アオギヌゴケ科には同定の難しいコケが多く、平凡社の図鑑には「分類のもっともむずかしい科の一つである。」と書かれています。 なかでも Eurhynchium(ツルハシゴケ属)は、変異が大きく同定はむずかしい(平凡社)とされています。
Kさんが確信を持って同定できたというキノクニツルハシゴケ Eurhynchium squarrifolium を少し分けていただくことができました。 青森県で10月に採集されたものです。
上の2枚はいずれも乾いた状態ですが、葉は丸くつき、彙状になる傾向があるようで、開出したままです。
上は茎葉です。 広い基部からやや急に細くなって長く尖っていますが、どの葉も中ほどから大きく捩れていました。 葉縁には細かい歯があります。 葉の基部はほとんど下延せず、翼細胞はあまり明瞭な区画を作っていません。
上の写真では中肋の先端は捩れと重なり、はっきりしませんが、葉長の2/3の少し上まで延びています。 別の葉で・・・
上の写真も、中肋の先端は捩れと重なり分かりにくいのですが、中肋背面をほぼ横から見ていることになります。 Eurhynchium(ツルハシゴケ属)の背面の中肋先端は1個の歯で終わることが多いのですが、本種の茎葉では、雰囲気はあっても、中肋の歯は確認できないようです。
上は基部から1/4ほどの所の葉身細胞です。
上の2枚の写真は枝葉です。 枝葉は、葉形は茎葉とあまり違いませんが、茎葉より明らかに小さく、やはり捩れています。
上は茎の横断面で、中心束があります。
以上の観察結果からすると、これまでキノクニツルハシゴケとして載せていたこちらは本種では無く別種のようです。
なお、いただいた標本には蒴は無かったのですが、Kさんによると、蒴柄はざらついていたようです。
0 件のコメント:
コメントを投稿