スギの樹皮の上に広がるコケ(上の2枚の写真)、スプレーで水を与えてやると、下のように葉を広げました(2023.3.11. 屋久島にて撮影)。
小さなコケで、現地では分からなかったのですが、持ち帰って調べた結果、ヒメイサワゴケ Syrrhopodon fimbriatulus だと思います。
上は葉です。 葉の鞘部では中肋の左右に網目状組織があり、肩の縁を中心に長い刺があります。 葉先が色濃く写っているのは、葉先にある無性芽の隙間に空気が入り込んでいるためでしょう。
いろいろな長さの葉が混じっていました。 上は長めの葉ですが、平凡社の記載でも葉の長さは1~3mmとなっていて、3倍の違いがあります。
葉形も、奈良県と屋久島との環境の違いもあるのでしょうが、前に見たこちらとはかなり異なります。 しかしよく見ると、上の葉も葉先から1/5ほどの所で最も幅広くなっているなどは共通です。
下は上の赤い四角の部分の拡大です。
長い刺は単細胞です。 少し分かりにくいのですが、葉縁には舷があります。
下は上と同じ場所ですが、中肋にピントを合わせています。
中肋の背面にも多くの尖った刺があります。 下はこの付近の葉の横断面です。
中肋の腹面側に1層の葉緑細胞があるのは、Syrrhopodon(アミゴケ属)や Calymperes(カタシロゴケ属)などの特徴です。
平凡社の図鑑では葉の細胞のパピラは背面にあるとなっていますが、パピラは背面にも腹面にもありました。 このことは葉の中部や上部の横断面でも確かめています。
葉身細胞は方形で長さ8~10μm、1個のパピラがあります。
上は無性芽のついていない葉先で、幅広く尖っています。
上は無性芽をつけている葉先を腹面から撮っています(無性芽はかなり落ちています)。
無性芽は紡錘形です(上の写真)。
蒴は直立し相称、蒴柄は褐色で長さは3~4mmです。 ちなみに、茎の長さもいろいろで、平凡社では2~10mmとなっています(上の写真のものは約7mmです)。
蒴歯は短く、パピラで覆われています。
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