2020-09-15
イボミズゴケ
たくさんの胞子体をつけている写真のミズゴケ類、調べた結果はイボミズゴケ Sphagnum papillosum でした。 せせらぎの横の斜面で育っていました。
上のスケールの数値の単位はcmで、大型のミズゴケです。
開出枝の枝葉はボート状に深く凹んでいます。
ミズゴケ類のように1つの属の中に多くの種が存在する場合、属と種の間に「節」という分類段階を設けます。 平凡社の図鑑ではミズゴケ属の節の検索表は茎や枝の表皮細胞の様子から始まります。
本種の茎の表皮を取って顕微鏡で観察すると・・・
上は表皮細胞の表面にピントを合わせて撮った写真で、細いらせん状の肥厚が見られます。 7つの節に分けられるミズゴケ属のうちで、このような肥厚が見られるのはミズゴケ節のみです。 この節に分類されているのは、日本産ミズゴケ属約35種のうち、5種しかありません。
下は上と同じプレパラートの同じ場所ですが、少しピントの合う場所を下に持ってくると・・・
孔が観察できます。
上は茎の先を引きちぎって茎葉を見易くして撮った写真です。 今回は枝葉との大きさの比較もできるように撮ってみました。 茎葉は舌形です。
上は茎葉です。 本種の茎葉には舷はありません。 上部の縁が折れていますので、葉形を見るにはふさわしくありませんが、この写真を持ってきたのは、葉縁が下部まで細く房状に裂けているからです。 葉縁が細く房状に裂けるのは本種の特徴の1つですが、多くは茎葉の上部に限られます。
上は別の茎葉の上部の縁の拡大です。
上は枝葉です。 枝葉はボート状に深く凹んでいますので、カバーグラスで押さえられると、本来の枝葉と少しイメージが違ってきます。
上は枝葉背面の拡大です。 3個の透明細胞の接合点に3子孔(triple pores)があります(赤い円)。
上は枝葉の横断面で、上方が腹面、下方が背面です。 本種の葉緑細胞は楕円形~樽形です。 この葉緑細胞と透明細胞の接する壁に細かく密なパビラがあり、このパピラをイボに例えたのが和名の由来のようなのですが、上のようにかなり拡大してもパピラを確認することはできませんでした。
※ 上の写真でも少し色が濃くなっている所がパピラのようです。 こちらではもう少し拡大してパビラを観察しています。(2021.8.18.追記)
上は茎の横断面です。 表皮細胞は3~4層です。
(2020.8.30. 北海道 苫小牧市 標高230m)