木の枝に着生している上の写真のハネゴケは・・・
上の2枚の写真は、1枚目は腹面から、2枚目は背面から撮った写真です。 一見ヨコグラハネゴケに似ているのですが、これに特徴的な途中から折れている葉はみあたりません。
側面で頻繁に分枝していますが、ハネゴケ属(Plagiochila)の分類では、この分枝型が大切で、平凡社の図鑑の検索表でも分枝型が重視されています。 平凡社のハネゴケ属(Plagiochila)の検索表を使うには、分枝がムチゴケ型、ハネゴケ型、ヤスデゴケ型のいずれであるかを見る必要があります。
ムチゴケ型とハネゴケ型はいずれも枝の起源となる細胞が茎の髄の細胞に由来しますので、枝は茎の内部から表皮を突き破って出てくるため、突き破られた表皮は襟として観察できます。 ムチゴケ型の枝は腹葉の腋つまり腹面に出るのに対し、ハネゴケ型の枝は側葉の腋つまり茎の横に出ます。
これに対し、ヤスデゴケ型の枝の起源となる細胞は側葉の腹片になる細胞に由来しますので、表皮は破られず、したがって襟は存在しません。
上の2枚はこのハネゴケの分枝の型を観察するため、分枝付近の葉を取り除き(完全に取り除けず、葉の基部が残っています)、撮った写真ですが、襟は無いようです。 比較のため、襟のあるキハネゴケの分枝の様子を下に載せておきます。
(参考) キハネゴケ (2021.3.1.撮影) |
観察しているハネゴケがヤスデゴケ型分枝をすることは分かりましたが、ほとんどがヤスデ型分枝なのか、ヤスデゴケ型分枝「も」するのかは保留して観察を続けます。
上は葉(側葉)です。 ハネゴケ科の葉は瓦状についていますから、上の写真の上側の縁が腹縁、左下が背縁になります。 背縁基部は長く下延し、背縁はやや外曲して葉先に近い所に1~2歯があり、葉先は切頭で2~5歯があり、腹縁には5~10歯があります。 腹縁基部はやや耳状に張り出して短く下延しています。
上は葉身細胞で、トリゴンが発達していて、細胞壁には所々中間肥厚が見られます。 油体はブドウ房状です。
上の黄色の円内に腹葉があります。 腹葉は痕跡的で、殆ど葉に隠されていますので、葉を取り除いて撮っています。
以上の観察結果から、このコケはマキノハネゴケ Plagiochila nepalensis (平凡社の図鑑では旧学名の P. gollanii になっています)ではないかと思いました。 分布は埼玉県以南となっています。 しかし平凡社の図鑑では検索表にあるだけで、不安に思い、Mさんに資料を送っていただきました。 送っていただいた資料の、服部1949(植物研究雑誌第24巻)および M. L. So vol. 60 の図および解説を見ても、概ね一致しています。
(2021.3.3. 宮崎県日南市)
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