2021-02-17

アツブサゴケモドキ



  コンクリート.製の擁壁に大きな群落を作っていた写真のコケ、調べた結果はアツブサゴケモドキ Palamocladium leskeoides のようです。

 茎の上部でたくさんの枝を出し、手の指を広げたようになっています。 属名の Palamocladium は「手のような枝」という意味だと思います。 枝先が鞭枝状に伸びている枝も、わずかですが、見られました。

 葉は密についていて、長さは 1.5~2mmです。 上は乾いた状態ですが、葉は縮れもせず、枝に接着もしていません。 試しに湿らせてみましたが、全体に柔らかくなるだけで、葉のついている様子はほとんど変化しませんでした。

 乾いた状態では葉はもろいようで、1枚とりだそうとすると、上のようにあちこち裂けてしまいました。 本種の場合、葉を枝から外す時は、湿らせてからの方が良さそうです。

 葉は三角状披針形で細く漸尖し、深い縦ひだがあります。 葉縁には全周にわたり細かい歯があります。 中肋は葉先近くに達しているのですが、上部ではやや不明瞭になり、葉によっては細胞の長さの違いを確認しなければ葉身細胞と区別できない場合があります。

 上の写真のように葉先が細長く伸びている葉もあります。

 葉身細胞は長楕円形~線形で、長さは 35~50μmです(上の写真)。

 翼細胞は丸みを帯びて短く、暗く見えます(上の写真)。

(2021.2.11. 箕面国定公園)

こちらには蒴をつけたアツブサゴケモドキを載せています。

2021-02-16

コゴケモドキ

 

 ややオーバーハングぎみの石灰岩上に大きな群落を作っていた写真のコケ、平凡社の検索表をたどればコゴケモドキ Weisiopsis anomala (平凡社ではホソコゴケモドキとなっています)に落ちます。 平凡社の図鑑では「山地林縁の日陰の土上に生育。」となっていて、岩上であるのが少し心配でしたが、土上に育つ本種も観察することができ(こちら)、それと比較しても間違いなさそうです。

 上は乾いた状態で、下は湿った状態です。 湿った状態では葉は葉縁を含めて平坦ですが、乾いた状態では葉は管状になっています。 このことは、上の写真では小さくてよく分かりませんが、湿った状態で葉の横断面を作っていると、乾くと切片がクルッと環状になることでよく分かります。

 葉の長さは1~1.5mm、蒴柄の長さは3~5mm、僧帽型の帽は長く、1~1.5mmあります。

 葉はへら形で葉先は円鈍、葉基部の大形で薄壁の透明細胞群は中肋に沿ってせり上がり、中部の緑色細胞群と逆U字形の境界をなしています。

 上は葉の中肋付近の横断面です。 中肋のステライドは背面側だけにあります。 また、葉身細胞は腹側にマミラ状に膨れています。

 上は腹面から見た葉身細胞です。

 上は蓋のある蒴と蓋の取れた蒴です。 蒴には縦の条があり、蓋には嘴があります。

 蒴を縦断して胞子を出したところ、外側から軸柱もはっきり見えるようになりました(上の写真)。 蒴歯は1列(内蒴歯のみ)16本で、直立しています。

 蒴歯の表面には微小なパピラが密生しています(上の写真)。

(2021.2.11. 箕面国定公園)

2021-02-15

シシゴケ

 マツの木の基部にあった、乾いた状態のシシゴケ Brothera leana です。 白緑色で、少し光沢があります。


 湿らせると葉が開きましたが、茎の頂部の葉腋につく無性芽の多くは既に落ちたのか、残念ながら“花のように見える”状態ではありませんでした。

 葉の長さは、上の写真の最も長い葉で 2.5mm、平凡社の図鑑では 1.5~3mmとなっています。

 葉は全縁です(上の写真)。

 上は葉の基部を横から見ています。 中肋は細長い細胞からなり、葉の幅の半分以上を占めていますが、境界は不明瞭です。 なお、葉の中~上部では中肋が大半を占めています(下の写真)。

 上は葉の断面で、大部分が中肋です。 中肋の横断面は数細胞層からなり、ガイドセルとステライドを欠き、葉緑細胞は中層または腹側にあります。

 上は無性芽です。

(2021.2.11. 箕面国定公園)

2021-02-14

アナナシツノゴケ

 

 写真は、ツノはまだ短いのですが、アナナシツノゴケ Megaceros flagellaris でしょう。 葉状体の縁は鋸歯状になっています。

 上は葉状体の断面です。 葉状体に細胞間隙が無いのは本種の特徴の1つです。
 背面が盛り上がりった中にある色の濃い部分は、ラン藻が共生している所です。 ラン藻が共生している場所はそんなに多くありませんが、その部分を狙って切っています。 上の写真ではこの部分の色が濃すぎてよく分かりませんので、明るくして拡大したのが下の写真です。

 ラン藻(シアノバクテリア)は原核生物(核という構造を持たない)で、この一種が他の細胞に取り込まれて葉緑体となったとされています。 ツノゴケ類の葉緑体は大きいこともあるのですが、それよりずっと小さいことが分かります。
 ところで、上の写真の葉緑体の内部には細かい顆粒が見えます。 これは貯蔵多糖類に囲まれたピレノイドだと思います。 ピレノイドはソウ類には見られますが、蘚類や苔類を含む他の陸上植物には見られないもので、ツノゴケ類がソウ類に近い側面を持つことを示しています。

 上はツノの基部の断面です。 胞子体を包む包膜は葉状体と同じ配偶体の組織で、連続しています。 ツノゴケ類の胞子体には蒴柄がありません。 蒴の中央部に位置する軸柱も、うっすらと見えています。

 上は包膜から外に出た蒴の細胞を蒴の内側から撮っています。 アナナシツノゴケの名前の「孔無し」は、蒴に気孔が無いことに由来し、そのことは上の写真でも一応確認できますが、蒴の外側から細胞を観察した方がはっきりします。 なお、ナガサキツノゴケの気孔のある蒴の様子はこちらに載せています。

(2021.2.11. 箕面国定公園)

◎ アナナシツノゴケはこちらにも載せています。

2021-02-12

アカツブタケ、ミドリコケビョウタケ

  箕面公園で見た小さなチャワンタケ亜門(子嚢菌類)のきのこ2種です。

● アカツブタケの一種 Nectria sp.


 朽木で育っていました。 ほぼ球形で、径は約100μmです。 頂に口があり、ここから胞子が出るのでしょう。
 子嚢菌には有性生殖による子嚢胞子を形成する「完全世代」と、無性生殖による分生子を形成する「不完全世代」を有するものがありますが、アカツブタケ属も完全世代と不完全世代があり、上は完全世代です。 ちなみに、不完全世代は微小な棒状ということです。

● ミドリコケビョウタケ Mniaecia jungermanniae


 数種の混生している苔類の間に顔を出していましたが、調べたところではアカウロコゴケ Nardia assamica に寄生していました。 子嚢盤の径は約1mmです。
 苔類に寄生するきのこで、海外では ツキヌケゴケ属(Calypogeia)、ヤバネゴケ属(Cephalozia)、コヤバネゴケ属(Cephaloziella)、シロコオイゴケ属(Diplophyllum)、ツボミゴケ属(Jungermannia)、スギバゴケ属(Lepidozia)、タカネイチョウゴケ属(Lophozia)、トサカゴケ属(Lophocolea)等が寄主として記録されているそうです(属名は論文発表時のもの:現在は属が変更されているものもあります)。


 子嚢は棍棒形で薄壁、側糸は糸状で先端は膨れています(上の写真)。 子嚢内では8胞子が一列に並ぶのですが、後には下の写真中央のように部分的に2列になることがよくあります。

 上の写真には未熟な子嚢も写っていて、壁はやや厚くなっています。
 子嚢胞子は卵形ないし楕円形でほぼ無色、薄壁、平滑で、内容は 2μmほどの泡状の油球で満たされています。
※ 上記の内容については「 Discomycetes etc. 」のミドリコケビョウタケのページを参考にさせていただきました。

(2021.2.11. 箕面公園)