事」という言葉とは少しずれますが、意味するところは「日常生活の中で楽しみながら役立つ単行本」という位置づけです。 たくさんの本を扱う大型の書店では、このCコードを基に配架しています。 結果として本書は図鑑のコーナーではなく、コケテラリウムの作り方などと一緒に実用書のコーナーに置かれていることが多くあります。
※ Amazonで購入を希望される場合は、最初の写真をクリックすると、Amazonに飛ぶようにしておきました。
◎ その他の本書の特徴
上で書けなかった本書の特徴を下にまとめておきます。
★ 分かり易さを心がけました
本書の文は、私が用意した原稿を元に、コケに関しては全くの素人である編集者が理解できない所が無いようにやりとりしながら作成しています。 またコケに関する専門用語は可能な限り使用しないように努め、どうしても必要な用語は平易な言葉で解説しています。
★ コケとはどのような植物か、理解できるように努めました
単に名前を知るだけでなく、コケとはどのような植物なのか、どのように生き、どのように子孫を残しているのか、など、同じ地球上で暮らす“住人”としてのコケの姿を伝える内容をあちこちにちりばめています。
★ 各章ごとに関連するコケでテラリウムを作成していただき、1つのストーリーとしました
テラリウムを楽しんでいただくことはもちろんですが、別種のコケを並べることで、互いのコケの大きさの比較ができます。 なお、ここに出てくるコケヤマさんの身長は5cmで、スケール代わりにもなっています。
★ 分類順さくいんをつけています
本書は知りたいコケを探し易いように生育環境別にまとめていますが、進化の流れも意識した分類順の索引もつけています。
少しコケのことが分かってくると、互いのコケの関係を理解することがコケの理解を深めることにとても役立ちます。
【 本書の紹介 】
本書はいろんな所で紹介いただいています。 そのうちの1つですが、一般の人の検索にはあまり引っかからないと思いますので、載せておきます。 広島大学大学院理学研究科生物科学専攻植物分類・生態学研究室内に事務局のある学会組織「ヒコビア会」発行の雑誌 Hikobiaの18巻1号の2019新刊紹介の78ページです。
0 件のコメント:
コメントを投稿