2021-03-08

トサノゼニゴケ(雄株) ②

 昨日はトサノゼニゴケ(トサゼニゴケ) Marchantia papillata ssp. grossibarba の葉状体について書きました。 今回は雄器托(雄器床)の観察記録です。

 雄器托の傘の裏面にも鱗片があります(上の写真)。 これを見ても雄器托は葉状体と基本的には同じつくりになっていることが分かります。 写真の左側にはたくさんの仮根も写っています。

 上は雄器托の柄の断面です。 雄器托の柄も葉状体と組織的に非常によく似ていることはゼニゴケのところで書きました(こちら)。 上の写真の上側が葉状体の背面に相当し、葉緑体も見られます。 その反対側、写真の下方には1対の褐色の楕円形のものが見られます。 その片方を赤い長方形で囲みましたが、その拡大が下の写真です。

 楕円形の部分では、葉状体の腹面にあった仮根が束になっています。 上の写真を見ると、仮根の左右から柔組織が伸び出して仮根の束を閉じ込めている様子がよく分かります。 この仮根の束は毛管現象によって通導組織のような役割を担っていると考えられます。 この1対の仮根の束を、平凡社の図鑑では「溝は2条」と表現されています。

 上は雄器托の傘の表面ですが、葉状体の表面同様、たくさんの気室孔が見えます。 下は上の赤い線で切った断面です。

 傘の表面が欠けてしまっていますし、切断時に造精器が落ちてしまいましたが、傘の内部に造精器が並んでいたことは分かります。 造精器が成熟すると精子は傘の表面に放出されます。 傘の縁が上に反っていますので、精子は傘の表面に溜まり、雨滴などが傘にあたることで精子が飛び散る仕組みになっています。
 下は上と直交するように作った切片です。

 少し厚めに切片を作ったので、造精器を残す事ができました。

 上は雄器托の傘の表面にある気室孔の断面です。

◎ 本種は雌雄異株です。 雌器托をつけた雌株の様子はこちらに載せています。

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