2026-08-04

トカチスナゴケ

 上の写真、長い透明尖がめだつ蘚類はトカチスナゴケ Bucklandiella laeta でしょう(京都府南丹市 音谷の滝にて2026.7.20.に撮影)。 和名に「トカチ(十勝)」とありますが、北海道から九州にかけて分布する普通種です。 なお、本種の属名は、平凡社では Racomitrium となっていますが、この属(平凡社では1属14種)は現在では5属19種に整理されています(こちら)。

 乾いた状態では葉は茎に密着していますが、湿ると上のようになります。 茎は斜上し、湾曲する長い枝を出しています。


 葉の長さは3mm前後で、長い透明尖があります。

 上は葉身細胞です。 細胞壁が波状に肥厚しています。

 透明尖には不規則な低い歯はありますが、パピラはありません(上の写真)。

 透明尖の下部と接する葉身細胞は葉の中央部の葉身細胞に似た長い細胞です(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この部分の細胞が短くなり、波状の肥厚も弱くなります。

 葉の基部の葉縁には、波状に肥厚しない細胞が1列に10~15個並んでいます(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この細胞列は10個以下です。 なお、この波状に肥厚しない細胞は、若い葉では分かりにくいこともありました。

 上は葉の中央付近の横断面です。 葉は1細胞層で、中肋断面は2細胞層です。 下は葉の基部近くの横断面ですが(倍率は変えています)、上記の特徴は変わりません。

◎ トカチスナゴケはこちらにも載せています。

2026-08-03

オオホウキゴケ@7月


 オオホウキゴケ Solenostoma infuscum が造精器をたくさんつけていました(上の写真:京都府南丹市の音谷の滝にて2026.7.20.撮影)。
 本種は雌雄異株で、近くに花被などはみあたりませんでした。 葉は斜めにつき、広く開出して密に重なっています。

 葉は 1.5mm前後、仮根は多く、淡い赤紫色です。

 葉は卵状舌形で円頭です。

 葉身細胞は薄壁で、トリゴンは大きく、油体は各細胞に4~6個あり、球形~楕円体で、微粒の集合です。
 上は葉の基部の細胞で、油体などは明瞭に観察できたのですが・・・

 上は葉縁の様子です。 葉の中上部の細胞内は写真のように物質が充満しているように見えます。 この物質、反射光で見ると緑色に見える(=葉緑体が混ざっているはず)のですが、透過光で見ると、上のようにあまり光を通さず(=濃度が高い?)、黒っぽく見えます。 これまで私が見たオオホウキゴケは、いつも葉の細胞の多くがこのような細胞でした。

 上は細胞表面にピントを合わせています。 細胞表面には弱いベルカがあります。

 本種は普通種ですが、割合に多形で葉形、大きさなどは変化しやすく(井上『日本産苔類図鑑』の「ノート」)、似た種も多く、同定にはなかなか自信が持てず、何度もブログに載せることになってしまいます。
 本種は冬季にはしばしば赤色を帯びます。 冬を越した春先(3月初旬)の様子をこちらに載せています。
 胞子散布も春先です。 その様子をこちらに載せています。 そして4月になると、瑞々しい緑の葉を広げはじめます(こちら)。