写真はクマノチョウジゴケ Buxbaumia minakatae です。 上の写真には胞子体が2本写っていますが、配偶体は退化していて、周囲に写っているのは別のコケ(トサカゴケ?)です。
この場所には5本の胞子体がありました。 北海道から本州・四国に分布していますが、稀産種ですので、そのうちの1本だけ標本としていただいて帰りました。
上は胞子体の基部です。 少なくとも写真では緑色をした配偶体らしきものは見えません。 ピントがきれいに合っていませんが、蒴柄はパピラに覆われています。
上は蒴の拡大です。 蓋は円錐形で円頭、蒴はほぼ円筒形、頸部は不明瞭です。 蒴柄は全体がパピラに覆われていて、上の写真でも蒴柄のパピラが確認できます。
一見よく似たイクビゴケの蒴は二重の袋になっていました(こちら)。 本種の場合はどうなっているのか、蒴の断面を作ってみたくなりました。 稀産種ですので標本を切り刻むのはためらわれたのですが、現地の人がこの採集場所の近くの数ヶ所で本種の存在を確認したという情報を得て、断面を作ることにしました。
上がその断面です。中央部の大きな面積を占めているのは軸柱です。 断面作成時に胞子はあちこちに散らばってしまいましたが、軸柱のすぐ外側が胞子の作られる場所ですから、やはり胞子は二重の膜に包まれていることになります。 しかしいちばん外側の膜は、イクビゴケのような丈夫さは無く、簡単に切断できました。 かなり異なる組織のようです。
上は蒴の上部の縦断面です。 外蒴歯は痕跡的で、内蒴歯は膜質で白っぽく、屏風状の縦ひだがあります。
(2019.9.14. 北八ヶ岳)
◎ こちらにはクマノチョウジゴケの無性芽を載せています。 また、本種はこちらにも載せています。
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