2022-07-13

リシマキア・キリアータ

 

 写真は西宮市の北山緑化植物園で咲いていた Lysimachia ciliata (リシマキア・キリアータ) です(2022.6.24.撮影)。 アメリカクサレダマという和名があるのですが、学名のカタカナ読みの方がよく知られているようです。

 北アメリカ原産の多年草で、写真のものは園芸的に少し品種改良されていますが、原種は花の中心部の赤い色がもう少し薄いようです。
 日本に自生する身近な Lysimachia属の植物としてオカトラノオがあります。 花の付き方が違うので、かなりイメージは異なりますが、葉の雰囲気はよく似ています。

 花は、花冠の基部近くまで裂けていますが、合弁花で、オシベは5本、メシベは1本です。


2022-07-11

タゴガエル

 コケの写真を撮っていて、ふと横を見るといたカエル、タゴガエル Rana tagoi tagoi だと思います。 おっとりとしたカエルで、動こうとしませんでしたが、コケを撮りたいので写真は1枚だけ。
 和名を漢字で書くと「田子蛙」で、昔は「田にいるかわいいカエル」だと思っていたのですが、学名を見て人名だと気づきました。 調べてみると動物学者の田子勝彌氏への献名のようです。 林床で昆虫や陸貝などを食べて生活するカエルで、水かきはあまり発達していません。 体は比較的太く、のどから胸にかけて細かく黒い斑点がたくさんあります。 体の色は褐色系ですが、カエルの体色は変化しますので、模様はあまりあてになりません。

(2022.6.20. 神戸市北区 道場)

2022-07-10

ヒロハシノブイトゴケ

 京都市北区雲ケ畑で 2022.7.3.にコケ観察会があり、上はそこで見たヒロハシノブイトゴケ Trachycladiella aurea です。 茎は長く伸び、不規則に分枝しています。 古い葉は褐色を帯びています。
 川の対岸の木に着生し、垂れ下がっていたのですが、長靴ではなかったので、観察会主催者の西野さんに採集してきていただきました。 そのような理由で、生育状況を示す写真はありません。

 上は乾いた状態で、縦方向に伸びているのが茎です。 茎よりも枝の方が葉を扁平に密につけ、太く見えています。 枝の幅は葉を含めて2~3mm、枝葉の長さは約2mmです。 後に書くように葉には多くのパビラがあり、このパビラが光を乱反射させるため、葉には光沢がありません。

 上は枝葉です。 葉先は長く伸び、中肋は細く葉の中部で終わっています。

 葉縁には細かい歯があります(上の写真)。

 上は葉身細胞です。 狭菱形~細長い六角形で、長さは 20~35μmですが、細胞壁沿いに多くのパビラが密に並び、細胞の境界は不明瞭です。

◎ ヒロハシノブイトゴケはこちらにも載せています。

2022-07-09

ハリミズゴケ

 

 鳥海山の麓、祓川キャンプ場(標高 1,150m)にあったミズゴケ、ハリミズゴケ Sphagnum cuspidatum のようです。 半ば水に浸かっていました。(撮影:2022.5.31.)


 本種は繊細なものからやや大形のものまで、いろいろです。 今回のものは、長さは長いのですが、時期的なものか、特に上部は繊細でした。

 上は茎の表皮細胞です。

 上は茎の断面です。 茎の表皮細胞は2~3層ですが、木質部との境はあまりはっきりしません。

 茎葉は舌状三角形で、舷は基部で広がっています(上の写真)。

 茎葉の葉先には鋸歯があります(上の写真)。 右下は倍率を上げて明暗を調節した写真ですが、茎葉上部の透明細胞には赤い矢印で示したような螺旋状の肥厚がみられます。

 上は枝葉です。

 本種の枝葉の葉縁には数細胞の層からなる舷があります。

 枝葉の先端は細長く尖るか、上のような狭い切形です。 上は腹面から撮っていますが、下は先端から1/4ほどの所の背面から撮った写真です。 両者を比較すると・・・

 本種の枝葉の透明細胞には背腹両面ともほとんど孔が無く、所々に偽孔があるのみです。
 腹面からの写真と背面からの写真を比較すると、葉緑細胞はどちらもはっきり写っていますが、透明細胞と比較しての幅が背面からの写真で広くなっています。 このことから、葉緑細胞は腹面にも背面にも開いていますが、背面に広く開いていることがわかります。

 枝葉の断面も載せておきます。 上が腹面、下が背面です。

 上は枝のレトルト細胞です。 本種のレトルト細胞の先端は突出していません。

◎ ハリミズゴケはこちらにも載せています。

2022-07-07

ナガハシゴケ

 上は 2022.5.23.に箕面公園で撮影したコケで、大きな礫岩上に育っていました。 蒴をつけている姿や顕微鏡で葉を観察した結果からナガハシゴケだと思ったのですが、平凡社の図鑑を見ると「(ナガハシゴケは)樹幹や枝に着生する。」と書かれています。 私も何度もナガハシゴケを見たことはあるのですが、いつも樹幹や枝で、岩についているのを見た記憶がありません。 ナガハシゴケではないのかもしれないと疑問を持ち始めると、なんだか葉も細すぎるように思いました。
 ナガハシゴケに似たコケを図鑑で調べても、分かりません。 悩んだ挙句、「岡山コケの会」の世話人代表をしていただいている西村先生に同定をお願いしたところ、やはりナガハシゴケ Sematophyllum subhumile でした。 西村先生によると、植物体が小さく、かつて関先生がセイナンナガハシゴケとしていた型かと思うということでした。 ナガハシゴケとセイナンナガハシゴケは内蒴歯の間毛の有無で区別されていたが、はっきりとした区別点ではないように思うということでした。 なお、本種は岩上にも育つようです。

 枝の幅は葉を含めて約1mmです。 上の写真の蒴柄の長さは約6mm、平凡社では本種の蒴柄の長さは3~10mmとなっています。

 上は枝葉です。 平凡社の図鑑では長さ1~1.5mmとなっていて、上の写真にもあてはまります。 最初に葉の形を問題にしたように、今までに見た本種の葉より細い印象なのですが、図鑑には狭卵形~披針形となっていますから、こんなものなのかもしれません。

 葉の基部の細胞は黄色で、翼部の細胞は大きな楕円形です。 中肋はありません。

 葉身細胞は幅約5μm、長さは60~80μmでした。

 今回のナガハシゴケは胞子を散布していましたが、これまでに載せた本種を策の様子に注目して一覧にしてみました。
  5月下旬 胞子散布開始時期(今回とほぼ同じ)
  6月中旬 帽をつけた若い蒴
  9月下旬 胞子散布ほぼ終わり
 このようにしてみると、本種の胞子散布時期は、定まっていないのか、少なくとも特定の時期のみではないようです。