2023-01-26

オカムラケビラゴケのひも状の茎に関して

 茎の先がひも状になったオカムラケビラゴケ Radula okamurana を1月22日のこのブログに載せましたが(こちら)、Facebookにも上の写真を載せました。 そして、コメントでこのひも状の茎は先端に少し大きな葉をつけ、その葉に無性芽をつけるのではないかと書いたところ、いろいろなレスポンスをいただきました。 そこで、もう少し詳しく、このひも状の茎について観察することにしました。


 ひも状になっている茎についている鱗片状の葉を見ると、色の違いや、浅く2裂している葉もあり、2つの部分に分けられるようです(上の写真)。 私は最初、これは小さくなった背片と腹片だと思っていました。 そして茎の先端に近づくにしたがって背片が次第に大きくなり、茎の先端近くになって急に背片が大きくなるのだと思っていました。 しかし鱗片状の葉の葉先は尖っています。 背片がこのように尖ることは無いでしょう。
 一方通常の茎についている腹片を見ると、基部は膨らみ、先は背片に接し、しばしば尖ったり突出したりしています。 これらのことから、鱗片状の葉の2つの部分は、腹片の基部と葉先部分と考えればよいのではないかと思います。
 したがって、ひも状になっている茎の部分では、背片は無くなっていることになります。 ひも状になった茎では、背片は次々と脱落し、茎の先端部にのみ残っているのだと思います。  山田(1994)は、このひも状の茎は葉上片(本稿では「背片」としています)が脱落したもので、よく似たヒメケビラゴケと識別する良い特徴の一つとしています(下記参考文献)。 平凡社でも、「ひも状の枝は背片が落ちやすく、(以下略)」と書かれています。

 上は腹面からひも状の茎の先端部を撮っています。 ルーペレベルの観察では茎先端の葉は2枚と思っていたのですが、上の写真のように何枚もの葉が密着して重なりあっています。(上記山田(1994)には1枚と3枚の図が載せられています。) また、この葉は腹側から背側へと次第に大きくなっているようです。
 そして・・・

 ひも状になった茎を何本も観察しているうち、上の写真のような状態の茎をみつけました。 この茎の写真を撮っていると、立ち上がったようになっている葉がぽろっと外れました。 下がその葉です。

 以上の観察結果から、オカムラケビラゴケは、最初に書いたようなひも状の茎の先端の小さな葉に無性芽をつけるのではなく、茎の先端で作られた葉のうち、背片は少し大きくなるとすぐに脱落し、この脱落した背片によって無性生殖を行っているのではないかと思います。 現地で育っている所を撮った写真を見ると、上記のように考えると納得できるような写真もありました(下の写真)。

 下記参考文献を紹介いただき、観察のポイントを示していただいた秋山弘之先生に深く感謝いたします。

【参考文献】
山田 耕作:オカムラケビラゴケとヒメケビラゴケについて.日本蘚苔類学会会報6(4),1994.


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