上はヤマトフタマタゴケ Metzgeria lindbergii で、毛を生やした多くのシュートカリプトラが見えます。 シュートカリプトラとは、胞子体の保護器官であるカリプトラの一種ですが、真正のカリプトラが造卵器に由来するのに対し、造卵器に加えてその周囲の茎の細胞も関与している器官です。 濡れているからかもしれませんが、中の胞子の色が透けて見えているようで、胞子が未熟なものは緑色で(上の黄色の矢印)、胞子が成熟していると黒っぽくなっているのだと思います(赤い矢印)。
上は葉状体の一部を腹面から(=裏側から)撮っています。 雨の後でたくさんの砂などがついていますし、取り出す時にあちこち破れてしまっています。
本種は雌雄同株です。 造卵器も造精器も葉状体の腹面の中肋部から分枝した短枝の背面につきます。 雌枝にできた造卵器は、上に書いたようにシュートカリプトラとなり、受精卵からできた胞子体を保護します。 シュートカリプトラは胞子体が若いうちは葉状体の腹面に隠れていますが、胞子体が大きくなるにつれ、頸を伸ばして背面からでも見えるようになります。
造精器は雄枝の中肋の左右にできるのですが、この雄枝の縁が著しく反り返り、造精器を包み込むようにして保護します。 上の写真で「中に造精器」と書いたのは、この雄枝が反り返って半球形になったものです。
上はシュートカリプトラの断面で、実際の状態とは上下を逆にしています。 中に胞子体が入っています。 下は上の一部の拡大です(少し回転しています)。
シュートカリプトラの断面を作る時に、当然蒴も切れていますので、蒴の中にあった胞子や弾糸の一部も蒴の外に出ています。 弾糸は1本鎖のらせんです。
◎ この胞子体が成熟し、蒴がシュートカリプトラの外に出て胞子を散布している時期の様子をこちらに載せています。
上は葉状体と、その中肋から枝分かれする雄枝と、その背面につく造精器の断面です。 なお、中肋部の表皮細胞は、背面、腹面とも、2つの細胞が横に並んでいます。
(2020.6.15. 兵庫県 六甲山)
◎ ヤマトフタマタゴケはこちらにも載せています。