上は2023.7.16.に京都市北区の雲ケ畑で撮った写真です。 今日はこのコケを調べました。
茎葉と枝葉の大きさが、かなり異なります。 シノブゴケ科のようにも見えますが、毛葉はありません。 枝は次第に細くなっています。 茎葉は約2mmの長さです。
上は茎葉です。 ①葉の基部は広く茎に下延しています。 ヤノネゴケに似ているのですが、⑤翼細胞が明瞭な区画を作っていません。
②中肋背面の先端は歯で終っています(上の写真)。
葉縁は全周にわたり細かい歯があります(上の写真)。
③葉身細胞の背面上端には小さな突起があります(上の写真)。
上は枝葉です。
上は茎の断面で、④中心束が分化しています。
以上が観察結果ですが、①~④は Bryhnia(ヤノネゴケ属)の特徴ですが、⑤からヤノネゴケとするには疑問が残ります。
平凡社のヤノネゴケ属の検索表にはエゾヤノネゴケという種が載せられています。 この種をNoguchi(1991)で調べると、翼部は明瞭ではなく、茎葉の長い中肋が葉頂付近まで伸びていることでヤノネゴケと区別できるが、同じ地点から採集された植物でも、中肋が葉の先端よりもずっと下で終わることがあると書かれています。
エゾヤノネゴケである可能性もありそうですが、京都府のレッドデータブックには
「全国的に稀な種で、府内でもこれまでただ1ヶ所だけから知られている。この産地では何度も調査が行われているが、初発見以来報告はなく、その存続が憂慮される状態である。」
とあります(最初に書いたように、採集地は京都市北区です)。
エゾヤノネゴケの学名は、平凡社では Bryhnia tokubuchii となっていますが、現在はアオギヌゴケ属に移され、Brachythecium noesicum となっています。 アオギヌゴケ科は似た種が多く、このように属も種小名も変わるなど、まだ落ち着いた状態とは言えません。 上記の報告が無いというのも、そのことと関係しているのかもしれません。
こちらにもエゾヤノネゴケ(別名ムツヤノネゴケ)を載せていますが、いろいろ異なる特徴もあり、個体変異なのか別種なのか、悩ましいところです。
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