2023-11-25

ムツヤノネゴケ(エゾヤノネゴケ)

 これまでもアオギヌゴケ科の同定は難しいと書いてきましたが、上の写真は、左にコツボゴケなど、いろいろ混生していますが、多くはムツヤノネゴケ Brachythecium noecicum(アオギヌゴケ科)だろうと思います。 なお、エゾヤノネゴケはシノニムでしょう。
 本種は、岩月(2012)の日本産蘚類の和名リスト(Ⅲ)などには Bryhnia noecica の学名で記載されていますが、平凡社にはムツヤノネゴケの名は無く、エゾヤノネゴケ Bryhnia tokubuchii が載せられていて、野口(1991)にもこの学名で載せられています。 なお、平凡社の Bryhnia(ヤノネゴケ属)の説明には、アオギヌゴケ属(Brachythecium)に似るとあります。

 枝はやや羽状に出ています。 茎葉の長さは 1.5~2mmです。


 上の2枚は茎葉です。 茎葉は卵状披針形で、基部近くが最も幅広く、葉先は漸尖して尖り、しばしばねじれます。 基部は広く下延します。 翼細胞は、あまり明瞭な区画を作っていません。 葉縁には鋸歯があり、葉先近くで少し外曲する傾向があります。 中肋は強壮で、多くの葉で葉先近くに達しています。
 枝葉は茎葉より小形です。

 葉身細胞は長さ 20~35μm、幅 4.5~7.0μm、上端にプロラ(パピラのようにはっきりしないかすかな突起)があります。 プロラは上の写真では分かりにくいのですが、赤い円で囲った所などで、どうにか分るでしょうか。

 前に「?」付きで載せたエゾヤノネゴケ(こちら)と比較すると、今回のものは中肋背面の先端が明瞭な歯で終わってはいませんし、葉身細胞の背面上端の小さな突起もはっきりしていません。 個体差なのか、どちらかが間違っているのかもしれません。

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