クマノチョウジゴケ Buxbaumia minakatae は配偶体が退化し、光合成は主に原糸体で行っていると考えられています。 胞子体が見られることも稀で、珍しいコケとされています。 私も2022年の3~4月に本種の胞子体を発見し(こちら)、その後数回見に行きましたが、本種を確認することはできませんでした。
秋山・村尾(2023)は、クマノチョウジゴケの胞子体をみつけ、その原糸体を観察したところ、原糸体が無性芽を作ることを発見しました。 そして、本種の生殖活動は主にこの無性芽で行い、胞子生殖はあまり行われず、胞子体が無いと本種の存在に気付くのは困難なため、あちこちに本種の原糸体があっても気づかず、珍しいコケとされているのではないかとしています(蘚苔類研究13(1))。
7月21日に上記の村尾さんに、京都市西京区大原野のクマノチョウジゴケを発見した朽木に案内していただきました。 水分をたっぷり含んだ柔らかくなった朽木でしたが、残念ながら胞子体は見られませんでした。 胞子体が見られるのは秋以降かもしれません。 これまでの観察によると、その朽木からは2年続けて胞子体が見られたが、周囲の同様の朽木からは全く見られないとのことでした。 ルーペで胞子体があったという朽木を観察しても、特記すべきようなものは何もありませんでしたが、表面に薄く原糸体らしきものがついている朽木表面の小片を持ち帰り、実体顕微鏡で観察したところ・・・
球形に集まった無性芽の塊があちこちにありました(上の写真)。 これを顕微鏡で観察すると・・・
束になって円錐形に少し盛り上がった原糸体の上に、たくさんの無性芽がついていました。
風に乗ると遠くにまで運ばれる可能性のある胞子と異なり、本種の無性芽はそんなに高く持ち上がっていませんし、広く散布されることは無いでしょう。 周囲の朽木に見られないことは、そう考えると納得できます。
上は朽木の繊維に絡んでいる原糸体です。
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