中部山岳国立公園の八方尾根は、八方池の少し上まで蛇紋岩で形成されています。 蛇紋岩は、マントル上部のかんらん岩が地下深部で水分の作用を受けて変質してできる岩石で、八方尾根では、火山活動などに伴う激しい隆起と浸食により、地表に出てきています。
蛇紋岩は水分を含むと風化し易く粘土質となり、また成分として多く含まれているマグネシウムが植物の水分吸収能力を低下させることから、高木が育ちにくく、このあたりの森林限界 2,500mよりはるかに低い場所で高山植物が自生し、特殊な環境下での固有種も多く見られます。
ハッポウタカネセンブリ Swertia tetrapetala var. happoensis (上の写真)も、八方尾根を中心とした蛇紋岩地帯の特産です。 学名から分かるように、タカネセンブリの変種で、母種のガク片が花冠の裂片とほぼ同長であるのに対し、本種のそれはずっと短くなっています。
上の写真の背景にある岩も蛇紋岩です。 蛇紋岩は暗緑色で、ヘビの皮に似た模様があることからの名前ですが、マグネシウムと共に鉄分も多く、長年空気にさらされた岩では、鉄の酸化により、上の写真のような色になります。
花冠の各裂片の中央には緑色の蜜腺があり、その周囲には長毛があります。
(2021.7.16. 八方尾根)
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