2020-05-21

ミドリツヤゴケ@5月


 写真は樹幹のミドリツヤゴケ Entodon viridulus だろうと思います。 かなり乾いた状態で、植物体は淡緑色でした。 葉は乾いても縮れていません。
 蒴柄は黄色です。 平凡社の図鑑によると、日本産の Entodon(ツヤゴケ属)は13種あるのですが、そのうち蒴柄が黄色なのは本種とツクシツヤゴケ E. macropodus (以下、ツクシと書きます)の2種しかありません。


 上の写真では茎葉が少なく長さも測定しにくいのですが、2mmに届かないようです。 ツクシは全体的にもう少し大型で、葉の長さも、平凡社では2~2.5mmとなっています。


 葉は楕円形です。 中肋ははっきりしません。 ツクシの葉は卵形~狭卵形です。


 葉先付近には細かい歯が見られます。


 翼部には方形の細胞が並んでいます。


 上の写真の葉身細胞の長さは 90μm前後です。 ツクシの葉身細胞は 120~160μmです。


 上は外蒴歯にピントを合わせています。 上部が失われていますが、本来の外蒴歯は線状披針形です。


 上は内蒴歯にピントを合わせています。 内蒴歯は線形です。 野口(1994)の図を見ると、ツクシの内蒴歯には細かい縦の条がたくさん入っています。

(2022.5.1. 奈良県 柳生街道)

こちらには12月末の、蒴に帽がついている状態のミドリツヤゴケを載せています。

2020-05-20

ヤマトコミミゴケ


 フルノコゴケなどにぴったり張り付いたコケ、この葉上苔ならぬ苔上苔は・・・





 ヤマトコミミゴケ Lejeunea japonica のようです。 背片は卵形、腹片は切頭で第1歯は単細胞で明瞭、第2歯ははっきりしません。 腹葉は横に広く、1/3~1/2まで広V字形~弓形に2裂しています。
 今回はどういう条件が作用したのか、たくさんある油体を含む細胞内含有物がドーナッツ状に集まって色濃くなっていました。


 胞子を出した後の胞子体も残っていました。 蒴は5裂しているようです。 蒴はこれまでも載せていますが(こちらなど)、顕微鏡で観察したことは無く、いつも5裂しているのかは確認していません。

◎ ヤマトコミミゴケはこちらにも載せています。

2020-05-19

アサイトゴケ



 写真はアサイトゴケ Pseudoleskeopsis zippelii だと思います。 渓流脇の岩上を覆っていました。


 一次茎は基物上を這い、そこから立ち上がっている二次茎は長さ1cm前後、枝葉の長さは1~1.5mmです。 上の写真には、右方にこれから伸びる若い胞子体が、左方には苞葉のみが残っていますが、この苞葉の長さは3mmほどもあります。


 上は枝葉です。 中肋は太く、葉先近くにまで伸びています。 翼部はほとんど分化していません。


 葉先は鈍頭です(上の写真)。 葉縁の細かい歯は全周にわたり存在します。


 上は葉身細胞です。


 上は葉の背面の内曲している所の顕微鏡写真で、細胞を斜め上から見ていることになります。 なお、右上が葉先方向です。
 葉身細胞の背面上端に突起があります。 この突起は目立たず、1枚上の葉身細胞の写真のように真上から見ると、ほとんど存在が分かりません。
 この突起は葉の横断面(下の写真)でも確認できます。


 上は葉の横断面です。 中肋にはステライドもガイドセルもみあたりません。


 上は一次茎の横断面です。 表皮には厚壁で小さな細胞が並んでいます。 上の写真では色のついた中心束があるようにも見えますが、色のついているものはゴミであることを倍率を上げて確認しています。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

こちらには蒴をつけたアサイトゴケを載せています。

2020-05-18

キダチヒラゴケの胞子体



 写真はキダチヒラゴケ Homaliodendron flabellatum です。 朽木の上で育っていました。 本種は雌雄異株で、ここに載せたものは、以下に書くように、雌株でした。


 小さくて見逃しがちですが、あちこちに胞子体がついていました。 上の写真の左側の蒴は蒴歯が見えていますし、右は帽が残っています。 胞子体の基部は苞葉に包まれています。
 下はこの2つの胞子体を拡大したものです。


 蒴柄の長さは2~3mm、帽は僧帽状で、上向きの長毛があります。


 顕微鏡の光が透る程度に雌包葉を取り去り、蒴柄の基部付近を観察しました(上の写真)。 蒴柄の基部付近には生長しなかった卵細胞を持つ造卵器がたくさん見えます。 生長しなかったのは受精しなかったのか、受精しても生長が抑制されたのかは分かりません。 側糸も確認できました。


 次に蒴をもう少し詳しく見ていきます。


 口環は欠いているようです。 内蒴歯は高い基礎膜があり、線形の歯突起は外蒴歯とほぼ等長です。 外蒴歯には全面にパビラがあります。


 胞子の径は 10~18μmです(上の写真)。


 胞子体のついていた同じ植物体の、上の赤丸で囲った所には、葉に隠された色の濃い何かがあります。 下は葉を取り除いたうえで・・・


 上は葉に隠れていたものの縦断面です。 5枚目の写真で見た造卵器がたくさん集まっています。 これを薄く切片にして顕微鏡で観察したのが下です。


(2020.2.23. 奈良市白毫寺町)

◎ キダチヒラゴケの葉の様子などはこちらに載せています。

2020-05-17

造卵器をつけたリボンゴケ


 写真はリボンゴケ Planicladium nitidulumです。 岩上で育っていました。


 上の赤い円で囲った所が他とは異なっています。 下はその拡大です。


 小さな細い葉が集まっています。 このようなものは探せばあちこちにありました。 下は上とは別の所のものを横から撮影したものです。


 これをほぐして中を見ると・・・


 褐色の細長いものが何本かありました。 それぞれの基部は少し膨れています。 形からして、この褐色の細長いものは造卵器で、基部の膨らみの中に卵細胞があるようです。 色からして、受精できずに枯れていく段階か、受精後に発生を始めている時期でしょう。 細長い葉は苞葉です。
 造卵器と思われるものの基部の中を観察することは、小さすぎてできませんでした。

(2020.2.23. 奈良市白毫寺町)

◎ リボンゴケの植物体の様子はこちらに載せています。