町中でもよく見られ、コモチイトゴケ Pylaisiadelpha tenuirostris とされていたコケの多くは、コモチイトゴケとは別種のケカガミゴケ Brotherella yokohamae で、(“本物”の)コモチイトゴケは山に多いようです。 なお、学名を見ると両種は別の属になっていますが、これについても議論があるようです。
現在入手できる蘚苔類の図鑑の多くは、コモチイトゴケとケカガミゴケは同種として扱い、ケカガミゴケの名前は載せられていません。 しかし両種の葉の曲がり具合などの形態的な違いは安定していて、分子系統解析の結果も別種であることを支持しています(秋山,2019.蘚苔類研究12(1))。
上は箕面山中の倒木に育っていたコケですが、以下の観察の結果から(ケカガミゴケではない)コモチイトゴケだろうと思います。 樹幹の垂直に近い状態から水平近くに生育条件が変化したためか、とても多くの胞子体をつけていて驚きました。
茎は不規則に羽状に分枝し、幅は葉を含めて5mmほどです。 蒴柄は上の写真では 13~15mmですが、もっと長いものもありました。
上の2枚は茎葉です。 葉先の曲がりが強いものもあり、ハイゴケの仲間と思ってしまうようなものもあります。
翼部には格子状に並んだ方形の細胞があり、その下にやや膨らんだ細胞が並んでいます。
上は葉の中央部で、葉身細胞は長さ 50~70μm、幅3~5μmです。
上は枝葉とその翼部です。
上は無性芽かと思ったのですが、こちらのケカガミゴケの無性芽とは様子が異なっています。 たぶん偽毛葉でしょう。
丸い芽のようなものをたくさんつけている茎がありました(上の写真)。 枝の伸びはじめにしては丸いので、内側に生殖器でもあるのではないかと思い、調べてみることにしました。 縦断面を作って調べようとしたのですが、小さく柔らかく、ハンドセクションではうまく切れません。 しかたなく横断面にしたのが下です。
かなり厚くしか切れませんでしたが中央にあるのは造精器ではないかと思います。
上は右から左へ、帽のある蒴、蓋のある蒴、蒴歯の見えている蒴です。 蒴はスリムで、蓋には長い嘴があります。
上は蒴の内側から蒴歯を撮った写真で、内蒴歯と外蒴歯が交互に並んで写っています。 内蒴歯には間毛がありません。
(2021.1.5. 箕面公園)
◎ コモチイトゴケはこちらにも「山のコモチイトゴケ」として載せています。
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