写真はイクタマユハケゴケ Campylopus gemmiparus です。 葉腋にたくさんの無性芽をつけています。 笠井氏に案内していただき、朽木上に育っているところを観察することができました。
このコケは 2001年に静岡県で採集された標本を基に、マユハケゴケとは異なる新種として報告されたもので(Iwatsuki et al.2002)、初版が2001年に発行されている平凡社の図鑑には掲載されていません。
樋口ら(2003)による両者の違いを表にまとめると、次のようになるでしょう。
無 性 芽 | 葉の先端部 | |
マユハケゴケ | 線形で大型 乾くと内側に少し曲がるかねじれる | 全縁 |
イクタマユハケゴケ | 短くずんぐり 乾くと内側により強く曲がる | 鋸歯がある |
葉は茎の上部で広がっています。 葉の長さは 2.5~3.5mmほどのものが多いようです。
葉先近くには鋸歯があります(上の写真)。
上は葉の基部です。
上は葉腋の無性芽です。 これを取り出してしばらく放置すると・・・
無性芽は乾くと次第に上のように内側に曲がってきます。
上の3枚は大きさの異なる3つの無性芽の顕微鏡写真で、倍率は同じです。 1枚目は横から、3枚目は深度合成していますが、いずれの写真でも中肋の存在が確認できます。 この点もマユハケゴケとの違いのようで、マユハケゴケの無性芽の中肋が無いとのことです。
上は組織を比較するため、葉と無性芽の横断面の切片をそれぞれ深度合成し(同倍率)、その2枚を合成した写真です。 葉は大きいため、半分しか写っていません。 少し印象が異なるのは切片の厚さが異なるためです。 比較すると、無性芽のガイドセルが不明瞭ですが、基本的にはよく似たつくりのようです。
(2019.11.21. 大津市北小松)
(参考文献)
ZENNOSKE IWATSUKI, JAN-PETER FRAHM, TADASHI SUZUKI, NORIWO TAKAKI(2002). GEMMIFEROUS SPECIES OF CAMPYLOPUS IN JAPAN:J. Hattori Bot. Lab. 92.
岩月善之助・鈴木直(2002).蘚類新種記載の裏話:蘚苔類研究 8(5), 151-152.
樋口正信・ 高野信也(2003).茨城県に見つかったイクタマユハケゴケ:蘚苔類研究 8(7), 222-223.
◎ イクタマユハケゴケはこちらにも載せています。
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