谷間の斜面で育っていたホウオウゴケの仲間、30cmほど下には水が流れています。 上の写真にもケゼニゴケやオオジャゴケが写っていて、湿ってはいるのですが、水が滴っているような環境ではありません。
上は群落の中の平均的な植物体です。 葉は10対前後で、胞子体はどの植物体も茎頂についていました。
上は葉で、ほぼ全周に舷があります。
上は葉先で、中肋は葉先近くに達しています。 舷は葉先近くで急に消えています。
上は葉の基部で、中肋より右が腹翼、左が背翼です。
蒴の見られなかった植物体の茎頂部に、葉に覆われた褐色のものが見えたので、覆っている葉を破って撮ったのが上の写真です。 Aは生長しつつある胚が内側にある造卵器、Bは胚が育たなかった造卵器、Cは精子を出して空になった造精器だと思います。 下はBとCがよく分かるようにした拡大で、側糸も見えています。
造精器と造卵器が混生しているように見えます。
上は胞子で、長さは 12~15μmです。
以上の観察結果を基に平凡社の検索表でたどると(A~J は平凡社検索表の記号)、中肋があり(A)、植物体基部に原糸体は見あたらず(B)、葉身細胞は密で縦横ほぼ等長(C)、腹翼・背翼・上翼に舷があり(D,E)、蒴は直立・頂生(F,G)、腹翼基部の細胞は長さ27マイクロメートル以下(H)、雄花序は茎の基部ではない(I)、胞子の径は10-19μm(J)と進んで、エゾホウオウゴケ に落ちます。
ところが、エゾホウオウゴケの種別の解説を読むと、雌雄同株(異苞)とあります。 エゾホウオウゴケには多くの変種があります。 見ていくと、ホソベリホウオウゴケ Fissidens bryoides var. ramosissimas は「雌雄共立同株かしばしば雌雄混立同株」となっています。 こちらに載せたものとは、かなり大きさが異なるのですが、基本種によく似るようですし、基本種の大きさにはかなり幅がありますので、心もとないのですが、とりあえずホソベリホウオウゴケとしておきます。
(2021.1.5. 箕面公園)
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