2025-10-07

タマゴバヒシャクゴケ

 以下に載せているのはタマゴバヒシャクゴケ Scapania subnimbosa だろうと思います。 奈良県の川上村で採集されたものを、9月24日のオカモス関西の顕微鏡観察会で分けていただきました。
 掲載まで時間がかかったのは、Scapania(ヒシャクゴケ属)は種間の違いが微妙なものも多く、そのこともあって分類もいろいろ変化し、調べるのが難しかったためです。
 タマゴバヒシャクゴケは以前から知られていたコケですが、平凡社にも保育社にも、和名も学名も載せられておらず、平凡社にあるキイヒシャクゴケ Scapania robusta が本種のシノニムになるようです。
 なお、片桐・古木(2018)には、タマゴバヒシャクゴケ Scapania subnimbosa の名前はありますが、キイヒシャクゴケは載せられていません。
 今回の同定でいちばん参考にしたのは、M氏からいただいた尼川(1967)です。

 大形のヒシャクゴケで、上の写真の長い方の長さは 12.5cmあります。 本種はキヒシャクゴケと似た特徴もあるのですが、それよりも大形です。

 上は少し乾いてきており、特に腹片は縁が反曲してきています。 上の写真で、腹片の長さは約 2.5㎜、背片の長さは約 1.5㎜です。

 上は腹片です。 腹片は卵形~倒卵形で、縁は密に細長い歯があります。 緑色の四角で囲った所はキールです。 キールは短く、当初はキールの無いムカシヒシャクゴケを疑いました。
 下は上の赤い四角で囲った所の拡大です。

 上は葉腋にある鱗片状の毛葉です。 腹片を茎から取る時に、いっしょに取れました。 毛葉の縁には長毛があります。

 上は背片です。 基部には不規則に分枝した長歯があります(黄色の矢印)。 緑色の四角で囲った所はキールです。

 歯は基部では2~3細胞幅で、1~5細胞からなる短列です(上の写真)。

 上は背片の先端近くの葉身細胞で、大きなトリゴンがあります。 なお、葉の基部では細胞は大きくなり、トリゴンは小さくなります。

 上は腹片基部の葉身細胞です。 トリゴンはほとんど無くなり、ベルカが見られました。

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