2020-03-23
キハネゴケ
写真はキハネゴケ Plagiochila trabeculata です。 分布は静岡県以南となっています。 枝分かれはほとんど無く、羽状にはなりません。 葉は細長く、重なっていません。 コハネゴケ同様、葉は基部から脱落し易く、1枚目の写真のように枝だけの部分が目立つ場合があります。 葉の脱落は無性生殖のためでしょう。
上は葉です。 歯は葉先近くに限られます。
上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、油体は楕円体で小粒の集合です。
腹葉は痕跡的です(上の写真)。
(2020.3.3. 屋久島)
2020-03-22
ヒメミズゴケモドキ
上はヒメミズゴケモドキ Pleurozia acinosa です。 倒木の上で育っていました。 分布は平凡社の図鑑では、屋久島、台湾、東南アジアとなっています。
先端に孔の開いた円筒形のものがいっぱいですが、これは不稔の場合に作られる花被であることはヤクシマミズゴケモドキの所に書きました。 本種は雌雄同株のはずですが、ほとんどが不稔であるということは、精子と卵細胞の成熟時期を大きくずらして自家受精を避けているのでしょうか。
上の写真ではほとんど葉が見えませんが、元来蘚苔類の「葉」は、種子植物の葉とはかなり異なった器官で、「種子植物の葉に形が似ているもの」と理解すべきでしょうから、光合成の主体が花被であってもいいのでしょう。 もちろん蘚苔類の「花被」も、種子植物の花被と似た位置につく器官ということで、機能は全く異なります。
別の所の樹幹で育っていたものも、不稔の花被ばかりが目立ちます。
上は群落をほぐして横から撮ったもので、花被をつけていない枝も写っています。 花被は不稔の場合に作られるものばかりです。 写真の右中央に破れた花被がありますが、中は空であることが確認できます。 花被の下には葉より大きな苞葉が見られます。 葉は2裂しています。
上は円筒形の花被の底を上から撮っています。 造卵器の存在を期待したのですが、小さな球形のものがそうであるのか、確認はできませんでした。
上は1枚の雌苞葉です。 花被をぐるりと捲いているのですが、剥がしてみると3裂しています。
上は花被のついている枝先付近ですが、いろんなものが写っています。 ①は花被です。 ②は雌苞葉で、この角度から撮ると3裂していることが分かります。 ④と⑤はどちらも葉ですが、形が異なります。 ④は一部が袋状になっていますが、⑤は2裂しているように見えますが、葉のことはひとまず置いて・・・
平凡社の図鑑では、「雄花序は短側枝となり,雌苞葉の直下につき,隠れる。」と書かれています。 このことを確かめるために、雌苞葉の下についている葉(④など)を押し下げてみると、たしかに③のようなものが現れてきました。 中のものを保護するかのように枝先の葉は膨らんでついていて、雄花序だと思われたので、これを顕微鏡で観察すると・・・
上が雄花序と思われるものの顕微鏡写真です。 枝先付近が分かるように、幾重にも重なってついていた葉をかなり取り去って写しています。 成熟した造精器があれば十分確認できる倍率のはずですが、造精器は確認できませんでした。 念のため、さらに葉を取り除いてもみたのですが、結果は同じでした。 たぶん時期的な問題だと思います。
観察対象を葉に戻します。 3枚目の写真や6枚目の写真の⑤に類する葉を1枚取って顕微鏡で観察したのが下です。
葉は2裂し、背片(上の写真の左側)と、それより少し大きな腹片(上の写真の左側)からなります。 裂ける深さは葉のついている場所などで異なり、上の写真の場合は浅い方です。 背片は円頭で、写真の腹片の先には小さな2歯があります。 写真の背片は、ミズゴケモドキ属全体の中では仏炎苞状背片になるのですが、背片の基部が張り出している場合でも、ヤクシマミズゴケモドキのように基部が合着することはありません。
上は6枚目の写真の④の葉で、茎に面する側の見える葉(左側)を、その反対側が見える葉(右側:腹片の基部が少し欠けています)にもたれさせて撮っています。 背片は袋状になっていて、茎に面する側の上部に小さな孔が開いています。 この袋状背片を持つ葉は花被をつける枝にのみ見られます。
上は葉身細胞です。 トリゴンが大きく、油体は球形で微粒の集合です。
(2020.3.2. 屋久島)
2020-03-21
ハネムクムクゴケ?
2020.3.2.に屋久島で撮った上の写真、ムクムクゴケの仲間には違いないのですが、枝と枝との間が広く、スマートな印象です。 顕微鏡で観察すると・・・
細胞と細胞の境は竹の節のようになっていて、油体には1~2個の眼点があります。 また、細胞壁の外側には突起が連なり、ボコボコしています。
日本のTrichocolea(ムクムクゴケ属)は、ムクムクゴケ T. tomentella、ハネムクムクゴケ T. pluma、イボムクムクゴケ T. japonica、コムクムクゴケ T. rudimentaris、イリオモテムクムクゴケ T. iriomotensis の5種とされています(片桐知之,2016)。 この記事を書いた当初は、ムクムクゴケ属に関する詳しい資料が手元に無く、イボムクムクゴケとしていました。 しかしその後、イボムクムクゴケの原記載論文(Katagiri etc.,2011)やムクムクゴケ属のモノグラフ(Hattoria 4巻)を送っていただき、見直したところ、イボムクムクゴケではなさそうです。
イボムクムクゴケの油体には眼点は無く、隔壁も節状に肥厚しないようです。 また、細胞壁の突起はいぼ状ですが、ハネムクムクゴケにもベルカがあります。
イリオモテムクムクゴケは油体に複数の眼点を持ちますが、小形で、均質ではなくかなりゴツゴツしているようです。
結論としては、細胞が長く、肉眼レベルの印象もこれまで見たものとは少し異なるのですが、ハネムクムクゴケの可能性が高いように思います。
◎ ハネムクムクゴケについては、こちらにも書いています。
2020-03-20
ミジンコゴケ
上はシフネルゴケに混じって生えていたミジンコゴケ Zoopsis liukiuensis です。 和名の「ミジンコ」は小さいことを意味しているのでしょうが、小さいというよりは、とても細いコケです。 これでムチゴケの仲間というのですから驚きです。
国内の分布は鹿児島県~琉球列島と小笠原となっています。 平凡社の図鑑では環境省(2007)絶滅危惧Ⅰ類になっていますが、2012年の第4次レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類になっています。 小さすぎて見つけにくいだけかもしれません。
上はスギの根元近くで半ば腐葉土化した中に混じっていた本種で、十分に光合成できない状態でほとんど透明ですが、それでもみずみずしい元気そうな姿をしています。
上は大きな群落を作っていた本種を少し剥がして背景を暗くして撮ったものです。 個々の細胞が見分けられます。 所々少し膨らんでいる所が葉ですが、葉を含めた茎の幅は 0.2~0.4mmです。
上は背側から撮った顕微鏡写真です。 葉は離在して4細胞からなり、そのうちの2つは茎の細胞と似ていますが、残りの2つは小さな細胞です。 小さな2つの細胞は互いに離れていますから、一般的な葉の説明のしかたに従えば、「葉は2裂し葉裂片は1細胞からなる」ということになるのでしょうね。
細胞の表面に菌糸と思われるものが見られますが、菌類との関係は寄生されているのか共生関係にあるのかは分かりません。
上は腹面から撮っていて、赤い円で囲った所に腹葉があります。 下はその拡大です。
腹葉は2裂しています。 腹葉を構成する細胞は小さく、平凡社の図鑑では腹葉は4~5細胞からなるとあります。 どこまでが腹葉なのかよく分かりませんが、上は5細胞からなる腹葉でしょうか。
(2020.3.4. 屋久島)
2020-03-19
ヤクシマミズゴケモドキ
写真はヤクシマミズゴケモドキ Pleurozia subinflata です。 太い木の枝に着生していました。 東アジア~東南アジアやハワイに分布しているようですが、日本での分布は屋久島のみのようです。
蒴がついているあたりを拡大してみました(上の写真)。 造卵器は側枝の頂にできるのですが、この造卵器を保護する役割を持つ花被に2つの型が見られます。 造卵器の中の卵細胞が受精すると、稜が多い長紡錘形の花被が作られ、花被の先端には長毛が見られます(上の写真では白っぽく写っています)。 受精しなかった場合も花被が発達するのですが、その場合は稜は無く、全縁の口がぽっかり開いた花被になります。
葉も複雑です。 上は花被をつけていない枝先ですが、①は全縁で鈍頭の葉先のように見えますし、②は2歯がある鋭頭の葉先のように見えますし、③は2裂している葉のように見えます。 じつは・・・
葉は重なりあっていて、一枚の葉を取り外すのはなかなか難しかったのですが、上が1枚の葉です。 葉はついている位置などによって形も大きさも少しずつ変化しますが、標準的な葉を選んで載せています。
葉は2裂し、背片(上の写真の左)と腹片(上の写真の右)になります。 背片は腹片より少し小さく、腹片との境から伸び出した部分と基部の葉縁が内曲し、基部で両者が合着しています。 この背片は仏炎苞状背片と呼ばれていて、本種の場合はほとんどこのような背片ですが、なかには袋状になって開口部が先端にある背片となることもあるようです。(私が初めてミズゴケモドキの仲間を見てその解説を読んだとき、この袋状背片と上記の受精しなかった場合の花被とを混同し、わけが分からなくなってしまいました。) また腹片は鋭頭で、多くの場合2歯があります。 なお、ミズゴケモドキ科に腹葉はありません。
上は葉身細胞です。 トリゴンは巨大で、油体は球形で微粒からなっています。
(2020.3.3. 屋久島)
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