許可を得て採集されたミズゴケ数種を北海道から送っていただきました。 上の写真はそのうちの1種で、以下の観察の結果、ウスベニミズゴケ Sphagnum capillifolium var. tenellum ではないかと思います。
上の写真は現地(北海道)で 2020.11.15.に撮影されたもので、名前のとおり薄紅色ですが、季節が進むともっと濃い紫紅色になっていくのだろうと思います。 ミズゴケ類には赤みを帯びる種も多いのですが、赤みを帯びるか帯びないかも、同定時の重要な特徴の1つになります。
茎の先付近を拡大してみました(上の写真)。 枝葉は不明瞭に5列に並んでいます。
ミズゴケの仲間としてはそんなに大きくなく、繊細です。 上は乾いた状態で、白っぽくなっていますが、茎の赤い様子がよく分かります。 この赤い色は・・・
上は茎の横断面です。 茎の赤い色は透明な表皮細胞をとおして見えている色です。
気泡がたくさん入ってしまいましたが、上は茎の表皮細胞です。 茎の表皮細胞は長方形で、表面に螺旋状の肥厚は無く、孔もみあたりません。
上は、基部が割れてしまいましたが、茎葉を腹面から撮っています。 茎葉は二等辺三角形で、舷は狭く葉の上端近くに達し、基部では広がり、葉の幅の1/3~1/2ほどになっています。
下は上の上端近くを拡大して撮った写真です。
茎葉の葉先は広く丸みを帯び、歯があります。
上は茎葉の上端近くを背面から撮っています。 膜壁は背面からの方が明瞭で、糸も見られます。
上は枝葉です。 枝葉は卵状披針形で、先端に少数の歯があります。
上は枝葉の上部を背面から撮っています。 3子孔など、多くの孔が見られます。
上は枝葉の中央部を背面から撮っています。 孔はわずかしかありません。
上は枝葉の横断面で写真の上方が腹面、下方が背面です。 葉緑細胞は三角形で、腹面に広く開き、背面には狭く開いています。
上は枝葉を取り去った枝の一部を拡大して撮った写真ですが、写真の中央上にレトルト細胞と呼ばれているフラスコ状の細胞が写っています。 このレトルト細胞の有無や形も種を同定する際の特徴の1つになります。
◎ こちらには胞子体のあるウスベニミズゴケを載せています。
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